当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

さまざまな種牡馬の産駒が活躍
強さが目立った北海道デビュー馬

2016年11月17日

 まずは今回も2015年の未来優駿シリーズ勝ち馬のその後の活躍を確認しておく。なお、成績、データ等は11月14日現在。
 残念ながら昨年の未来優駿勝ち馬から“ダービーウイーク”の勝ち馬となった馬はいなかったものの、3歳になっても世代のトップクラスで活躍しているのが、兵庫若駒賞のマイタイザンと、サッポロクラシックを制した牝馬のリンダリンダ。
 マイタイザンは、兵庫ダービーでは断然人気に支持されたもののハイペースに巻き込まれ7着と、残念ながら期待にこたえられなかった。しかし今年新設された西日本ダービーでは1番人気にこたえて逃げ切った。
 リンダリンダは大井に移籍し、南関東牝馬三冠の二冠目、東京プリンセス賞を勝利。ロジータ記念でも2着と、牝馬として世代を代表する活躍を見せている。
 残念ながら、そのほかに未来優駿以降に重賞を勝った馬はなく、兼六園ジュニアカップを制したブライトエンプレスが3歳の準重賞や特別戦を勝っている程度。若駒賞のメジャーリーガーは、重賞で連戦連勝というエンパイアペガサスという強力なライバルが現れたことは不運だった。
 鎌倉記念のポッドガイは中央に移籍して今のところ未出走、九州ジュニアチャンピオンのソウダイショウは中央で障害戦を走っている。
16年西日本ダービー マイタイザン
16年東京プリンセス賞 リンダリンダ

 今年は全7戦の1、2着馬が3番人気以内と、全体的に堅い決着が目立った。
 血統面では、父はバラエティーに富んでいた。新種牡馬の産駒は2頭いて、スーパーマックス(九州ジュニアチャンピオン)がリーチザクラウン、フライングショット(サッポロクラシックカップ)がタートルボウル。特にリーチザクラウンは、新種牡馬ランキングでは9位だが、少ない産駒の中から中央でも活躍を見せている注目の種牡馬だ。そのほか、ヴィーナスアロー(兼六園ジュニアカップ)はダートで大活躍のパイロ、ナチュラリー(兵庫若駒賞)は地方の2歳戦線で活躍が目立つゴールドヘイローといったあたりが特徴的なところ。
 地方競馬では、サンデーサイレンスの血がまったく入っていない活躍馬もめずらしくなかったが、今年の未来優駿の勝ち馬7頭は、いずれも2代か3代遡ったところにサンデーサイレンスがいる。それだけその血が日本じゅうに溢れてきたということだろう。

 今年、初戦として行われた鎌倉記念(川崎)は、北海道から遠征のストーンリバーが勝利。地元でもブリーダーズゴールドジュニアカップを制しており、道中は外々を回っての差し切り勝ちゆえ、着差以上に強い勝ち方だった。その後の北海道2歳優駿JpnⅢでも4着と好走。移籍はせず、門別にとどまって北海道3歳三冠を目指すとのこと。
 九州ジュニアチャンピオン(佐賀)は2頭の無敗馬が人気となったが、その1頭、スーパーマックスが快勝。このレースは佐賀デビュー馬限定戦として行われており、それゆえ過去の勝ち馬にはその後に目立った活躍がないという馬も少なくなかった。しかしスーパーマックスはこの後、北海道、大井、JRAからの移籍馬も多数出走していた天山賞で2着に2秒9の大差をつける圧勝。デビューからの連勝を5に伸ばした。目標は九州ダービー栄城賞とのことで、3歳になってからの活躍も期待できそうだ。
鎌倉記念 ストーンリバー
九州ジュニアチャンピオン スーパーマックス

 若駒賞(盛岡)は、デビューから2連勝で1番人気のベンテンコゾウをマークしたサンエイリシャールが直線で交わし去って勝利。しかし続く南部駒賞ではベンテンコゾウが巻き返しての勝利で、サンエイリシャールは5着に沈んだ。岩手の2歳戦線はまだまだ混戦といえそうだ。
 日程的にエーデルワイス賞JpnⅢと北海道2歳優駿JpnⅢに挟まれ、必ずしも世代のトップクラスが集まるわけではないサッポロクラシックカップ(門別)は、2番人気のフライングショットが勝利。父のタートルボウルは社台ファームが輸入した新種牡馬。母の父はデュランダルで、2代母のフライングザレーンがアメリカからの輸入馬という社台ファームの血統。レースハイライトにあるように、いずれ船橋に移籍予定とのこと。
若駒賞 サンエイリシャール
サッポロクラシックカップ フライングショット

 ゴールドウィング賞(名古屋)は、スタートから先手をとったミトノリバーが後続を寄せ付けず逃げ切り圧勝。北海道ではJRA認定のアタックチャレンジで2着はあったが、未勝利のまま転入して名古屋ではこれで3勝目。北海道でデビューしてある程度の素質が見込まれる馬でも、シーズンが終了するかなり前に新天地に移籍してタイトルを狙うというのは最近増えてきたパターンだ。
 兵庫若駒賞(園田)は、デビューから2着、4着という成績のナチュラリーが勝って、重賞で初勝利を挙げた。それでも3番人気だったから期待は高かったのだろう。それもそのはず、近年大躍進の新子雅司調教師、下原理騎手という兵庫リーディングのコンビ。新子調教師はこのレース初制覇だが、下原騎手は4勝目となった。
ゴールドウィング賞 ミトノリバー
兵庫若駒賞 ナチュラリー

 兼六園ジュニアカップ(金沢)は、牡馬より重い56キロを背負わされながら断然人気に支持されたヴィーナスアローが勝利。ただ10月18日の金沢シンデレラカップで同馬に土をつけ、ここまで無敗のヤマミダンスは不在だった。ヤマミダンスは翌週の笠松・ラブミーチャン記念に遠征してデビューからの連勝を4に伸ばしている。ヴィーナスアローのほうは大晦日の大井・東京2歳優駿牝馬が目標とのことで、ともに全国区での活躍が期待できそう。
兼六園ジュニアカップ ヴィーナスアロー
デビューから4連勝中のヤマミダンス 16年ラブミーチャン記念

 未来優駿は、これまでおおむね10月20日前後から11月初旬のレースが対象レースだった。しかし今年は10月5日の鎌倉記念からスタートし、2戦目の九州ジュニアチャンピオンも10月9日と、立ち上がりがかなり早まった。もともと時期的に各地の2歳チャンピオンを決めるというレースではないが、さらに時期が早まると、2歳重賞戦線のむしろ登竜門的なシリーズとなって、翌年の3歳重賞戦線とのつながりも希薄になってしまうような気がする。

文●斎藤修
写真●いちかんぽ