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帝王賞~ジャパンダートダービー(第90回)

帝王賞JpnⅠ

 ジーワン初制覇となったケイティブレイブは、おそらく逃げるか先行するはずが、躓いたような感じのスタートで最後方からになりました。2コーナーから向正面に入ったあたりでも、縦長の12番手あたりの位置取りでした。直線では、他馬とは違う脚色で追い込んで、先頭に立つのはあっという間でした。これまでは逃げるか2、3番手あたりからレースを進めて勝っていた馬が、こういうレースができるのには驚きました。先行勢は緩みのない流れになって、結果的にうしろから行ったことで後半の脚が生きる展開になったようです。出遅れても慌てずじっくり乗った福永騎手も好騎乗でした。
 2番手を追走したクリソライトは直線単独で先頭に立って、最後までバテずによく伸びています。3着のアウォーディーには3馬身差をつけていますから、勝っていてもおかしくないレースでした。ただ今回は勝ったケイティブレイブの福永騎手の騎乗を褒めるべきでしょう。
 1番人気に支持されたアウォーディーは2番枠からのスタートで、前の2頭を先に行かせ、自身は外に持ち出して3番手からの追走でした。4コーナーではクリソライトの直後にピタリとつけていましたが、直線では伸びませんでした。ドバイワールドカップ(5着)遠征からの復帰戦で、目に見えない疲れがあったかもしれません。よくなるのはこのあと1、2戦使われてからではないでしょうか。
 同じくドバイ遠征だったアポロケンタッキーは5着、ゴールドドリームは7着と、3頭とも力を発揮できませんでした。

スパーキングレディーカップJpnⅢ

 アンジュデジールの横山騎手は、トーコーヴィーナスとララベルを行かせてラチ沿いの4番手。ぴったり折り合って絶好位を追走しました。3コーナーを回ってからの勝負どころでも手ごたえは楽なまま。外からホワイトフーガが一気に仕掛けていっても、まだ追い出しを我慢していました。4コーナーを回るところでは、ララベルが外のホワイトフーガに併せに行ったことでうまく内が空いて、そこから抜けてきました。横山騎手の好騎乗ですが、すべてがうまくいったレースでした。
 ララベルは、2番手追走は狙ったとおりでしょう。4コーナー手前でホワイトフーガが一気に来たところで離れず勝負に行きました。ホワイトフーガを負かさないことには勝てないと思っているでしょうから、アンジュデジールに内をすくわれたのは仕方ないと思います。それでも勝ったアンジュデジールからは1馬身半差ですから、牝馬同士ならいずれチャンスはあるでしょう。
 ホワイトフーガは、大型馬で内に包まれるとよくないので、スタート後は位置取りを下げて外に持ち出して行きました。斤量を背負っていることもあって、道中は相変わらず行きたがるところがありました。3~4コーナーでは抜群の手ごたえでララベルをとらえにかかりましたが、直線は伸びませんでした。去年勝っているとはいえ58キロという斤量は厳しかったと思います。

ジャパンダートダービーJpnⅠ

 ヒガシウィルウィンは、北海道から移籍してきたときから目を引いた馬でした。道中は5、6番手の馬群の中を追走して、3コーナー過ぎからかなり追ってきています。4コーナーでは馬群をさばいてよく外に出しました。一瞬、キャプテンキングの進路を狭くするような場面もありましたが、直線を向いてすぐに立て直しました。ゴール前、サンライズソアが内から抜け出していたところ、差し切ったのはゴール寸前でした。本田騎手の騎乗も見事でした。東京ダービーのときよりも格段に力をつけた印象です。2001年のトーシンブリザードでもこのレースを制している佐藤賢二調教師は、馬を仕上げるのはうまいです。
 サンライズソアは最初の直線で徐々に内に進路をとって、ラチ沿でレースを進めていました。特に3~4コーナーではコースロスのない内ぴったりを回ってきて、直線を向くとラチ沿いを抜けてきました。一旦は後続を振り切って、ほとんど勝ったようなレースでした。これで差し切られたのでは仕方ありません。見ごたえのあるレースでした。

佐々木竹見(ささきたけみ)
元川崎競馬所属騎手。地方競馬通算7,151勝という世界歴代6位(当時)の勝ち鞍を挙げ、2001年7月8日に騎手を引退。
引退後も2012年3月までNAR地方競馬全国協会参与として後進の指導にあたる等、地方競馬の発展に大きな役割を果たし続けている。