特集
グランダム・ジャパン2018
GRANDAME-JAPAN2018
地方競馬では、牝馬競走の振興と牝馬の入厩促進を図るため、今年で9年目となる 世代別牝馬重賞シリーズ
「GRANDAME-JAPAN2018(グランダム・ジャパン2018)」を実施します。
全国各地で行われる牝馬重賞を世代別に体系づけ、競走成績によりポイントを付与。2歳、3歳、古馬の世代別ポイント獲得上位馬に対し、協賛各団体から日本軽種馬協会を通じボーナス賞金が授与されます。地方競馬の優れた牝馬の活躍の舞台を広げるとともに、交流を促進して魅力ある牝馬競走の実施を目指します。
NARサイト 特集ページはこちら
門別 1,800m
逃げ馬をとらえ4馬身差圧勝
成長感じる6歳馬が連覇達成
馬産地に足を運ぶようになり、頻繁にセールで1歳馬を見始めた頃のこと。ある生産者の方に「チェックしている馬はどれ?」と聞かれ、気になる馬を伝えると「牝馬が多いね。この時期は牝馬の方が成長が早く、よく見える傾向にあるから、チェックする際に気をつけた方が良いよ」と言われた。いかに1歳の夏から秋の段階で、牝馬の成長力を見定めることができるかが、セールで馬を見るポイントだと気づかされ、今でもこの時の言葉は自分の馬を見る上で注意している。
牝馬の成長曲線は、牡馬に比べて早く成熟する。2歳戦で牝馬の好走が目立つのは、成長力の差にあると思われている。一方で、牝馬の競走寿命は短い。中央競馬では、スマートレイアーが7歳秋に京都大賞典を勝ち、8歳を迎えた今年も現役を続けているが、このケースはかなり稀だ。6歳春に引退するケースが多く、女傑と言われる馬たちなら4歳から5歳で引退することも多い。母としての仕事も残されていることも影響している。
しかし、地方競馬では息の長い活躍を収める牝馬は多い。ノースクイーンカップの前身であるクイーンカップを6連覇(1979~84年)したシバフイルドーという女傑もいた。その他、エスコートは3連覇(1985~87年)を収めている。
2002年に6年ぶりに牝馬限定重賞として復活したノースクイーンカップは、2010年の北海道三冠馬・クラキンコを筆頭に6歳馬が2勝、7歳馬の勝利もあり、高齢での勝利が決して珍しくない。グランダム・ジャパンの効果から、長く競走生活を続ける牝馬が増えてきたことも大きな要因だが、若い世代に負けない逞しさと経験値が、地方競馬ではモノを言うのか。
2015年からノースクイーンカップに出走し、3着、2着、1着とステップアップしたジュエルクイーンは、今年も元気に出走してきた。ジュエルクイーンの今シーズンは、これまで3戦1勝。前走のヒダカソウカップは、1番人気に支持されたものの、新興勢力のディナスティーアに突き放され、3着に敗れた。「前走は直前の追い切りをセーブした影響と、忙しい内回りの競馬で、勝負どころからモタついてしまった」と、田中正二調教師は普段と違う調整過程を敗因に挙げていた。今回は、最終追い切りで3ハロン36秒2と、前走より1秒速い時計をマークし、「直前にしっかり追った今回は、自信を持って送り出せます」と、戦前から言葉に力が入っていた。
南関東から再転入し、ヒダカソウカップで2着に健闘したアップトゥユーが逃げ、2コーナーまで後続を引き離していく。個人的に計時した序盤のラップは、12.4 - 11. 5 - 11.9=35秒8というハイペースを刻んだ。ジュエルクイーンに騎乗した五十嵐冬樹騎手は「アップトゥユーに離されずに行こうと思っていましたが、ビュンビュン飛ばしていくアップトゥユーについていくのが大変でした」と、想像以上のハイペースに戸惑いを感じていた。しかし、向正面に入ると、12.7 - 12.2 - 12.9という流れに落ち着き、「ペースを落としてくれたことで、楽にアップトゥユーに喰らいつくことができました。勝負どころでの差と、序盤に飛ばした相手の手応えを考えれば、直線で、ある程度勝利を確信できました」と、五十嵐騎手もレースを振り返る。
実際、上がり3ハロンは13.3 - 13.6 - 13.9=40秒8と時計を要し、アップトゥユーの脚が上がっていたことを物語っている。
「以前に乗せていただいた時より、歩様も気にならず、乗りやすくなっている感じがします」と、6歳を迎えたジュエルクイーンの背中に、五十嵐騎手はさらなる成長を感じていた。連覇を果たしたジュエルクイーンの次なる目標は、グランダム・ジャパン古馬シーズンの優勝だ。老け込むにはまだ早い、と思わせるレース振りながら、ローテーションは年齢を考慮し、昨年のような強行軍は避ける様子。ブリーダーズゴールドカップJpnⅢか、ビューチフルドリーマーカップの選択で、今のところ後者に挑む公算が高い。
取材・文:古谷剛彦
写真:浅野一行(いちかんぽ)
コメント
アップトゥユーから離されずにレースを進めて欲しいというオーダーでした。序盤は流れが速くて置かれましたが、向正面でペースが落ちた時に差を詰めることができ、その後は思い描いていたレースができました。人気に応えることができ、ホッとしました。
逃げるアップトゥユーが相手だと思っていましたが、五十嵐騎手が上手にエスコートしてくれました。昨年はブリーダーズゴールドカップから強行軍で水沢(ビューチフルドリーマーカップ)にも出走しましたが、年齢を考慮して水沢に絞ったローテーションを予定しています。