9月6日に起きた北海道胆振東部地震により、最も被害を受けた厚真町やむかわ町に近い門別競馬場も、多大な影響を受けた。断水が長引き、電力の問題などもあり、地震発生当日に加え、その後も2週間、開催中止を余儀なくされた。
　「施設は幸い、それほど影響はなく、調教も休まずにできてはいますが、水が出ないことには、馬を洗うことはできないし、自衛隊の給水車が来ても、決められた量しか与えられないので、飲ませる水にも限界があります。開催中止はやむを得ない判断だと思います」と、調教師の方々も話していた。その期間に組まれていた重賞を含め、ダートグレードを除く大半の重賞は、1週遅らせて実施することを決めた。本来、9月27日に組まれていた道営スプリントは、10月4日に移行した。目標に置くレースがずれ込むと、調整に響く可能性を考えてしまう。特に、遠征する馬たちは、輸送を考慮する流れの中で、調教過程に狂いが生じる恐れがある。
　今年は、岩手からラブバレットが参戦してきた。同じ舞台で行われた北海道スプリントカップJpnⅢで、中央馬を相手に惜しい2着だった。
　「その後、水沢がかなり暑かったことで、夏負けになった時期もありました。クラスターカップまでは正直、納得のいく状態ではなかったんですが、よく頑張って走っていたと思います」と、菅原勲調教師。地震直後に、遠征予定の関係者には1週延びる旨は伝えられていたそうだ。
　「クラスターカップの後も、本格的に調教を始めるまでには時間が掛かりましたが、涼しくなってから、調子を大分取り戻してきました。当初の日程では本数が足りないと思っていたので、1週でも延びてくれたことは、ラブバレットには幸いでした」と、菅原調教師は、乗り込むことができた点を強調していた。しかし、馬体重は484キロと、前走から11キロ増だった。
　スタートでラブバレットは躓き、中団からの競馬となった。サトノプリンシパルとナリユキマカセが競り合い、タイセイバンデットも途中から早めに上がっていく。前半のラップは、12秒3－10秒4－11秒5＝34秒2のハイペースとなり、ラブバレットは追走に苦労していた。
　直線で先行勢が苦しくなり、好位追走のアップトゥユーが抜け出す構えを見せていたが、内にササって外に持ち出せず、深い内に進路を取らざるを得なかった。直線半ばでようやくラブバレットのエンジンが掛かり、外から猛追するメイショウアイアンをクビ差凌いだ。ラブバレットにとっては苦しい勝利だったが、ダートグレードで常に上位争いを演じた底力を見せた。
　「数字の上では、このぐらいでも結果を出していた時もありましたから、さほど太めと感じない面もありますが、やはり乗り込み量がまだ足りなかったんでしょうね」と、レース後に菅原調教師。山本聡哉騎手も、「反応が鈍かったのは、体重増の分もあったと思います」と話していた。しかし、ラブバレットにとって、色々な意味で大きな勝利だった。
　ラブバレットの父であるノボジャックは、JBC協会に種牡馬登録がされておらず、JBC競走に出走するためには、馬主が追加登録料として1着賞金の2％を支払わなくてはならない。
　「このレースを勝てば、JBCスプリントに行くことに理解を頂いていたので、おそらくその流れになると思います」と、菅原調教師は、京都への意欲を示した。過去に追加登録料を支払ってJBC競走で好走した地方馬には、第1回JBCクラシックＧⅠのマキバスナイパー（2着）がいる。悲願のJpnⅠ挑戦を手にした、関係者の思いを聞いて、大一番での善戦を願わずにはいられない。