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連載第26回 1998年 群馬記念

「小回り、深い砂。地の利を生かした会心の騎乗」
1998年群馬記念 ロバリーハート

第9回 群馬記念
Movie(映像ファイルサイズ:15MB)
 平成7年のいわゆる交流元年以降、現在のダートグレード競走は軒並みJRA勢に席巻されることになった。この群馬記念も指定交流競走になってからはロイヤルハーバー、ホクトベガ、そしてストーンステッパーとJRA勢が3連覇。地方勢は後塵を拝すこととなった。ただ、この年は川崎記念をアブクマポーロが制し、少しではあるが風向きが変わってきたかのような雰囲気もあった。
 5月5日、高崎競馬場で行われた第9回群馬記念。JRAからは武豊騎手が騎乗するフジノマッケンオーを筆頭に、スーパーダートダービーや名古屋大賞典に勝ち、フェブラリーステークス2着のメイショウモトナリ。佐賀記念を快勝したグリーンサンダー。そしてパーソナリティワン。他地区からは前年の東京盃に勝ったカガヤキローマンとサントス。新潟からデビュー以来通算【14-1-2-0】のロバリーハート。
 迎え撃つ地元勢は、JRA準オープンから転入後4連勝のユーロライナー、そしてリキアイフルパワーなど精鋭5頭。
 1番人気はJRAのグリーンサンダー、2番人気はメイショウモトナリ、3番人気はカガヤキローマン。
 高崎競馬場は1周1200m、直線300mの小回りコース。砂が深く、また、かつてホクトベガが大きく膨らみそうになり、危うく回り切れないかと思ったくらいコーナーがきつい競馬場。地方馬が勝つには地の利を生かすしか道はなかった。
 スタートして先手を奪ったのは大井のカガヤキローマン。その後ろにグリーンサンダー、メイショウモトナリ、パーソナリティワンと、JRAの有力馬が好位を占める。
 勝負どころでまず動いたのはグリーンサンダー。連れてメイショウモトナリも。カガヤキローマンの逃げは4コーナーで終わり、直線残り300mで先頭に立ったのはグリーンサンダーだ。メイショウモトナリは深い砂にスタミナを奪われたのか手応えが悪い。
 ここでほぼ決まったかに見えたが、内から外に持ち出したロバリーハートがジリジリと迫り、残り約100mでついに馬体が合った。2頭の叩き合いはゴールまでもつれ、手を上げたのは外ロバリーハートの向山騎手だったが、レースは写真判定となった。
 点灯したのは2番!ロバリーハートがハナ差でグリーンサンダーを交わし、指定交流となった群馬記念では初の、そして新潟県競馬所属馬としても初の交流重賞勝ち馬となった。
 「しまいはいい脚を使うので、届くと思った」と向山牧騎手。3コーナーで仕掛け、4コーナーでは余裕の手応えで2番手まで進出。改めてビデオで観ると、全てが段取り通りのように見える。距離損なくインコースを回り、そして深い砂も苦にせず、小回りという地方競馬の地の利を最大限に生かした会心の騎乗だったのではなかっただろうか。
 ロバリーハートはその後、上山の東北サラブレッド大賞典に勝ち、芝のBSNオープンは5着。白山大賞典は状態ひと息で4着、新潟グランプリは連覇で決めたが、浦和記念も前日にアクシデントがあり6着に敗れた。朱鷺大賞典の後、屈腱炎を発症し休養。復帰初戦を快勝したが、以降5戦して勝ち星なく、2000年を以て引退、群馬県馬事公苑でイブキクラッシュなどかつてのライバルたちとともに余生を送ることになった。

文●小山内完友(日刊競馬)
写真●いちかんぽ
競走成績
第9回 群馬記念GⅢ 平成10年(1998年)5月5日
  サラ系4歳以上 1着賞金3000万円 高崎1,500m 曇・良
着順
枠番
馬番
馬名
所属
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 2 2 ロバリーハート 新潟 牡6 56 向山 牧 1.34:7 7
2 8 11 グリーンサンダー JRA 牡6 56 幸 英明 ハナ 1
3 6 8 メイショウモトナリ JRA 牡5 58 安田 康彦 4 2
4 5 6 フジノマッケンオー JRA 牡8 56 武 豊 ハナ 5
5 8 12 リキアイフルパワー 高崎 牡5 56 栗林 宏 3/4 8
6 1 1 カガヤキローマン 大井 牡6 58 的場 文男 クビ 3
7 7 9 ユーロライナー 高崎 牡8 55 工藤 勉 1/2 6
8 4 4 エムジーシューマ 高崎 牡8 55 木村 芳晃 2 10
9 7 10 パーソナリティワン JRA 牡5 56 徳吉 孝士 1 4
10 5 5 サントス 大井 牡6 56 鈴木 啓之 1 9
11 3 3 ケイシュウトライ 高崎 牡8 55 加藤 和宏 2 11
12 6 7 ダウンリンクデータ 高崎 牡7 55 丸山 侯彦 3 12
払戻金 単勝1,690円 複勝290円・130円・140円 枠連複2,830円