昨年までの未来優駿は岩手所属馬限定の若駒賞だったが、今年からは地方全国交流の南部駒賞に。これまで若駒賞、南部駒賞をともに制した馬には、ロールボヌールやロックハンドスターなど翌年の岩手ダービー(当時はダイヤモンドカップ)馬の名もあった。その南部駒賞の創設は1973年。今年で47回目を数える岩手伝統の2歳重賞。2003年までは東北地区交流だったが、04年から地方全国交流となった。毎年11月の開催でありほとんどが水沢開催で行われていたが、日没が早くなるこの時期でも盛岡開催なら照明設備のおかげで18時台のスタートが可能になり、昨年より盛岡での開催となっている。
今年はホッカイドウ競馬から4頭、船橋、川崎から各1頭が参戦。岩手・水沢所属のリュウノシンゲンは芝の若鮎賞は3着も、ダート戦に限れば5戦負けなしで地元の利もあり単勝2.2番の1番人気に支持された。感冒による出走取消明けとなるチサットだが、イノセントカップ3着のスピードが評価されて5.3倍の2番人気、3番人気は5.7倍でJBC2歳優駿JpnⅢ・6着と見せ場ある走りをみせたギガキングで、北海道勢も上位人気に。ワールドリング、サンエイウルフ、マーサマイディアまで6頭が一桁台の単勝オッズとなった。
スタートはややバラつきもあったが、長いバックストレッチの直線ではマーサマイディア、チサット、サンエイウルフ、リュウノシンゲン、ワールドリング、ギガキングという隊列で、先団と後方グループが分かれるレース展開。前半3ハロンは35秒7でかなり速い流れとなった。
勝負どころ残り600メートルを過ぎても後方グループは先団には取り付けず、4コーナー手前ではマーサマイディア、チサット、サンエイウルフ、リュウノシンゲンが横並び、その直後の内めにギガキング、インを狙うワールドリングがつけて直線勝負へ。
馬群を割って坂を登ったギガキングが残り1ハロンで一気に抜け出し、内でチサットが粘り、リュウノシンゲンも迫るが、後方集団にいたシンタロウが大外から猛然と追い込んだ。
見ごたえあるゴール前の攻防を制したギガキングの勝ちタイム1分38秒4は、前年のモリノブレイクと同じ。強敵にもまれてきた経験が勝利へとつながったのだろう。レースの上り3ハロンが38秒9のところ、36秒7の脚を使ったシンタロウが1馬身1/4差の2着で、田中淳司厩舎のワンツーフィニッシュ。地元期待のリュウノシンゲンは半馬身差で3着だった。
ギガキングには2度目の騎乗となった服部茂史騎手は「4コーナーで3番手にいたサンエイウルフの吉原騎手の手応えが悪かったので、直線はその内から進路をと思って追いました。デビュー戦を勝った後、低迷したこともありましたが、そのうっ憤を今回で晴らせたと思います。こういうレースができるのがこの馬の本当の力だと思います。マイルから2000メートルくらいがベストの舞台じゃないかな。自分は久しぶりに岩手で勝てて良かったです。ホッカイドウ競馬の今シーズンは終わってしまいましたが、今年コロナ禍もあってファンの前で競馬ができるのはいいですね」
3着に敗れたリュウノシンゲンの坂口裕一騎手は「状態は良かったのですが、レースでは集中していなかった。道中もフラフラして走っていたし、手ごたえ、反応がなかったですね。いつもとは違って、まるで別馬みたいに……」
「ギガキングは全日本2歳優駿へ向かわせたいとオーナーに伝えました。2着のシンタロウは年内は休養し次走は未定」と田中淳司調教師。
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服部茂史 騎手
ゲートでちょっと脚を滑らせましたが、そのあとはスムーズに位置を取ることができました。3走前に騎乗したときは3~4コーナーでモタついたので今回はその点に気をつけて乗りました。流れも良かったですし、反応良く直線は抜け出してくれました。これからまだ力をつけて強くなっていくと思いますよ。
田中淳司 調教師
自分のところで1、2着はできすぎですね。とても嬉しいです。JBC2歳優駿から間隔は詰まっていましたが、ダメージが少なかったので南部駒賞を使うことを決めました。持ったまま、いい感じで追走できていたし、それが良い結果に。胴が詰まったタイプなので、マイルのワンターンも合ったと思います。