各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第12回 リリーカップ

9/3(木) 門別 1200m  モダンウーマン Movie競走成績

人気馬三つ巴のリリーカップ(門別)は、
逃げ粘った快速娘モダンウーマンに軍配!

 10月15日に門別競馬場で行われる2歳牝馬の大一番「エーデルワイス賞(JpnⅢ)」をめざす快速牝馬たちが、その優先出走権を懸けて同じ舞台で戦う重賞「リリーカップ」。今年で12回目を迎えたが、昨年、距離1000mの2歳牝馬重賞「フルールカップ」が新設されたことにより、エーデルワイス賞と同じ距離1200mでの施行に変更され、より本番に直結する重要な位置づけの重賞となった。昨年のリリーカップ優勝馬ステファニーランは本番で9着と振るわなかったが、同レース2着のジュエルクイーンが本番でも2着に健闘し、「グランダム・ジャパン2014」2歳シーズンのチャンピオンにも輝いている。

 今年、その重要な一戦に顔を揃えた快速2歳牝馬は11頭。人気はタイニーダンサー(牝、父サウスヴィグラス、北海道・角川秀樹厩舎)、マックスガーデン(牝、父アドマイヤマックス、北海道・林和弘厩舎)、モダンウーマン(牝、父サウスヴィグラス、北海道・角川秀樹厩舎)の3頭に集中し、高レベルな三つ巴の戦いに期待が高まった。

 その中でも単勝1.9倍の支持を受けたのは、日本一早い2歳重賞「栄冠賞」の覇者タイニーダンサー。7月にはJRA函館の芝重賞「函館2歳ステークス(GⅢ)」へ遠征し、そこでも地方馬最先着の4着と健闘している。栄冠賞では僚馬モダンウーマンを差し切って3馬身突き離しており、そのレース内容からも現時点では一歩抜けた存在と目されていた。ただ、この日の馬体重は前走からプラス14kg。その数字だけを見ると本番を見据えた余裕残しと勘繰ることもできるが、前走の函館遠征で6kg減らしていたことを考慮すると、馬体を戻してさらに成長分という見方が正しいのだろう。パドックでは気合いを漲らせ、貫禄十分に周回を重ねていた。

 単勝3.8倍でそれにつづいたのが、重賞初挑戦となるマックスガーデン。5月の新馬戦で2着馬に2.3秒差をつける大差勝ちを収め、2戦目には栄冠賞の2着馬モダンウーマンを完封。キャリア2戦と実戦経験は浅いが、ここで重賞馬たちを一蹴し、一気に主役の座を奪い取るだけの可能性を秘めた期待馬だ。

 さらに単勝4.0倍と差がなくモダンウーマン。2戦目にタイニーダンサー、3戦目にマックスガーデンの先着を許しているが、4戦目に「フルールカップ」を逃げ切り、重賞タイトルを手にしている。スタートダッシュからハナを奪うスピードは群を抜いており、ここもペースを握ってライバルたちを置き去りにする戦略をとってくることだろう。

 以下、ジャストゥラヴ(牝、父シニスターミニスター、北海道・田中淳司厩舎)が18.2倍、リコールクレール(牝、父ケイムホーム、北海道・川島洋人厩舎)が18.5倍、ミスミランダー(牝、父アッミラーレ、北海道・松本隆宏厩舎)が22.5倍でつづいた。

 向う正面2コーナーポケットからのスタートとなる門別1200mコース。ゲートが開いて、全馬出遅れることなくきれいなスタートから、やはりモダンウーマンがダッシュよく飛び出してハナを奪った。内からリコールクレール、外からサダムフジコ(牝、父クロフネ、北海道・川島洋人厩舎)がこれを追いかけ、8枠スタートのマックスガーデンとタイニーダンサーは外を通って4~5番手という位置取り。3~4コーナーに差しかかると、逃げるモダンウーマンとサダムフジコに、外からマックスガーデンとタイニーダンサーが並びかけて直線へ。先にサダムフジコが脱落し、直線半ばでは人気馬3頭の追い比べとなった。逃げ粘るモダンウーマンを、鋭い末脚で追いつめてきたのはマックスガーデンの方。ゴールに向けて少しずつその差は詰まったが、半馬身届かずモダンウーマンが先にゴール板を駆け抜けた。タイニーダンサーはコーナリングで大外をまわったコースロスが響き、先頭のモダンウーマンとは2馬身離された3着。2ヶ月前に行われた栄冠賞ワンツー馬の順位が逆転し、その間に期待の逸材マックスガーデンが割り込むという結果となった。

 優勝したモダンウーマンは、8月の「フルールカップ」につづき重賞を連勝。その生まれ持ったスピードを活かしながら、レースを経験するごとに成長している印象があり、強豪JRA勢を迎え撃つ「エーデルワイス賞」でも、地元代表として快速ぶりを如何なく発揮してくれそうだ。鞍上の阿部龍騎手は、今年の2歳重賞を3勝目と絶好調。角川秀樹調教師は7度目のリリーカップ制覇となり、抜群の相性を示した一戦だった。
阿部龍騎手
先に行く馬がいれば2番手でもと思っていましたが、スピードの違いで自然にハナに立てました。すぐ後ろに何頭かいる形での逃げとなりましたが、馬はあわてる素振りもなく、折り合いもしっかりついていました。最後は迫られましたが、よく踏ん張ってくれましたね。まだまだ強くなる馬だと思いますので、さらに大きなタイトルを狙いたいです。
角川秀樹調教師
状態は良かったですし、スムーズに先行して思い通りの競馬をしていたので、レース中は安心して見ることができました。最後はいっぱいになりましたが、よく辛抱してくれました。勝ててホッとしたというのが正直な感想です。エーデルワイス賞は当初から目標にしていたレースなので、いい状態に仕上げて出してあげたいですね。応援してください。

 
文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義