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2020
ヤングジョッキーズシリーズ

今年4年目を迎える『2020ヤングジョッキーズシリーズ(2020YJS)』は、初めてファイナルラウンドを園田競馬場とJRA阪神競馬場で行います。新型コロナウイルスの感染防止の観点から、当初予定していたトライアルラウンド川崎と金沢が取りやめとなりましたが、12月24日(木)の園田競馬場、12月26日(土)のJRA阪神競馬場のファイナルラウンド出場に向けて、7月21日(火)の盛岡競馬場から各地の地方競馬場を舞台にトライアルラウンドが実施されます。皆さまのご声援をよろしくお願いいたします。

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Trial Round
トライアルラウンド
5.12(火) 川崎競馬場
6.9(火) 金沢競馬場
7.21(火) 盛岡競馬場
8.13(木) 園田競馬場
8.20(木) 門別競馬場
9.8(火) 佐賀競馬場
9.22(祝・火) 高知競馬場
9.29(火) 船橋競馬場
10.14(水) 名古屋競馬場
10.21(水) 浦和競馬場
11.4(水) 笠松競馬場
11.5(木) 大井競馬場
Final Round
ファイナルラウンド
12.24(木) 園田競馬場
12.26(土) JRA 阪神競馬場
  • ヤングジョッキーズシリーズ FR 阪神

12.26 (土) JRA阪神競馬場

ファイナル2勝吉井騎手が優勝
 今年も地方騎手が表彰台を独占

第1戦

第2戦

リポート動画

「ジョッキーの緊張は馬にも伝わる」と多くの競馬関係者は口にする。裏を返せば、ジョッキーの雰囲気が良かったり、いい意味でリラックスしているとプラスに働くのだろう。4年目にして初めて西日本でファイナルラウンドが行われたヤングジョッキーズシリーズ(YJS)は、それが結果に反映されたと言えるかもしれない。

園田から中1日で迎えたファイナルラウンド阪神は新型コロナウイルスの影響で事前に指定席に当選した人のみが入場できるため、「家族も当選して応援に来ることができるんです」と福原杏騎手(浦和)。パドックに若手騎手たちが姿を現すと、多くのカメラが向けられ静かな競馬場にシャッター音が響き渡った。美浦所属の秋山稔樹騎手(JRA)、小林脩斗騎手(JRA)、菅原明良騎手(JRA)は初の阪神競馬場。また、地方の騎手もほとんどが初のJRA遠征とあって、観客から「地方の騎手たち、緊張しているね」という声も聞こえた。そんな中、担当厩務員と笑顔で言葉を交わしながら馬の首筋を撫でるなど、和やかな雰囲気を醸し出したのは地方所属で唯一JRA遠征経験のあった吉井章騎手(大井)。それはレースにも生きた。

第1戦、芝の外回り1600メートルの広いコースで吉井騎手とスカーフェイスは中団から直線でしっかり伸びると3馬身差で勝利を決めた。4コーナーでは外に膨れる場面もあり、「ちょっとバタバタして勝ち急いでしまいましたが、馬の力でねじ伏せてくれました」と7番人気の馬で園田第2戦に続きファイナルラウンド2勝目を決めた。

その4コーナーで外に振られながらも立て直しての2着に塚本雄大騎手(高知)、3着も地方の池谷匠翔騎手(川崎)が入り、7番人気→5番人気→8番人気で3連単は15万640円の高配当。さらにクビ差及ばなかったものの細川智史騎手(愛知)は初芝の馬ながら「積極的に競馬をしようと思って」と先行集団からレースを運び、直線も二枚腰を使って4着に激走した。

レース後には同じ南関東所属騎手や岩田望来騎手(JRA)が駆けつけてJRA初勝利の記念撮影。この勝利で吉井騎手が暫定1位に浮上し、ファイナルラウンド園田を1位通過した細川騎手が2位につけ、3位の塚本騎手は最終戦で勝たなければ優勝の可能性がない状況となった。

第2戦はJRA騎手に人気が集中したダート1800メートル戦。1番人気の菅原騎手とサンライズホープが先手を取ると、馬群は縦長ながら前半1000メートル通過は63秒3とややスローペース。そうなれば菅原騎手にはもってこいの展開で、3馬身差をつけて勝った。「揉まれるとよくないタイプ。キャンターも大きく、窮屈になるといけないと思っていました」とテン乗りながら個性を掴んでの勝利だった。

一方、2~4着は後方から差した馬で、2着に秋山騎手、3着塚本騎手、そして4着金山昇馬騎手(佐賀)は12番人気ながら「第1戦は初めてのJRAでコーナーが長く、終わりが見えなくて焦ったので、2戦目はじっくり行こうと」と反省点を生かして外から追い込んだ。

阪神競馬場の広さに興奮したのは池谷騎手もそうで、「(1戦目の)芝のレースもめちゃくちゃ楽しかったです」と話せば、仲原大生騎手(大井)も「ずっとJRAで乗りたかったので良かったです」と、結果以上に大きな経験になった様子だった。

総合優勝はファイナルラウンドで2勝を挙げた吉井騎手。デビュー1年目の2018年にファイナルラウンドに出場した時は4戦すべてが10着以下で最下位だったのが、ファイナルラウンド園田第2戦で地方通算101勝目を挙げて減量騎手を卒業するまでになった。

2位の塚本騎手も最後のYJSで、ファイナル未勝利ながらも安定した成績で存在感を示した。しかし、本人は「園田第1戦でいい馬にのせていただいていたのに結果を出せず……」と悔いが残っているようだった。対照的に3位の細川騎手は結果を伝えられると「わぁ~おぅっ!」と喜びを爆発。ファイナルラウンドには1ポイント差で出場し、阪神では2戦とも2桁人気の馬だったのだから、所属厩舎の角田輝也調教師が言うように「何か持っている」男なのかもしれない。

昨年に続き地方騎手が表彰台を独占したYJS。とはいえ、3位から2ポイント差の4位は菅原騎手で、このままではJRA騎手も黙っていないだろう。来年も地方騎手が優勝するのか、はたまたJRA騎手の初優勝があるのか。若手騎手たちの熱い戦いはまだまだ続く。

  • 取材・文
  • 大恵陽子
  • 写真
  • いちかんぽ(早川範雄・国分智)
  • コメント協力
  • 競馬ブック

Comment

総合優勝 吉井章騎手(大井)

園田を勝った時点では優勝は考えていなくて、1戦1戦見せ場を作れたらという気持ちでした。阪神第1戦の外回りは乗りやすく、道中リラックスして走れたのが勝ちにつながったんだと思います。師匠や父も応援していたシリーズで、無事に優勝できて「これからもよろしくお願いします」と伝えたいです。

総合2位 塚本雄大騎手(高知)

立派な競馬場で乗れて、いい機会をいただきました。2戦目はポジションがもう少し前でもよかったかなと思います。2戦ともいい勝負ができそうな馬でしたが、結果を残せず悔しいです。初めてファイナルに出場できたのは嬉しいですが、優勝できなかったので、他の形でJRAに乗りにこられたらいいなと思います。

総合3位 細川智史騎手(愛知)

1戦目は向正面で少し折り合いを欠くところはありましたが、気持ちに任せて行かせてよく頑張ってくれました。阪神では地元・名古屋と違う発想ができて、いい着順にもってこられたかなと思います。自分の力は1%もなく、いろんな人に助けてもらい、こうして競馬ができることに感謝しています。