各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。
第10回 金沢プリンセスカップ
金沢競馬で今季初の2歳重賞「金沢プリンセスC」を、
ベーカバド産駒のグランスーリールが逃げ切り勝ち!
金沢競馬で行われる今季初の2歳重賞「第10回金沢プリンセスカップ」。牝馬限定戦ながら、未来優駿シリーズの「兼六園ジュニアカップ(11月1日)」、そして「金沢ヤングチャンピオン(11月29日)」へもつながっていく重要な一戦としてすっかり定着してきた。この時期の金沢競馬には、早い時期からホッカイドウ競馬で経験を積んだ2歳馬が転厩し、いきなり重賞で好走するケースが見受けられる。昨年も門別で5月にデビューして5戦を戦い、金沢へ移籍して2戦目のエムティサラがこのレースを制している。今年もレベルの高いホッカイドウ競馬で新馬勝ちを収めているロンリーウーマン(牝、金沢・中川一男厩舎、父メイショウサムソン)、ホーリーデーンズ(牝、金沢・加藤和義厩舎、父ロージズインメイ)の2頭が移籍初戦をこのレースで迎え、新天地でのレースぶりに注目が集まった。
その移籍組を押さえて1番人気(単勝1.7倍)の支持を受けたのが、デビューから2戦2勝の地元生え抜き馬ブライトエンプレス(牝、金沢・金田一昌厩舎、父ブラックタイド)。デビュー戦は8馬身、2戦目は4馬身をつける快勝。その2戦目「サードニクス賞」で、今回出走メンバーの半分以上(7頭)を完封していることからも、地元デビュー組牝馬の中では抜けた存在と目されていた。
差のない2番人気(単勝2.6倍)に、ホッカイドウ競馬から移籍してきたロンリーウーマン。4月のデビュー戦で7馬身差のぶっちぎり勝ちを収めると、夏にはJRA札幌の2歳オープン「コスモス賞」「すずらん賞」へも挑戦。遠征した芝レースでは結果が出なかったが、久々となるダート戦での巻き返しに期待が集まった。
5枠に並んで入ったその2頭が抜けた人気となり、戦前は一騎打ちムード。前走「サファイア賞」でワンツーした同厩舎のジュエリーハンター(牝、金沢・金田一昌厩舎、父オンファイア)とグランスーリール(牝、金沢・金田一昌厩舎、父ベーカバド)は、単勝10倍台と離されて3、4番人気でつづいていた。
ゲートが開いてスタート直後、5枠から出た人気2頭が接触するような形でダッシュがつかず、最初のスタンド前直線でポジション取りに後れをとった。それを尻目に、8枠スタートのグランスーリールが好ダッシュを決めてハナを奪い、ショウケンガール(牝、金沢・加藤和義厩舎、父キャプテントゥーレ)、ウインドワルツ(牝、金沢・野田幸雄厩舎、父フォーティナイナーズサン)、ヤマショウベガ(牝、金沢・金田一昌厩舎、父ロッコウオロシ)らがこれを追いかけて前は固まった状態。人気のブライトエンプレス、ロンリーウーマンは中団やや後方という位置取りで向う正面に差しかかる。3~4コーナーでは、ブライトエンプレスが置かれ気味にポジションを下げていき、逆にロンリーウーマンがポジションを上げてきた。しかし、逃げていたグランスーリールもここでペースを上げたため、差は一向に詰まらない。そのまま直線に入ると、さらにグランスーリールが加速して後続との差を広げ、ゴール板では4馬身差をつける鮮やかな逃げ切り勝ち。最後まで先頭を必死に追いかけたヤマショウベガが2着に入り、そこから3馬身離れてショウケンガール。ブライトエンプレスも最後に鋭い追い込みを見せたが、先頭からは1秒5も離された4着だった。
優勝したグランスーリールは、8月の「サードニクス賞」でブライトエンプレス、9月の「サファイア賞」でジュエリーハンターと、同厩舎の両馬に完敗を喫していたが、この重賞で見事に雪辱を果たした。金田一昌厩舎は4頭出しだったが、人気の低かったグランスーリール(4番人気)とヤマショウベガ(10番人気)がワンツーを決め、層の厚さを示した形だ。一の矢がこけても、二の矢、三の矢が出てくるという、今シーズンのホッカイドウ競馬2歳牝馬戦線を席捲する角川秀樹厩舎の快進撃を連想させるような「第10回金沢プリンセスカップ」の結果だった。
文:浜近英史(うまレター)