浅野靖典の全国馬美味(ウマウマ)行脚」地方競馬にまつわる「ウマいもの」を毎月ご紹介!
“鉄人”佐々木竹見の見解」佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!
高橋華代子の(続)気になるあの馬は…」引退後や転厩した名馬の近況を愛あふれる文章でご紹介!
REWIND 90's」当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!

第52回 2012年11月20日 トミケンクイン

 ちょうど部屋の荷物を整理していたとき、Video Furlong98が出てきました。前期と後期に分かれていて、重賞勝ち馬の名前を見ているだけでも地方競馬ファンにはたまりません。アブクマポーロ、メイセイオペラ、ブライアンズロマン、リバーセキトバ、ロバリーハート、ニホンカイユーノス、ケイエスヨシゼンなどなどなど、当時の地方競馬を彩った馬たちばかりです。

 その中に、トミケンクインの名前もありました。笠松の名伯楽・荒川友司調教師に育てられ、第1回TCK女王盃を川原正一騎手の手綱で優勝した馬です。森下博騎手のエフテーサッチが逃げてその先団後ろ5頭目にトミケンクインがつけていき、最後の直線では粘るエフテーサッチを力強い脚取りで交わし切るとそのまま先頭でゴールイン。これがトミケンクインにとって最初で最後の重賞タイトルにもなりました。

 現役引退後は01年に初年度産駒を出産すると、現在は競馬場に8頭の産駒を送り出しているベテラン。6年前から金石牧場さん(浦河)にやって来て繁殖生活を送っていましたが、昨年からは功労馬として過ごしています。

 「うちでは『トミちゃん』って呼んでいます。『トミちゃん』は繁殖牝馬の中でいちばん立場が弱かったんですよ。唯一勝てるのは、一緒の放牧地に1歳馬を放したときくらいです(笑)」と金石牧場の奥様・恵さん。

 私がおじゃました日はトミケンクインと一緒に4歳の繁殖牝馬がいたんですが、トミケンクインにカメラを向けると、そのもう1頭のほうが近寄ってきてなかなか撮影させてくれません。トミケンクインは遠目からこちらを伺う程度……。なるほど、力関係ができていたんですねぇ。「『トミちゃん』負けないで!」

 「うちのおばあちゃんでも引っ張れるくらい、おとなしくて優しい仔です」(恵さん)。
 最初に『トミちゃん』という愛称を聞いたとき、どうしても『クイン』の印象が強かったので不思議な感覚だったんですが、金石牧場さんご一家のお話しを伺っていくうちに、『トミちゃん』というのも納得(笑)。

 この夏は北海道もひじょうに暑かったそうですが、食欲もあって病気もせずに元気に過ごしたそうです。放牧地には午前6時から午後4時までいてたっぷり日光浴を行う日々。今でも当時のファンたちが会いに来てくれるそうです。

 『トミちゃん』は、金石牧場さんご一家の温かい笑顔に包まれながら18歳初冬を迎えていました。

 トミケンクインの見学は、競走馬のふるさと案内所のホームページを確認の上お出かけください。(http://uma-furusato.com/

高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に活動中。
・南関魂
・TCKホームページ重賞競走
・楽天競馬
・競馬総合チャンネル地方コース
・ウェブハロン
・船橋競馬を愛する100人の会