ウェブハロン

好天に恵まれた高知競馬場。4連休最終日ということもあってか、ヤングジョッキーズシリーズ（YJS）トライアルラウンド高知の出場騎手紹介式には多くのファンが集まった。とはいえ、ウイナーズサークル付近は密になるのを避けるため柵付近にはロープが張られ、ファンは少し離れた場所からソーシャルディスタンスを保ち、それぞれに写真を撮ったり、お目当ての騎手が紹介されると拍手を送ったりした。

「俺もYJSに乗りたいわ。やれるで～！」と、追うポーズをとりながら笑ったのはキャリア34年の地元・西川敏弘騎手。TR高知出場騎手中、最小キャリアとなる今年3月デビューの泉谷楓真騎手（JRA）とは32歳差だ。ベテランがここまで元気とあらば、若手たちもやる気に満ち溢れ、地元の塚本雄大騎手（高知）は「今日はみんなでYJSと高知競馬を盛り上げていきます」と宣言した。

第1戦は1番人気が泉谷騎手で単勝3.1倍。長谷部駿弥騎手（兵庫）3.7倍、岩田望来騎手（JRA）5.3倍と続いた。

レースは岩田騎手がハナを奪うと、落ち着いたペースに持ち込み、馬群は比較的かたまって最初のコーナーを回った。向正面で動き始めたのは1番人気の泉谷騎手。「1つ前のレース（JRA交流よさこい盃）を乗せていただいて、向正面から動いた方がいいのかなと感じました」とのこと。それに呼応するかのように1列前にいた浅野皓大騎手（愛知）が「手応えが良かったので、スーッと行きました」と3コーナーで先頭に並びかけに行った。すると、そこからゴールまで岩田騎手と浅野騎手の一騎打ち。直線は馬体スレスレの抜きつ抜かれつの追い比べで、2頭が鼻面を揃えてゴールした。これには乗っていた2人も勝敗が分からなかったようだ。検量室前に引き上げ、係員から「1着はアミユウダイと岩田騎手」と告げられると、飛び跳ねて喜んだのは厩舎スタッフ。細川忠義調教師も「よし、やった！」とガッツポーズを見せた。

惜しくもハナ差2着に敗れた浅野騎手は「もう少し脚を溜めていればよかったかもしれません」と冷静に話したが、心の底では悔しがっていたことだろう。

3着は3/4馬身差で泉谷騎手。この日が初めての高知競馬場だったが、「力のいる馬場で、勝った1つ上の先輩は追い方や道中の力強さが違いました」と、感じることがあったようだ。4着は多田羅誠也騎手（高知）で「いま持っているポイントからしたら、足りないですね」とファイナル進出に向けて上位入着を果たしたかった様子。5着は妹尾将充騎手（高知）だった。

第2戦は先ほど勝利した岩田騎手が1番人気で単勝2.7倍。続いて3.8倍が亀田温心騎手（JRA）、5.4倍塚本騎手、7.3倍浅野騎手だった。

スタートから楽にハナを奪ったのは木本直騎手（兵庫）。3番手外に岩田騎手、その後ろに亀田騎手と人気どころが続いた。4コーナーでインを選んだのは亀田騎手。対して、岩田騎手は外を選ぶと、コーナリングを生かして抜け出していた亀田騎手に一歩ずつ詰め寄り、ぴったり馬体を並べてのゴール。第1戦に続いての大接戦は、検量室で見守っていた地元騎手たちからも「どっち？」と声が上がるほどだったが、制したのはここでも岩田騎手。昨年はTR高知で1勝を挙げたが、今年は2勝。TR園田でも勝っており、ファイナル進出への選考基準となるトライアルラウンドポイント（上位着順4競走の合計得点）は100ポイント（3勝、5着1回）と、現時点で断トツとなった。JRA栗東所属にはまだ4戦を残している騎手も2名いて逆転もあり得るが、「たぶん、大丈夫でしょう」とファイナル進出へ向け、本人も安堵の表情。

2着の亀田騎手は「最後はもうちょっとでしたね」と悔やんだ。それにはもう1つ意味があって、「僕はトライアルラウンドはこれで終わる予定なんです。あとはみんなの結果次第ですね」ということ。現状、上位につけてはいるが、西日本はまだTR名古屋とTR笠松を残しているので安心はできない。

3着は1馬身半差で外を伸びた塚本騎手、4着に逃げ粘った木本騎手、5着泉谷騎手だった。

泉谷騎手は今年3月、無観客競馬の中でデビューしたため、今回が初めての有観客競馬。「お客さんのいる前でレースをすると、こういう感じなんだって経験できました。より頑張れますね」と、目を輝かせた。

第2戦後に行われた表彰式では、岩田騎手は帰りの飛行機の関係で欠席。誰もいない表彰台となったが、それだけ忙しくも充実した日々を送れていることだろう。次回のYJSは船橋競馬場で9月29日に行われる。