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2021年1月8日(金)

初めて関西がファイナルの舞台に
 地方騎手が2年連続で表彰台独占

活躍が目立つ若手騎手

4年目を迎えたヤングジョッキーズシリーズ(YJS)は、初めて関西の園田・阪神でファイナルラウンドの実施となった。このため昨年までファイナルラウンドの舞台だった大井競馬場でトライアルラウンドが行われ、また園田競馬場はトライアルラウンドを実施した上で、さらにファイナルの舞台にもなった。

出場騎手は、地方は南関東で2名の欠場があって東は14名、西は15名。地方騎手の計29名は前年(2019年)と同じだが、JRA騎手は東西8名ずつの計16名で、前年の22名からかなり減った。

前年までは出走取消などのアクシデントがない限り、1つのレースでは地方・JRAの騎手が同数で争われていたが、この年はさすがに出場人数の差が大きく、トライアルラウンドについてはすべてのレースでJRAより地方騎手が2名多いという構成で争われた。

それでも地方騎手の騎乗機会は限られ、特に西日本の騎手が騎乗できたのは4レースか5レース。東日本の騎手は5レースか6レース。その差は、西では名古屋と笠松が10頭立てなのに対して、東では船橋と大井が14頭立てだったという差は大きい。

一方でJRA騎手は、前述のとおり出走頭数が多い東日本では8レースに騎乗できた騎手もいた。

JRA騎手の人数が東西とも過去最少の各8名になったことは、年ごとにデビューする騎手の人数が違うこともあるが、近年は若手騎手の活躍が目立ち、減量が早い時期になくなる騎手が少なくないこともある。2019年のYJSに出場していた騎手では、横山武史騎手は2020年にはデビュー4年目で早くも東のリーディングになった。また坂井瑠星騎手はダノンファラオでJpnⅠ(ジャパンダートダービー)制覇を果たし、中央の重賞もすでに3勝を挙げている。

この年の出場騎手でも、岩田望来騎手はデビュー2年目で早くも減量を卒業してしまっている。

地方にも活躍が際立っている若手はいて、浦和の福原杏騎手も同じくデビュー2年目のこの年、すでに減量を卒業。YJSに出場する一方で、浦和所属のリーディングとして地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップへの出場も果たしている。

YJSが実施されるようになった直接の効果かどうかはわからないが、デビュー間もない騎手の中から、トップジョッキーと同じような成績を挙げる騎手が何人も出てきていることはすばらしい。

岩田騎手がTR満点通過

そしてこれまでの3年と違ったのは、コロナ禍での実施となったこと。残念ながらトライアルラウンドでは、6月までに予定されていた川崎と金沢が中止となってしまったが、それでも東西それぞれ5場10レースが行われた。人が移動して交流するということでは、さまざまに厳しい状況ではあったが、それでも無事にファイナルラウンドまで行われたのは何よりだった。

コロナ禍ということでは、2月末から地方でも中央でも無観客開催となり、この年にデビューした新人騎手は、しばらくファンの前でのレースを経験できないでいた。それでも地方競馬の、特に地方都市の競馬場では7月から順次観客の入場が始まり、トライアルラウンドの初戦となった7月21日の盛岡では、JRAの新人3名、川崎の新人2名が初めてファンの声援を受けての騎乗となった。

そこで印象的なレースを見せたのが、JRAではまだ1勝しか挙げていなかった新人の原優介騎手。2戦ともに前が競り合うハイペースとなって、その2戦とも豪快な差し切りを決めた。さらにその2戦とも2着に入ったのは小林脩斗騎手。JRAの新人騎手が2戦ともワンツーを決めた。両者とも、その勢いを最後まで保ってファイナルラウンド進出を果たした。

東日本の地方騎手は、最終の大井ラウンドで大逆転。浦和第2戦を勝っていた吉井章騎手が地元大井の第1戦で2着に入って1位。同じく大井の仲原大生騎手が1着、4着で2位。浦和の福原騎手は第2戦のみの騎乗で見事勝利して3位。船橋ラウンド2、1着でポイントを稼いでいた川崎の池谷匠翔騎手が第1戦で4着に入って4位。南関東所属騎手がファイナル出場の切符を独占することになった。

トライアルラウンド全体を通して活躍が際立ったのが岩田望来騎手。6戦に騎乗して4勝を挙げたことで、トライアルラウンド・ポイントは満点の120ポイントを獲得した。高知では2戦ともハナ差勝ちで勝負強さを見せ、笠松第2戦では4コーナー7番手から内を突いて鮮やかに抜け出した。

西日本の地方騎手で目立ったのは、佐賀の金山昇馬騎手。地元佐賀の第2戦では中団からまくって大差圧勝。名古屋第1戦では10頭立ての最低人気ながら4コーナーで絶望的と思われる位置から豪快に追い込んで差し切った。金山騎手はトライアルラウンドの騎乗4戦という一度も失敗が許されない状況で2勝を挙げファイナル進出を決めた。

減量卒業を優勝で飾る

第3回の前年まで地方・中央各7名の計14名で争われていたファイナルラウンドは、今回、地方・中央各8名の計16名で争われることになった。しかしその舞台となった園田競馬場はフルゲート12頭。それゆえファイナルラウンド園田は3戦のうち各騎手が2戦ずつに騎乗するかたちで争われた。

印象的だったのは、園田第1戦。スローな流れで中団にいた愛知の細川智史騎手が向正面で動いて一気に先頭。直線を向いても単独先頭で、ゴール前一気に迫った岩田騎手をアタマ差でしりぞけた。トライアルラウンドで勝利がなかった細川騎手だが、初めて騎乗する園田でこの思い切ったレースぶりは見事だった。

第2戦は、マイペースに持ち込んだ吉井騎手が逃げ切り、中団から早めに位置取りを上げた福原騎手が2着に入り、南関東のワンツーとなった。

第3戦は、断然人気に支持された小林騎手がラチ沿いで徐々に位置取りを下げて3コーナーではほとんど最後方。しかしそこから盛り返し、直線では狭いところを割って抜け出しての勝利。小林騎手もトライアルランドでは勝ち星がなかっただけに、検量室前に戻っての笑顔が印象的だった。

そして阪神に場所を移しての第1戦は芝1600メートル。地方騎手は、吉井騎手以外の7名が中央競馬での騎乗が初めて。16頭立てという多頭数や、芝コースなど、ほとんど経験したことがない条件。果たして、そんなアウェーの状況でも、吉井騎手は直線で鮮やかに抜け出し、地方騎手が4着までを占めた。

ダート1800メートルの第2戦は、1番人気に支持された菅原明良騎手が逃げ切り、2番人気の秋山稔樹騎手が4コーナー10番手から追い込んで2着。最後はJRA騎手のワンツーだった。

ファイナルラウンドは、園田、阪神で1勝ずつを挙げた吉井騎手が優勝。阪神で2着、3着と健闘した高知の塚本雄大騎手が2位、新人の細川騎手が3位で、2019年に続いて地方騎手が3位まで独占となった。吉井騎手は園田での勝利が地方通算101勝、塚本騎手もこの時点で地方通算115勝を挙げており、YJSの表彰が減量卒業の記念となった。また細川騎手は、第1回から通じて当該年にデビューした新人の表彰台は初だった。

コロナ禍の状況ゆえ、残念ながら表彰式は行われなかったが、後に続く若手騎手たちには、YJSの舞台は今後も大きな目標となることだろう。

  • 斎藤修
  • 写真
  • いちかんぽ