各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第15回 フローラルカップ

9/22(休火) 門別 1600m  タイニーダンサー Movie競走成績

約1ヶ月後の大一番へ向けた最後の前哨戦「フローラルカップ」を、
2013年生まれ最初の重賞馬タイニーダンサーが「大差」貫禄勝ち!

 8月中旬から「フルールカップ」「リリーカップ」とつづいてきたホッカイドウ競馬の2歳牝馬重賞。3戦目となるこの「フローラルカップ」が、約1ヶ月後に迫った「エーデルワイス賞(JpnⅢ)」へ向けた最後の前哨戦となる。今年から門別競馬場に新設された内回り1600mに距離変更され、大一番への優先出走権を懸けた2歳牝馬の戦いが行われた。

 今年で第15回を迎える「フローラルカップ」の歴代優勝馬には、ネフェルメモリー(南関東牝馬クラシック二冠)、クラーベセクレタ(南関東クラシック二冠、「クイーン賞」優勝)、エミーズパラダイス(「ロジータ記念」優勝、「羽田盃」2着、「東京ダービー」3着、「エンプレス杯」2着)、カイカヨソウ(「東京プリンセス賞」優勝、「マリーンカップ」3着)、ノットオーソリティ(南関東牝馬重賞4勝)など、ホッカイドウ競馬を巣立ったのちに南関東競馬の主役を張ることになる名牝たちがずらりと顔を並べる。また第9回の優勝馬オノユウは、その勢いのまま「エーデルワイス賞」も制し、ダートグレードホルダーとなった。

 今年の「フローラルカップ」には、3週間前に「リリーカップ」を戦った6頭を含む12頭がエントリー。人気は、その「リリーカップ」で3着したタイニーダンサー(牝、北海道・角川秀樹厩舎、父サウスヴィグラス)に集中し、単勝オッズは1.2倍を示していた。6月末の「栄冠賞」を制して2013年生まれ最初の重賞馬になると、夏に遠征したJRAの芝重賞「函館2歳S(GⅢ)」でも地方馬最先着の4着。加えて、ここまで勝ち負けを繰り返してきたモダンウーマン、マックスガーデン、リンダリンダのいないメンバー相手となれば、絶対に負けられない一戦となる。ファンの興味は、本番を見据えてタイニーダンサーがどんな勝ち方をするかという1点に絞られた。

 大きく離れた2番人気は、重賞初挑戦となるサムバディトゥラブ(牝、北海道・角川秀樹厩舎、父スマートボーイ)で単勝14.3倍。前走「リリーカップ」7着のモリデンサンバ(牝、北海道・桑原義光厩舎、父マーベラスサンデー)が単勝17.3倍、同5着のサダムフジコ(牝、北海道・川島洋人厩舎、父クロフネ)が単勝17.7倍でつづき、同9着のジャストゥラヴ(牝、北海道・田中淳司厩舎、父シニスターミニスター)以下は単勝20倍以上のオッズを示していた。

 3コーナーの方向からゴール板に向けて夕陽が差し込む時間帯に組まれたメインレース。門別内回りマイルコースのスタート地点は、スタンド前の直線残り200mハロン棒付近にゲートが構えられる。背中から眩しい夕陽を受けた12頭が一斉にスタートを切り、1コーナーをめがけてまずはポジション争い。8枠スタートのリコールクレール(牝、北海道・川島洋人厩舎、父ケイムホーム)、ジャストゥラヴも好スタートから前を伺うが、最内から出たサムバディトゥラブがコーナリングで先手を奪い、ハナに立ってペースを握る展開になった。断然人気のタイニーダンサーは、前3頭を見るような位置で追走。そのまま向う正面のバックストレッチに入り、レースが動いたのは3コーナー。タイニーダンサーが押さえられない手応えで早くも先頭に立ち、持ったままで後続を引き離していく。4コーナーをまわって直線に入ると、あとはタイニーダンサーの独壇場。1頭だけ次元の違う脚で他11頭をどんどん突き離し、鞍上の桑村真明が手綱を動かすことなく余裕の優勝。そのあと2着サダムフジコがゴールしたのは、タイニーダンサーがゴール板を通過してから2.5秒もあとのことで、着差は「大差」と表示された。

 あきれるほどの強さ――。まさにそんな印象を見るものに与えたタイニーダンサーは、「栄冠賞」につづく重賞2勝目。「栄冠賞」と「フローラルカップ」の両レースを制した馬といえば、ネフェルメモリー、オノユウ、クラーベセクレタ、ノットオーソリティといった錚々たる名牝の名が挙げられる。この勝利でタイニーダンサーの未来は、果てしなく広がったといえるだろう。

 また管理する角川秀樹調教師は、ここまでに行われたホッカイドウ競馬の2歳重賞6戦中、なんと5勝(タイニーダンサー2勝、モダンウーマン2勝、リンダリンダ1勝)を挙げる快進撃。10月15日の「エーデルワイス賞」では、その角川厩舎重賞馬トリオが中心となり、中央勢を迎え撃つことになるだろう。アンペア、オノユウ、ハニーパイにつづく角川厩舎の2歳牝馬ダートグレード4勝目が、真に現実味を帯びてきた。
桑村真明騎手
前走が道中引っかかって力みながらのレースとなってしまったので、今回は気持ちよく運べるように心がけて乗りました。ペースが速く流れてくれたこともありますが、今回はしっかりと折り合っていましたね。先頭に立って1頭になってからモノ見をしたりして遊んでしまう面も見せましたが、強い競馬だったと思います。まだまだ強くなる馬だと思いますので、本番が楽しみです。
角川秀樹調教師
エーデルワイス賞へ直行しようか迷いましたが、涼しくなって絞れにくくなってきていたので、ここを使うことにしました。コーナーを4回まわる競馬が初めてなので、折り合い面を心配しましたが、今日のレースぶりなら問題ないですね。エーデルワイス賞はもちろんですが、距離の伸びる北海道2歳優駿も見据えての出走だっただけに、今回使ったのは大きな収穫だったと思います。

 
文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義