4回目にして初めてファイナルラウンドが西日本で行われるヤングジョッキーズシリーズ(YJS)。12月24日に園田競馬場、26日にJRA阪神競馬場で各騎手は2競走ずつに騎乗し、いよいよ総合優勝が決まる。
検量室に姿を現すなり、地元騎手から「最近よく勝っているね」と次々に声をかけられたのは岩田望来騎手(JRA)。幼少期を園田競馬場で過ごしたとあって、準地元のような雰囲気だ。同じく園田での騎乗経験が豊富な亀田温心騎手(JRA)は前日の兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIで所属厩舎のサクセスエナジーが優勝。「内が深いかなと思っていましたが、サクセスエナジーは内から伸びましたね」と、馬場傾向を探った。
なお園田競馬場はフルゲートが12頭のため、ファイナリスト16名(地方8名、JRA8名)が一堂に戦うことができず、3競走に分かれて各騎手は2競走に騎乗する。
第1戦は1400メートルの11頭立て。1番人気は塚本雄大騎手(高知)で単勝2.7倍、2番人気4.4倍は8月のトライアルラウンド(TR)園田第1戦で勝利したハシノオージャで今回は仲原大生騎手(大井)とのコンビ。そのあとは岩田騎手、原優介騎手(JRA)、秋山稔樹騎手(JRA)までが単勝10倍以下で続いた。
好スタートから押して亀田騎手が先手を取ると、ゆったりとしたペースで各馬は1~2コーナーを回った。向正面に入るなり、外からスーッと進出したのは細川智史騎手(愛知)とエンドオブジアース。「馬が行きたがっていたので、馬を信じて行ってみよう」と、残り600メートル付近で一気に先頭に立つと、中団から追い込んだ岩田騎手をアタマ差しのいで勝利を決めた。レース前には「後方で待機する形が好きで、2戦とも乗り方一つでチャンスがありそうですし、自分に向いていそうだなと思います」と話していた細川騎手はTRも含めYJS初勝利。普段は淡々とした表情だが、引き上げて来ると大量に向けられたカメラにガッツポーズを見せた。
僅かに差し届かなかった岩田騎手は「ノーコメントで」とさすがに悔しそうな表情。兵庫の元実況アナウンサー・吉田勝彦さんも「もうあと一完歩やったね」と残念がった。1馬身差の3着は「出遅れたので内に行くしかないと思いました」とスタート直後に腹を括って内ラチ沿いを取った仲原騎手。1番人気の塚本騎手は半馬身差の4着で、5着は原騎手だった。
第2戦はこの日唯一の1870メートルで10頭立て。1番人気単勝2.4倍のグランプリシップはTR園田で3着に食い込んだ馬で菅原明良騎手(JRA)とのコンビ。2番人気は福原杏騎手(浦和)で3.2倍、以下、池谷匠翔騎手(川崎)、川又賢治騎手(JRA)、吉井章騎手(大井)と続いた。
内からダッシュを利かせたのは吉井騎手。外の團野大成騎手(JRA)も好スタートを決めたが2番手外に控えた。4コーナーで内ラチぴったりを回った福原騎手が直線で最内から抜け出しを図るも、吉井騎手とマーティンヒルの脚色は衰えず1馬身差で勝利。「せっかく来たので、一つでも見せ場をつくりたかったです」と笑顔を見せた。
対照的に福原騎手は「内が重たかったのかな……。レースを見ていたらキレるかなと思ったんですけど、馬を捌くことばかり気にして、溜めが足りなかったかなと思います」と昨年浦和(所属騎手)リーディングの意地をかけたが、悔しい結果となった。
さらに1馬身差の3着に團野騎手、4着に亀田騎手、5着は「向正面から上がっていきたかったのですが、コーナーでは逆に離されてしまって」と菅原騎手。この時間帯には雨も強まり、4番人気の川又騎手は「馬が雨を気にしていました」と8着だった。
第3戦は1400メートルの11頭立て。断トツの人気は単勝1.9倍で小林脩斗騎手(JRA)。JRA未勝利から移籍初戦の前走が2着だったクリノガオガオには専門紙でも重い印が並んだ。しかし、「前走は外枠から前につけられていましたが、今回は内枠なのでどうなるか分からないですよね……」と少し心配そうな様子。
その予感は見事、的中した。五分のスタートを決めたものの、他の馬のダッシュが速く、クリノガオガオと小林騎手は中団後ろの内で包まれた。それでも「馬が集中して走っていて、追い出しての反応が抜群でした」と、3コーナーでは最後方近くまで下がりながらも、直線で他馬の間を突き抜けて1馬身半差で勝利。「YJS初勝利なので嬉しいです」と喜んだ。2着は9番人気ながら「3~4コーナーでは夢を見ました」と中団から差した仲原騎手。半馬身差の3着に川又騎手、4着團野騎手、5着に秋山騎手だった。
ファイナルラウンド園田を終えて暫定1位は38ポイントで細川騎手。初戦の1着に加え、2戦目も6着でポイントを加算した。3ポイント差で仲原騎手、さらに4ポイント差で吉井騎手と小林騎手がつけた。例年は1勝を挙げると表彰台にグッと近づくのだが「今年は園田で3戦あった分、勝っている人が1人多いから優勝を目指すなら2勝を挙げるくらいじゃないといけないですよね」と分析したのは塚本騎手。現状は20ポイントで8位だが、ワールドスーパージョッキーズシリーズで2007年に総合3位の経験がある地元の先輩・赤岡修次騎手から「芝は全然違うから。ダートの感覚で乗ったらダメだよ」とアドバイスも受けたようだ。
今年は1日空けファイナルラウンド阪神が行われるため、福原騎手や吉井騎手は一旦地元に帰りレースに騎乗。一方、塚本騎手はこのまま関西に残り最終決戦に備えるという。26日JRA阪神競馬場でいよいよ第4代王者が決定する。
Comment
第1戦1着 細川智史騎手(愛知)
人気になっている馬ではなかったですが、積極的に行って前で残ってくれればと思いました。4コーナーで後ろの脚音は聞こえなかったですが、一旦落ち着かせてしまうと馬が機嫌を損ねるかなと思い、流しました。最後まで馬が頑張ってくれて感謝です。明後日は初めて中央で乗れるので、楽しみたいです。
第2戦1着 吉井章騎手(大井)
砂を被ると怯むと聞いていたので、砂を被らないところでの競馬が理想でした。4コーナー過ぎから手応えも良く、直線もいい脚で伸びてくれました。(これが101勝目で)今年でYJSは最後なので、ファイナルで結果を出せて少し安心しています。阪神でも見せ場をつくれるようしっかり準備したいです。
第3戦1着 小林脩斗騎手(JRA)
思いのほか後ろからになり焦りましたが、馬の雰囲気を大事にしながら乗ろうと思いました。4コーナーから直線にかけて馬群がバラけて、手応えが良かったのでそこを縫っていくことができました。1着でのゴールは気持ち良くて、とても嬉しかったです。この勢いを保ちながら阪神も全力で騎乗したいです。