ウエブハロン2017 ヤングジョッキーズシリーズ タイトル

 12月27日(水)に大井競馬場、28日(木)にJRA中山競馬場で実施される『2017ヤングジョッキーズシリーズ ファイナルラウンド』への出場権をかけて、地方競馬およびJRAの若手ジョッキーが争う代表騎手選定競走が『2017ヤングジョッキーズシリーズ トライアルラウンド』です。このトライアルラウンドでの着順に応じて得た点数により、地方競馬およびJRAそれぞれの代表騎手が選ばれます。
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【リポート動画】

相手を見ながらの勝負は紙一重の決着 鈴木祐騎手が北海道・東北のトップに

 ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンド盛岡は、地方競馬の北海道・東北に所属する6名と、JRA東日本の6名による合計12名での争い。北海道・東北ブロックが舞台のトライアルラウンドは、門別に続いての2場目にして最終戦となる。
 JRAは木幡育也騎手を除き、このあとに行われる船橋または浦和でのトライアルラウンドに出場する予定。そのなかで木幡初也騎手はこの盛岡がシリーズ初参戦。また、騎乗停止中の菊沢一樹騎手に代わり、野中悠太郎騎手が出場することになった(菊沢騎手はポイントがゼロで騎乗回数のみ加算)。
 その12名のなかで大きな注目を集めていたのは、やはりJRAの藤田菜七子騎手。第5レース終了後に行われた紹介式でも、いちばんの声援が飛んでいた。
 地方騎手のなかで、多少の不安を抱えていたのが北海道所属の2名。水野翔騎手も山本咲希到騎手も「左回りでスピードを出して乗るのは教養センター以来」とのことだった。ただ、2名の表情は対照的。水野騎手は「馬に導いてもらいます」と笑い、山本騎手は「盛岡は乗りやすいコースと聞いていますので」と、真剣な表情で話した。
 JRA騎手も6名のうち4名が初めての盛岡。木幡育也騎手は「ファイナルには1着を1回は取らないと厳しいかなと思うので、それを目指します」と意欲十分。武藤雅騎手も「騎乗する馬のレース映像を見てきました」と、少しでも多くのポイントを加算しようと考えているようだった。
 とはいえ、その思いはどの騎手も同じ。ダート1200メートルで争われた第1戦は、野中騎手、鈴木麻優騎手(岩手)、藤田騎手が先行する形。その直後も一団で、4コーナー手前では12頭のうち10頭がひとかたまり。それゆえ直線の入口では各馬が扇形に広がった。
 そういう展開でも、外を回って差し切り勝ちを見せたのが鈴木祐騎手(岩手)。2着にはインコースを回ってきた水野騎手が入り、先行した藤田騎手は粘り込むも3着。僅差の4着には大外から差を詰めた木村直輝騎手(岩手)が食い込んだ。
 鈴木祐騎手は「こういうレースはハイペースになると思ったので後ろから行きました」と、1番人気馬での勝利にホッとした様子。3着の藤田騎手は「ほかの騎手が前へと馬を出すなかでよく粘ってくれたとは思いますが、内をすくわれたのは悔しいですね」と話した。対する水野騎手は「左回りは大丈夫。インをピッタリと回っただけですけど」と、満面の笑顔を見せていた。
 反面、その横にいた山本騎手は「次は最低でも2着に入らないとダメですよね」と得点状況を確認。そして「イチかバチかの騎乗をしてきます」と言い残して準備に戻った。
 第2戦はダート1600メートルが舞台。スタートから最初のコーナーまでがおよそ900メートルもある、盛岡競馬場が誇るダイナミックなコースだ。しかしながら、そこに不慣れな騎手が大半となると、スローペースになるのは必然だった。
 2コーナーの合流点付近では見るからに流れが遅いことがハッキリとわかり、大型ビジョンには先頭グループにいる騎手が手綱を引っ張っている姿が映っていた。その展開なら最後方にいた鈴木祐騎手が「ありえないくらいに遅かったですから」と、向正面で一気に仕掛けていったのは当然のことだろう。そしてその動きに呼応して全体のペースが上がり、出走12頭のうちの11頭がラスト3ハロンで36秒台を記録。まさに瞬発力勝負の競馬になった。
 そうなると、馬群の後ろにいた馬たちは厳しい。結果的に4コーナーで3番手までにいた3頭の決着。内に木幡育也騎手、中央に横山武史騎手、外に藤田騎手が並ぶ追い比べはゴールまで続き、残り50メートルあたりから力強く伸びた藤田騎手が、2着の横山騎手、3着の木幡育也騎手に競り勝った。と同時に、スタンドからは拍手がわきおこった。
 第1戦を制した鈴木祐騎手は5着同着。第1戦終了時点でトップだった水野騎手は2戦目が最下位だったことで、トライアルラウンドポイント13.50の鈴木祐騎手が北海道・東北ブロックのトップ。水野騎手が11.75ポイントで2位となっている。
 またJRAでは、藤田騎手が16.75ポイントで現在のところ東日本のトップ。ファイナルラウンドに進む条件は、JRA騎手のなかで1位となるか、その1位騎手を除いて東西の3位以内となっている。盛岡での好結果は「優勝したい」と願う舞台への大きな一歩になるかもしれない。
第1戦1着
鈴木祐騎手
(岩手)
初めて乗る馬でしたし、あまり緊張しないようにと考えて乗りました。道中はうまく進めることができましたが、ゴールの直前は最内の馬がしぶとかったですね。第2戦は自分としてはあまりいい内容ではないように思うのですが、動かないとどうしようもないので思い切って仕掛けました。
第2戦1着
藤田菜七子騎手
(JRA美浦)
2戦目はペースが遅くて、でも先頭には立ちたくないと考えていましたが、3コーナー手前で後ろから仕掛けてくる馬が見えたので、そこでペースを上げていきました。直線の坂のところでは伸びあぐねたんですが、最後は頑張ってくれましたね。ゴールでの拍手は聞こえました。それもうれしく思いました。


取材・文:浅野靖典
写真:佐藤到(いちかんぽ)