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連載第55回 1999年 かしわ記念

『サプライズじゃない!南関2冠馬の実力』
1999年 かしわ記念 サプライズパワー

Movie

(映像ファイルサイズ:16.1MB)

 今はゴールデンウィークに行われるマイルのJpnⅠとして、中央、地方のマイラーが熱い戦いを繰り広げているかしわ記念だが、1999年当時はまだGⅢで、開催時期も5月中~下旬に行われていた。
 1996年から指定交流競走(中央・地方交流)となり、これまで大井のヒカリルーファス、中央のバトルライン、そして前年は船橋のアブクマポーロが1分35秒4のレコードで圧勝している。
 99年のかしわ記念。地元の雄アブクマポーロはダイオライト記念後に左後肢飛節捻挫で休養。その年のフェブラリーステークスに勝ち、地方所属馬として初めて中央競馬のGⅠを制したメイセイオペラもシアンモア記念出走後は帝王賞直行ということで不在で、中央勢が人気の中心となった。
 1番人気はその年の平安ステークス、名古屋大賞典、アンタレスステークを制し絶好調のオースミジェット。2番人気に前年の3着馬で、以降エルムステークス、浦和記念に勝ち、南部杯2着、フェブラリーステークス3着と8歳でも全く衰えるところのないタイキシャーロック。
 前述の地方両雄不在の中、3番人気に推されたのが船橋のサプライズパワー。交流競走の勝ち鞍こそないが、3歳時には東京王冠賞、東京ダービーを制した2冠馬。舛添要一氏が参議院選に出馬する前まで馬主であったことも、当時話題となっていた。
 ゲートが開いて4番人気のスノーエンデバーが躓き、1番人気のタイキシャーロックはフェブラリーステークス以来の久々でプラス17キロが影響したのか、スタートで立ち遅れる。好スタートサプライズパワーがハナに立つ勢いも、キクノウィンが押してハナに立つ。そして普段は中団に位置するサプライズパワーが予想外の2番手。並んでメイショウアムール、その直後にナショナルスパイ、メイショウモトナリ、そしてタイキシャーロックは中団に。オースミジェットはそのさらに後ろのインコースで、前を見ながらじっくりレースを進める。スタートで躓いたスノーエンデバーは後方から2頭目の位置で向正面に。
 向正面に入ってすぐ、タイキシャーロックが抑え切れない感じで一気に2番手まで押し上げる。スノーエンデバーも後方から徐々に位置取りを上げていく。1000m通過は61秒3の平均ペースだが、中団はやや落ち着かないレース展開。
 3~4コーナーを回って最後の直線。各馬ラストスパートで内外に広がると、その期を捉えてサプライズパワーが一気に抜け出す。オースミ、タイキも連れて動く。タイキシャーロックは下がるキクノウィンをうまく捌けず、最後は抜け出したサプライズパワーをオースミジェットが追いかける形になったが、サプライズパワーが1馬身の差で押し切り、ダートグレード競走初制覇を飾った。
 石崎隆之騎手は「最後は一杯になったけど、このメンバー相手によく頑張ってくれた」とサプライズパワーを労い、川島正行調教師は「鞍上の判断が良かったし、思い通りのレースが出来た」と笑顔をみせた。
 このレースが決してまぐれや作戦勝ちではないことを証明したのが、次走の帝王賞だった。かしわ記念では中央の有力馬と斤量差があった。しかし、定量の帝王賞で同じく2番手を進み、その年のフェブラリーステークスの覇者メイセイオペラの2着に粘った。3着のオースミジェットには、かしわ記念同様1馬身の差を付けている。
 その後も勝ち負けを繰り返しながらも、翌年の日本テレビ盃(当時GⅢ)で2つ目のタイトルを得た。8歳まで南関東で活躍し、2002年の帝王賞(6着)の後中央に移籍するも、1戦も出来ず現役引退。
 重賞11勝、ダートグレード競走2勝、そして5年連続重賞勝利など47戦18勝、5億円を超える獲得賞金と、当時としては優秀な競走成績であったが、メイセイオペラ、アブクマポーロ両雄と同じ時代に生まれたのは惜しかった。
 引退後は種牡馬となった。種牡馬としては3頭の産駒を残し、うち2頭が競走馬となり、さらにそのうちの1頭ジョウショーエビスが佐賀で勝ち星を挙げている。2011年7月に種牡馬も引退。新冠の牧場で功労馬として余生を送っている。
文●日刊競馬 小山内完友
写真●いちかんぽ

競走成績

第11回 かしわ記念 平成11年(1999年)5月26日
  サラブレッド系 1着賞金3000万円 船橋 1,600m 曇・良
着順 枠番 馬番 馬名 性齢 重量 騎手 タイム・着差 人気
1 6 9 サプライズパワー 牡6 58 石崎隆之 1.39.5 3
2 1 1 オースミジェット 牡6 59 四位洋文 1 1
3 5 7 タイキシャーロック 牡8 59 横山典弘 クビ 2
4 3 4 ナショナルスパイ 牡6 55 早田秀治 3/4 10
5 2 2 スノーエンデバー 牡6 57 佐藤哲三 1/2 4
6 8 13 チェリーラスター 牡5 54 安藤勝己 3 8
7 5 8 メイショウモトナリ 牡6 58 安田康彦 1/2 6
8 6 10 キクノウイン 牡7 55 佐藤隆 クビ 5
9 3 3 ダイアモンドコア 牝5 53 森下博 クビ 7
10 7 11 メイショウアムール 牡9 59 河内洋 3 9
11 4 6 アマゾンオペラ 牡9 60 桑島孝春 クビ 11
12 7 12 ハギノハンター 牡7 54 山林堂信 3/4 12
13 8 14 ミナミノシェーバー 牡7 54 白田日出 2 1/2 13
14 4 5 シービーダイコク 牡10 54 佐藤祐樹 1 14
払戻金 単勝650円 複勝130円・110円・120円 枠連複400円

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