全国各地で行われている秋の2歳重賞シリーズ『未来優駿』。今年で66回目を迎えた平和賞からは、これからの地方競馬を担っていくようなスケールの大きな馬が誕生した。
南関東と北海道で桜花賞や道営記念など7つの重賞を制したショウリダバンザイ。そんな地方競馬の女傑を母に持つマカベウスは、船橋の新進気鋭・米谷康秀厩舎から7月にデビューした。好内容で連勝を飾ると、前走のゴールドジュニアは初物尽くしの中で、1400メートルの大外枠や、この馬にとっては忙しい距離でも、負けて強しの2着。
今回の平和賞は10頭中5頭が単勝10倍以下にひしめき合い上位人気が拮抗したが、単勝2.7倍で僅差1番人のマカベウスが快勝。
「力があるのはわかっていたし勝つ自信はあったので、そんなにプレッシャーは感じませんでした。背中もいいし雰囲気もある馬で、返し馬で勝てるなという感触はありましたね」と、新馬戦以来のコンビとなった本田正重騎手。まだデビューしたばかりの若駒にここまでの信頼を抱かせるというのも、マカベウスの凄さだ。
レースは主張していく馬はいなかったが、スピードの違いでジョーロノが先頭に立っていくと、2番手にサウスワールド、3番手にはフォルメッシ。その直後にコンモートフーガやハートプレイスが続き、マカベウスはそれらを見る形で内から進め、先団の馬たちが固まる展開となった。
「前とは離されすぎないようにという指示でした。思っていたよりペースは流れなくて、外に出すところもなかったので、腹をくくって内をついていきました。手応えはずっとあったので、開けば勝てるなと」(本田騎手)
3コーナーから一気に進出すると、直線に入るところで外に持ち出し、前を行く馬たちを並ぶ間もなくグングンと抜き去るシーンは圧巻。「前が壁になっても馬はひるまなかったし、今後のことを考えてもいい競馬ができました。まだとぼけているし幼いですが、競馬は大人びています。距離は延びてもいいでしょうし、クラシック向きです」
最後はメンバー中最速の38秒6の脚を使い、逃げ粘って2着のジョーロノに1馬身半差。3着にはハートプレイスが入った。勝ちタイムは1分42秒8(稍重)。
マカベウスにとっても管理する米谷調教師にとっても、待望の重賞初制覇。米谷調教師と言えば、調教師補佐時代には、今年5月に急逝した佐藤賢二調教師の右腕として厩舎を支えてきた。
「師匠から引き継いだ馬たちも勝たせたいという思いでやっていますが、自分のところからデビューした馬で初重賞を勝てたことと、地元の船橋競馬場で伝統のある平和賞で勝てたのもうれしいです。自分の中で、マカベウスは来年のクラシックをにぎわしてくれる馬だと思っています。毎回思っていることですが、カッコいい跳びをする馬なので、走る姿を見ていて楽しくなります」
携わる人たちを魅了しているマカベウス。これからどんな未来を見せてくれるのだろうか。
Comment
本田正重 騎手
新馬戦の時よりも馬は元気が良かったです。内枠はちょっと気になって、包まれて負けたくなかったので、4頭でも5頭でも外に出した方が安全策とも思いましたが、余裕を持って競馬を運ぶことができました。追い切りもすごい時計を出すし、ゲートも普通だし、現状の課題は幼いくらいですかね。
米谷康秀 調教師
中団くらいにはつけてくれと言っていたので、安心して見ていられる位置取りでした。終いは確実に伸びてくれるとわかっていたので、4コーナーで射程圏内に入れて欲しいと言っていたので、直線を向いた時には勝てるなと思いました。この後は馬の上がり次第ではハイセイコー記念を予定しています。