第2回 2011年11月10日(木) ジャンボ焼き鳥in大井競馬場

盛岡競馬場のジャンボ焼き鳥in大井競馬場


 昨年、船橋競馬場で行われたJBCの日に、もっとも長い列ができた「盛岡競馬場の元祖ジャンボ焼き鳥」。すぐ横のイベントステージにも煙がたなびき、お祭り感を大いに盛り上げつつ、盛況のうちに完売となった。
 その「元祖・ジャンボ焼き鳥」が、今年もJBCデーに遠征してくることになった。今回は11月2日と3日の2日間、水沢競馬場のホルモン煮込みと一緒の出店である。
 しかし、長蛇の列ができてしまった昨年と同じ轍を踏むわけにはいかない。
 「船橋では、ほとんど生から焼き始めていたんですよ。盛岡で営業しているいつもと同じような感じで。だから焼き上がりまでに時間がかかってしまって、お客さんを待たせてしまう結果になったんですよね」
 と、ジャンボ焼き鳥一筋の職人、喜良彦さん。昨年は長蛇の列に恐れをなして、買うのをあきらめる人もかなり目立った。今年はそういうことがないようにしなくては!

 ということで、今年は下ごしらえを入念に。仕込みの段階で半分ほど火を通しておくことにしたのだ。鶏肉は中心に熱が届くまで時間がかかる。通常だと焼きあがるまで10分程度かかるそうだが、あらかじめ火を入れておけばその時間は半分以下になるはずだ。
 それがうまくいけば、今年は昨年以上に売れるはず。そう気合を入れて大井競馬場に乗り込んだ3名の「元祖・ジャンボ焼き鳥」チーム。しかし初日の2日、ド平日なのに夕方4時頃には30人ほどの行列が発生。それを見てあわてた筆者は注文取りと会計補助の助っ人に入ったが、思うように列が短くならない。さらに半調理してあったはずの焼き鳥が、じつはそれほど熱が入っていなかった!
 竹串で肉を持ち上げて火の通り具合を覗き込む良彦さん。その分、列の進み具合は滞る。およそ9千人が入場したという11月2日でこうだとすれば、果たして3日はどうなってしまうのか……。
 この状況を受けて、営業終了後に作戦会議。その結果、3日は朝から下焼きを始めて、ストックをたくさん作っておくということになった。

 さあ、いよいよJBCデー。筆者は開門30分後の午後2時前に大井競馬場に到着したのだが、すでに50人ほどの列ができていた……。展開が早いよ!

 急いで筆者も手伝いに加わり、新たに制作した注文整理用紙を使って受け渡し時間の短縮に努める。そのうちに焼き鳥を渡す係と注文と会計を担当する係を完全に分けたほうが、接客の時間が短くなることがわかった。それからはひたすら列を伸ばさないことに専念。いつの間にか、となりの水沢ホルモンは完売して、撤収作業も終わっていた。
 このままの状況が果てしなく続くのか……。しかし列はついに途切れた。JBCクラシックのファンファーレが鳴ったとき、並ぶ人がついにゼロになったのである。
 「今のうちに栄養と水分を補給して!」しかし、野球でいえば千本ノックを受けたあとの体というのは、簡単には食べ物を受け付けないらしい。つかの間の休憩時間はわずか5分。JBCクラシックの出走各馬がゴールラインを過ぎるや否や、再び列ができ始めた。
 「昨日も今日も、ほとんど飲まず食わず。トイレにも1回も行かなかったですよ」と、良彦さん。2日間とも大盛況で、厨房はまさに戦場のようだった。しかし「元祖・ジャンボ焼き鳥」チームには、もうひとつの戦いが待っていたのである。
 「これから盛岡までトラックを運転して帰ります。まだ寝れないっすよ(笑)」
 大井競馬場から盛岡競馬場までは、およそ550km。遠征出店の締めくくりは、睡魔との戦いだった。
文・写真●浅野靖典

浅野靖典(あさのやすのり)
競馬キャスター・ライターとして活動中。「クリック!地方競馬」キャスターを務めているほか、JRAブリーズアップセール、八戸、九州の各競走馬市場にて司会進行を担当。ライターとしては、
・競馬総合チャンネル(netkeiba.com)
・POGの達人
・JRAホームページ
・週刊プレイボーイ
・WEBハロン
などに寄稿している。


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