3番手から思い描いた展開に
断然人気馬を振り切って快勝

　グランダム・ジャパン（GDJ）2歳シーズン最終戦として注目の東京2歳優駿牝馬。表彰対象の地方馬では、第1戦の園田プリンセスカップを制したナンネッタ以外のポイント上位馬が顔を揃え、まさに地方競馬の2歳女王を決する一戦となった。
　鎌倉記念2着のゴーフューチャーが逃げ、プリンセスカップ（水沢）を制したスターインパルスが2番手、さらにピンクドッグウッド、アップトゥユーと4頭が内から順に雁行状態で先行集団を形勢。GDJ2歳シーズンですでに2勝を挙げているヤマミダンスはそのうしろ、ラチ沿いを追走した。
　前2頭の手応えが一杯になった3コーナー過ぎ、ピンクドッグウッドが先頭に立つと、アップトゥユーがクビほどの差まで迫り、直線では2頭の追い比べとなった。そして残り100メートル標識の手前から、じわじわと差を広げたピンクドッグウッドが快勝。単勝2.1倍で1番人気に支持されていたアップトゥユーは3馬身差で2着。同じ1600メートルのローレル賞を圧勝していたとはいえ、「どちらかといえば、距離は短いほうがいいかも」と阿部龍騎手は残念な表情を見せた。金沢シンデレラカップでヤマミダンスの2着のあと浦和に移籍して2連勝のアンジュジョリーが4コーナー11番手から追い込んで3着に入った。
　またデビューから5連勝で2番人気と期待された金沢のヤマミダンスは、向正面から追走に一杯となって15着。これまで楽勝続きで砂をかぶった経験もなく、世代トップクラスの馬たちとは初めての対戦でスタートから流れに乗れなかったようだ。
　勝ったピンクドッグウッドは、ホッカイドウ競馬でデビューから2連勝。1000メートルの2歳牝馬重賞・フルールカップを制し、エーデルワイス賞JpnⅢ・3着のあと、愛知・川西毅厩舎に移籍。当初は兵庫ジュニアグランプリJpnⅡを目標にしていたが、骨瘤が出て脚元を気にしていたとのことで回避。転厩初戦となった今回は、単勝18.7倍の6番人気。とはいえ、この世代のホッカイドウ競馬デビュー馬は牡馬も含めて抜けた存在がなく、そもそもエーデルワイス賞JpnⅢでは2着のアップトゥユーにアタマ差という接戦だった。距離経験は1200メートルまでしかなかったものの、「距離は長くてもいけるんじゃないかと思っていました」（戸部尚実騎手）という適性もあっての逆転となった。
　口取りから表彰式へと向かう川西調教師は、ピンクドッグウッドがパドックでつけていた黒いメンコ（レースでは外していた）を大事そうに手にしていた。そのメンコには“Leaders Board”という刺繍があった。2013年に川西厩舎からデビューして7連勝、兵庫ジュニアグランプリJpnⅡでは3着に敗れたものの、その後再び3連勝で駿蹄賞まで制したリーダーズボードだ。その後の東海ダービーも勝利は間違いなしという存在だったが、調教中に脚を痛め、復帰が叶わないまま引退。馬主も同じ尾崎智大さんで、川西調教師にとってはそのリーダーズボードに対する無念な思いもあって臨んだ一戦だった。
　川西調教師によるピンクドッグウッドでの挑戦はこの一戦のみで、このあとは船橋・稲益貴弘厩舎に移籍、南関東のクラシックを目指すことになるようだ。
　さて、GDJ2歳シーズンは、ここまでトップに立っていたアップトゥユーが2着の15ポイントを加算し45ポイントで優勝。この勝利の20ポイントを加算し30ポイントとしたピンクドッグウッドが2位。今回残念ながら着外も、22ポイントのヤマミダンスが3位となった。