ウエブハロン2017　ヤングジョッキーズシリーズ　タイトル

　今年から始まった地方・中央の若手騎手が争う『ヤングジョッキーズシリーズ』。4月から全国各地の地方競馬でトライアルラウンドが行われ、トライアルラウンドポイント上位の地方所属騎手7名、JRA所属騎手7名、計14名がファイナルラウンドへ進出を決めた。ファイナルラウンドは大井競馬場と中山競馬場を舞台に4レースのポイント制で争われる（なお、JRA東日本地区3位の木幡育也騎手が辞退したため、規定によりJRA東日本地区4位の横山武史騎手がファイナルに出場）。
　大井競馬場に集結した出場騎手たち。同期との再会にはしゃいだり、地方と中央の騎手が談笑する姿も見られ、とても和やかなムード。少し興奮気味な様子からもワクワク感のようなものが伝わってきた。
　この日は冷え込みが厳しかったうえにナイター開催ということもあり、紹介式が始まる16時頃の気温は6度。そんな寒さの中でも、若手騎手たちの応援にかけつけた多くのファンが賞典台のまわりを囲んでいた。出場騎手たちは名前入りの特製ジャンパーを着て登場し、地元小学校の子供たちから花束が手渡された。また、武豊騎手、的場文男騎手の応援メッセージビデオが流されると真剣な表情で耳を傾けていた。そして最後に、出場騎手代表として臼井健太郎騎手（船橋）と藤田菜七子騎手（JRA美浦）の宣誓が行われ、戦いの火蓋が切られた。
　ファイナルラウンド大井・第1戦は、1800メートル戦。距離経験の少ない馬たちが多い中で、前走このコースを圧勝した臼井騎手のモンドバーグが単勝1.2倍と圧倒的な人気を集めていた。
　ゲートが開くと、先手を取ったのは岩崎翼騎手（JRA栗東）で、臼井騎手が13番枠から2番手につけた。少し離れた3番手に藤田騎手、直後に森裕太朗騎手（JRA栗東）、さらに間が空いて菊澤一樹騎手（JRA美浦）、鈴木祐騎手（岩手）など、かなり縦長の展開でレースが進んだ。
　直線に入っても先行した2頭の争いが続いたが、岩崎騎手がしぶとく粘るところを残り100メートルあたりで臼井騎手が交わし、3馬身突き放して1着ゴールイン。2着にはそのまま残った岩崎騎手、内から伸びてきた鈴木騎手がアタマ差で3着に入った。
　ゴールの瞬間、左手で力強いガッツポーズを見せた臼井騎手。断然人気のプレッシャーを跳ね除け、嬉しい30ポイントを獲得した。「ホッとしました！こんなに人気になるなんて思っていませんでしたから。岩崎さんが粘っていたので心配したけど勝てて良かったです」と笑顔が炸裂した。
　一方の岩崎騎手は、「スタートが良かったら逃げようと思っていました。相手が強いのは分かっていたけど最後まで頑張ってくれました。人気のない馬で2着ですし、幸先の良いスタートは切れたと思います」と納得した表情だった。
　多くの騎手にとって大井競馬での騎乗は初めての経験。1戦目の終了後には「直線が長いというシミュレーションはしていたけど、思っていたよりも長く感じました」「トライアルラウンドでは小回りで直線の短い競馬場だったから、この長さに戸惑いました。小倉の1700メートルと似ているかも」など、コースについての感想が多く聞かれた。そして「この経験が次のレースに繋がるように」と皆前向きにパドックへと向かっていった。
　第2戦は1200メートル戦。保園翔也騎手（浦和）、森騎手、菊澤騎手の先行争いとなったが、内の保園騎手が先手を奪った。3人より後ろの好位集団には、渡邊竜也騎手（笠松）、横山騎手、鈴木騎手などが続いていた。
　直線に入ると後続を突き放しにかかった保園騎手。最後は2、3着馬に差を詰められたもののセーフティーリードで逃げきり勝ちを決めた。1馬身1/4差で2着は内から伸びた加藤聡一騎手（愛知）、大外から豪快に末脚を伸ばした中越琉世騎手（川崎）がハナ差で3着となった。
　単勝1.6倍の1番人気馬をしっかり勝利に導いた保園騎手。「とにかく馬が強かったです」と冷静に話していたが、大井コースは出場騎手の中で一番経験があるだけに、ここは負けられないという気持ちも強かったことだろう。保園騎手と同期の加藤騎手は少し悔しそうではあったが「明日に望みは繋げました。優勝目指します！」と意気込みを語った。
　ファイナルラウンド大井を終え、1位は臼井騎手で34ポイント、2位は保園騎手で32ポイント、3位は中越騎手で27ポイントと続き、4位も鈴木騎手と地方所属騎手が一歩リードの状況だ。しかし、ファイナルラウンド中山では、地方所属騎手は全員が中央競馬初参戦となる。「坂がどういう感じなのか」「観客の多さに緊張しそう」などという言葉も聞かれ、初物尽くしにどう対応するかがポイントになりそうだ。中央所属騎手にとっては待ちに待ったホームの舞台。これまでの経験を発揮するチャンスであろう。
　いよいよ明日、トライアルラウンドから始まった長い戦いの結末を迎える。果たして、ヤングジョッキーズシリーズ初代チャンピオンに輝くのはどの騎手なのか？！