ウエブハロン2017 ヤングジョッキーズシリーズ タイトル

 12月27日(水)に大井競馬場、28日(木)にJRA中山競馬場で実施される『2017ヤングジョッキーズシリーズ ファイナルラウンド』への出場権をかけて、地方競馬およびJRAの若手ジョッキーが争う代表騎手選定競走が『2017ヤングジョッキーズシリーズ トライアルラウンド』です。このトライアルラウンドでの着順に応じて得た点数により、地方競馬およびJRAそれぞれの代表騎手が選ばれます。
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後方待機の伏兵が波乱を演出 優勝は船橋の臼井健太郎騎手

 4月26日の高知競馬場から始まったヤングジョッキーズシリーズは、12月28日の中山競馬場が初年度のフィナーレ。トライアルラウンドで好成績をおさめた14名によるファイナルラウンドは、まず前日に大井競馬場で行われ、船橋の臼井健太郎騎手と浦和の保園翔也騎手が勝利。2日間の合計4レースの着順ポイントで総合優勝を決める戦いをリードする形になった。
 しかしながら地方競馬所属の各騎手は、優勝争いよりも「中山競馬場で乗れる」ことに浮き足立っている様子。「お客さんの数がすごい」と笠松の渡邊竜也騎手は目を見開き、「雰囲気がぜんぜん違いますね」と岩手の鈴木祐騎手は感動しているようだった。また、神奈川県出身の栗原大河騎手(金沢)は家族が来場。それぞれに中山競馬場の空気を感じ取っているようだった。
 騎手紹介式が終わり、ファイナルラウンド中山第1戦は芝2000メートルが舞台。地方競馬代表の7名のうち、岩手の鈴木騎手以外は芝コースそのものが初めてで、芝での騎乗がいちばんの楽しみという騎手も多かったようだ。
 また、JRA所属でも森裕太朗騎手が「中山は競馬学校時代の模擬レース以来」と話し、小崎綾也騎手はオーストラリア修業からの帰国直後。そういった騎手が多いならば、レースが一筋縄ではいかなくなるのは当然のことだろう。
 第1戦は荻野極騎手のフリージングレインが単勝1.8倍と抜けた人気。ゲートが開くと2番人気馬に騎乗した森騎手が逃げ、続いて加藤聡一騎手(愛知)や菊沢一樹騎手(JRA)などが続く流れは、出走馬の顔ぶれを考慮すると速いといえるものだった。
 そうなるとレースを引っ張った馬たちが苦しくなるのは仕方ないところ。じっくりとスパートのタイミングを待っていた荻野騎手が直線で他馬を引き離し、2着に7馬身差をつけて勝利を飾った。
 しかし2着争いは大混戦。前崩れの展開に乗じて浮上してきたのはいずれも人気薄で、10番人気の横山武史騎手(JRA)が2着、クビ差3着には12番人気の渡邊騎手が入り、さらにクビ差4着には9番人気の鈴木騎手。断然人気の馬が圧勝したにもかかわらず、3連複は10万円を超える配当がついた。
 間にひとつレースをはさんで迎えた第2戦が、いよいよ1年間の締めくくり。単勝人気は第1戦でワンツーを決めた荻野騎手と横山騎手に集中していた。その状況に、前日の大井で1勝を挙げた臼井騎手は「荻野騎手が勝ったら終わりですよね」と、心配そうな顔をしていた。
 ダート1800メートルで争われるファイナルラウンド中山第2戦は、人気2頭を除く12頭がすべて、前走が9着以下という成績。そのメンバー構成なら、前走で先行して4着に粘ったサウスザスナイパーに騎乗する荻野騎手が主導権を取ったのは当然だろう。しかし出走全馬が初コンビ、そして最終戦という気持ちがある騎手が多い状況では、流れが速くなるのもまた当然だった。
 逃げる荻野騎手を加藤騎手が直後でマークして、3コーナーあたりで荻野騎手は失速。第2戦も後方からレースを進めた騎手に向く展開になり、中団から徐々に進出してきた森騎手が勝利。後方2番手にいた岩崎翼騎手(JRA)が猛然と追い込んだが、最後はクビ差届かずの2着だった。
 そのなかで光る騎乗を見せたのは、3番手からレースを進めて、2着馬からクビ差3着に粘り込んだ中越琉世騎手(川崎)だろう。その内容について聞いてみると、「まだまだです。反省するところはいっぱいあります」と、至って謙虚。それでも「4コーナーではちょっと夢を見て、アクションが大きくなってしまいました」とはにかんだ。中越騎手は川崎所属ながら、これまでの勝ち星の大半は高知競馬場で挙げたもの。トライアルラウンド川崎での1勝が、南関東での初勝利だった。あれから7カ月。若さを武器に急成長を遂げている様子が窺えた。
 渡邊騎手も同様で、5月のトライアルラウンド笠松で挙げた勝利が通算の2勝目。そのときは坊主頭だったが髪は伸び、取材陣とのやり取りも堂々としたものに変わっていた。そういった騎手としての成長期に得られたこの経験は、若手騎手、とりわけ地方競馬の若手騎手にとって大きな糧になることだろう。4戦とも後方でのゴールとなった栗原騎手も「こういう場所にまた来たいですね。そのために、金沢で勢いがある中島龍也先輩を追い越せるように、それを目標にして頑張りたいです」と、新たなモチベーションを得たようだった。
 その雰囲気のなか、そわそわしていたのは臼井騎手。しばらくののちに優勝が伝えられると、信じられないという表情が含まれた笑顔を見せ、その後は競馬中継のエンディングにも呼ばれて藤田菜七子騎手(JRA)との“共演”を果たした。いわゆる“ジョッキーレース”で好成績を挙げるためには普段以上に“運”が重要な要素となるが、この2日間でもっとも“持っていた”のは間違いなく臼井騎手。総合第2位の岩崎騎手との差は、わずか1ポイントだった。

取材・文:浅野靖典
写真:いちかんぽ(早川範雄、国分智)
総合優勝
臼井健太郎騎手
(船橋)
総合優勝を目指していたので、最後のレースは後方からでもインコースを回って最後に差を詰めるという、イチかバチかのレースをしました。川崎のトライアルラウンドからここに立つことを考えていたので、それが実現できてとてもうれしいです。でも、芝のレースはとても難しいと感じました。
総合2位
岩崎翼騎手
(JRA)
1ポイント差での2位というのはとても悔しいですし、ファイナルの4戦でひとつも勝てなかったことも悔しいのですが、2位になれたことにはホッとしています。第1戦は5着でしたが流れに乗れましたし、最後のレースは惜しい2着でも、馬の持ち味を出すことを考えて乗ることができたと思います。
総合3位
森裕太朗騎手
(JRA)
正直なところ、1位になれなかったのは悔しいですが、3位に入れたことはうれしく思います。2戦目はうまく流れに乗れて、馬も最後まで頑張って粘ってくれたので勝てましたが、2着馬の勢いがすごくて危ないところでした(笑)。また来年も出場できるように頑張っていきたいです。