ライバルをマークし直線抜け出す
外回りの距離延長で会心の勝利

　2014年にブリーダーズゴールドカップJpnⅢが牝馬限定戦に生まれ変わるとともに、グランダム・ジャパン（GDJ）古馬シーズンにも組み込まれた。これにより、ブリーダーズゴールドカップJpnⅢへ積極的に挑む地元馬が増えた。
　ビッグレースの変革は、他のレースにも大きな影響を与える。昨年、門別では内回り1600メートルでヒダカソウカップをシーズン序盤に創設、古馬牝馬路線が確立された。内回りと外回りの戦いは、馬の個性の違いを浮き彫りにし、騎手の駆け引きも楽しめる。
　昨年のノースクイーンカップを逃げ切ったサンバビーンは、ビューチフルドリーマーカップ（水沢）でもジュエルクイーンを全く寄せ付けない強さを見せるなど、GDJ古馬シーズン女王に輝いた。6歳の今年も現役を続行し、昨年と同じローテーションでノースクイーンカップ連覇を目指してきた。
　熱発の影響で状態がひと息だった昨年のヒダカソウカップ（4着）とは違い、今年のサンバビーンは順調に乗り込むことができた中で、シーズン初戦を迎えた。しかし、ヒダカソウカップは5着に敗れた。外回りに舞台が移れば……の期待を持ったとしても、力をつけてきた4歳牝馬たちの勢いに誰もが目移りした。
　ヒダカソウカップは2着だったタイムビヨンドが1番人気、勝ち馬のジュエルクイーンが2番人気、そしてサンバビーンが続く。3強の図式ながら、ファンも世代交代を感じているオッズに映った。
　サンバビーンが迷わず先手を奪い、外枠からフィーリンググーが2番手に控え、3番手以下も位置取りが早々と定まる展開。前半3ハロン36秒0 - 5ハロン61秒4、平均よりやや速いペースでレースは進んだ。ジュエルクイーンは4番手からサンバビーンを早めに捕まえに行き、その2頭を見ながらタイムビヨンドの宮崎光行騎手は一気に追い上げる。
　直線ではやはり3強の争いとなったが、タイムビヨンドが残り200メートルで先頭に立つと、ジュエルクイーンに2馬身半差をつけて待望の重賞初制覇を飾った。
　「外回り、しかも距離が延びる今回は、負けたら自分のせいだと思いながら乗りました。前にいる人気馬2頭を徹底的にマークしましたが、思い描いていた展開でレースはしやすかったですね」と、宮崎騎手はしてやったり。タイムビヨンドは昨年、北海道の三冠を戦い抜いたが3、2、2着と、あと一歩でタイトルを手にできなかった。
　「牝馬でも手加減せず、調教を攻めて挑みました。これで負けたら、実力的なものと認めざるを得ませんでしたが、強いタイムビヨンドを見せることができてホッとしています」と、幾多のタイトルを手にしてきた堂山芳則調教師の執念を垣間見た。
　「ブリーダーズゴールドカップもエントリーしていますが、馬の状態を見て決めたいと思います。その後のビューチフルドリーマーカップは挑戦する予定で、地方馬同士なら負けない姿勢で頑張りたいと思います」と、堂山調教師はGDJへのローテーションを組む方針を示した。
　重馬場で時計は出やすかったとはいえ、レースレコードを1秒9も更新したタイムビヨンド。「距離が延びれば延びるほど良いタイプ」と宮崎騎手は話しており、目下の勢いからGDJ古馬シーズン女王も決して夢ではない。