各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第9回 ブリーダーズゴールドジュニアカップ

8/6(木) 門別 1600m  ストレートアップ Movie競走成績

ブリーダーズゴールドジュニアカップを制したのは、
新種牡馬カジノドライヴ産駒のストレートアップ!

 門別競馬場で行われる真夏の2歳王者決定戦「ブリーダーズゴールドジュニアカップ」。2007年に創設され、今年で9回目を迎えた歴史の浅い重賞だが、3歳馬の頂上決戦「北海優駿(ダービー)」、古馬の頂上決戦「道営記念」に並び、ホッカイドウ競馬では最高格付(ダートグレード競走は除く)の『H1』に指定されている、1着賞金500万円のビッグレースである。

 昨年の同レース優勝馬オヤコダカは、秋に「兵庫ジュニアグランプリ(JpnⅡ)」へ遠征して2着。3年前の優勝馬カイカヨソウは、牝馬ながらに「北海道2歳優駿(JpnⅢ)」へ挑戦して3着。秋から始まる2歳ダートグレード戦線で活躍する大物が満を持してベールを脱ぐ、その舞台こそが「ブリーダーズゴールドジュニアカップ」であると言ってもいいだろう。

 ただ昨年までと大きく違うのは、今年から距離が1800mから1600mに短縮され、門別競馬場に新設された内回りコースを使用すること。早い時期に素質を開花させる完成度の高さはもちろんだが、それに加えてロスなく経済コースをまわってこられる器用さや、馬込みに怯まない勝負根性も求められることになりそうだ。

 今年、この重要な一戦に顔を揃えた精鋭馬は8頭。なかでも大きな注目を集めたのが、前走のフレッシュチャレンジ競走(1600m)で2着馬に2.8秒もの差をつけるぶっちぎり勝ちを収めたライゾマティクス(牡、北海道・田中淳司厩舎、父スウェプトオーヴァーボード)。今年5月のトレーニングセールで3000万円というリザーブ価格が設定され話題をさらった素質馬が、デビュー戦で期待に違わぬ怪物ぶりを披露してファンの度肝を抜いていた。「ハッピースプリント級の大物」という声が早くもあがり始め、デビュー2戦目にもかかわらず単勝オッズは1.3倍。この圧倒的な数字からも、期待の大きさが伺える。

 2番人気は、前走のウィナーズチャレンジ(1600m)をレコード勝ちし、3連勝で臨んできたキーパンチャー(牡、北海道・堂山芳則厩舎、父スズカマンボ)で5.1倍。3番人気は、初重賞の栄冠賞(1200m)で1番人気に支持されたものの4着に敗れたスティールキング(牡、北海道・角川秀樹厩舎、父シルバーチャーム)で7.4倍。この3頭が10倍を切るオッズで、ストレートアップ(牡、北海道・柳澤好美厩舎、父カジノドライヴ)が10.6倍、ミスミランダー(牝、北海道・松本隆宏厩舎、父アッミラーレ)が19.3倍でつづく戦前の評価だった。

 前日から日高地方も30℃を超える猛暑がつづき、発走時刻の17時が近づいてもムシムシと汗ばむ気候。各馬が駆けたあとに砂煙が舞うようなパンパンに乾いた馬場は、力勝負を予感させる。ゲートが開いて、まっ先に飛び出したのは最内枠のバーバリライオン(牡、北海道・川島洋人厩舎、父オンファイア)。外から好スタートを切ったスティールキングもこれを追いかけるが、コーナーワークでバーバリライオンがハナを奪った。差がなくミスミランダー、ストレートアップらもつづき、スタートで少し後手を踏んだライゾマティクスは、外々をまわって中団まで押し上げる。3~4コーナーで先頭に立ったスティールキングが直線に差しかかると、道中内でじっと我慢をしていたストレートアップがピッタリとラチ沿いをまわって先頭に追いついてきた。逆に外々をまわらされたライゾマティクスは直線で脚が止まり、ストレートアップとスティールキングの一騎打ちに。最後は終始経済コースをまわってきたストレートアップの脚が勝り、1馬身半突き離してゴール板を駆け抜けた。2着にはスティールキングが粘り込み、離れた3着はキーパンチャー。ライゾマティクスは伸びを欠いて6着に敗れた。

 優勝したストレートアップは、期待の新種牡馬カジノドライヴの初年度産駒。社台ファームの生産馬で、同牧場の外厩馬として調教を積まれてきた良血馬だ。前走のウィナーズチャレンジは2着に敗れているものの、デビュー戦では7馬身差の圧勝劇を披露した素質馬であることを考えると、今回は人気の盲点となっていた感もある。秋の2歳ダートグレード戦線でも、好勝負が期待できる逸材であることは間違いない。また、門別内回りコースのお手本を示すような、阿部龍騎手の好騎乗もキラリと光る真夏の2歳王者決定戦だった。
阿部龍騎手
内回りコースですし、2番枠からのスタートだったので、無理をせず内で我慢してレースを進めようと思っていました。3コーナーで一旦ついていけない感じになったのですが、そこからもう一度持ち直し、前の開いたところをよく伸びてくれました。狭いところに入っても怯まず、強い気持ちを持っている馬だと思います。
柳澤好美調教師
内々をまわって、ジョッキーが上手く乗ってくれましたね。3コーナーで少し差がつきましたが、まだ手応えには余裕がありそうだったので、大丈夫だと思っていました。終いの脚がしっかりしているのが、この馬の良いところだと思います。これからもいろんなレースを使っていくと思いますので、応援してください。

 
文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義、浜近英史