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グランダム・ジャパン特集
レーススケジュール
レース名 実施日 競馬場 距離 地区
読売レディス杯 7/27(火) 金沢 1,500m 北陸・東海
近畿・中国・四国
兵庫サマークイーン賞 8/25(水) 園田 1,700m 北陸・東海
近畿・中国・四国
ビューチフル・
ドリーマーカップ
8/30(月) 水沢 1,900m 東北
トゥインクルレディー賞 9/15(水) 大井 1,600m 南関東
ノースクイーンカップ 9/21(火) 門別 1,800m 北海道
秋桜賞 9/29(水) 名古屋 1,800m 北陸・東海
近畿・中国・四国
TCKディスタフ 10/20(水) 大井 1,800m 南関東
 2010年、地方競馬では牝馬競走の振興と牝馬の入厩促進を図るため、新たに世代別牝馬重賞シリーズ 「GRANDAME−JAPAN(グランダム・ジャパン)」を実施します。

 全国各地で行われる牝馬重賞を世代別に体系づけ、競走成績によりポイントを付与。2歳、3歳、古馬の世代別ポイント獲得上位馬に対し、協賛各団体から(社)日本軽種馬協会を通じボーナス賞金が授与されます。地方競馬の優れた牝馬の活躍の舞台を広げるとともに、交流を促進して魅力ある牝馬競走の実施を目指します。
3歳シーズン2歳シリーズ

読売レディス杯
競走成績Movie

自慢の末脚を繰り出し重賞7勝目
古馬シーズン初代女王へ好発進

 グランダム・ジャパン古馬シーズンの初戦は金沢競馬場の読売レディス杯。北陸路の夏はフェーン現象の影響もあって暑いものなのだが、そうは言いつつも30度を超える気温は体に堪える。観客はスタンド内ならフル稼働のエアコンのおかげで居心地よく、屋外観戦もスタンドが太陽光線をさえぎってくれるからさほど苦にならない。しかし馬と騎手は、夏の日差しから逃げる場所がレース直前の待避所しかないから大変だ。
 その配慮もあってか、読売レディス杯のパドックに出走各馬が出てきたのは前のレースが終わってから数分後。それでレース前の消耗は少し減るのだろうが、やはり照りつける日光は強力。たちまち各馬とも鞍下や首筋から汗が流れ始めてきた。
 グランダム・ジャパン3歳シーズンは、最終戦を前に優勝馬が決まったが、規定による「他地区」のレースに出走したのは、笠松所属の4頭のみ。はたして古馬シーズンでは遠征馬がどのくらい出てくるのだろうか。そんな心配をよそに、この一戦は地元馬6頭対遠征馬6頭という構成で争われることに。その陣容も兵庫2頭、笠松2頭、名古屋1頭、浦和1頭という、これまでにない広がりとなった。
 となると、各馬の能力比較が大きなポイント。なかでも浦和所属のジョーイロンデルは3走前に南関東で重賞を制覇している実績がある。地元専門紙では名古屋のシルバーウインドに重い印が集まっていたが、広域場外発売の影響力もあってか、最終的にはジョーイロンデルが1番人気に支持されていた。
 とはいえ、厳しい夏場の気候。各馬の状態面が結果に影響する割合は他の季節より大きいのだろう。ジョーイロンデルはパドックで汗をほとんどかいておらず、この時期の調整と遠征競馬の難しさを感じさせる雰囲気。対照的に好印象だったのが兵庫のキーポケット。首筋や腹回りからじんわりとにじむ汗も健康的に見えた。
 そしてスタート。ジョーイロンデルが枠内で暴れ気味になっているときにゲートが開かれ、1番人気馬が後手を踏む姿にスタンドがどよめく幕開け。そのなかでキーポケットは主導権を取った地元2頭の直後を確保し、名古屋のシルバーウインドも中団の位置をキープ。唯一の3歳馬である笠松のエレーヌは、スタート後に躓いた影響で1コーナーでは後方から2番手という苦しい位置取りになってしまった。
 やや速い流れで地元馬が引っ張る展開は、後半の鋭い脚が持ち味のキーポケットにはおあつらえ向き。しかし一歩先に仕掛けたのはシルバーウインドだった。3コーナーで一気に脚を使って出し抜く作戦は功を奏し、一旦は2馬身ほど前に出た。しかしその企てを成功させまいと、キーポケット鞍上の田中学騎手は力をこめた。最後の直線では渾身のアクションごとに前との差が小さくなり、最後は1馬身半突き放してのフィニッシュ。貫禄の勝利で10ポイント獲得となった。
田中学騎手
馬体増は体が戻ったものですから気にならなかったですね。ゲートもスンナリと出ましたし、向正面での手応えもよかったです。3コーナーで5番(シルバーウインド)に一気に行かれましたが、相手はそこで脚を使っているので最後には交わせると思っていましたし、キーポケットも最後までよく伸びてくれました。とりあえず(古馬シーズンのレースを)1つ勝ったので、次からは気楽に乗れますね。
吉行龍穂調教師
5月に厩舎に戻ってきてから3回能力試験を走って調整してきました。3回目は全体の時計は遅かったのですが、ラストの伸びがよかったので重賞でも勝負になるだろうと判断していましたよ。昔はゲートに入らないなど大変でしたが、年齢とともに気性が落ち着いてきましたね。次は園田で行われるシリーズ2戦目に向かう予定です。


 「(2月22日の)福山牝馬特別のあとは愛知県のイクタトレーニングファームに調整放牧に出して、このシリーズを目標にしてきました」
 とは、馬主の北前孔一郎氏。これから先の連戦を乗り越えるには、体力の有無が大きくモノを言うことになるのかもしれない。
 さてこのレースは金沢競馬場で行われたが、掲示板に灯った数字はすべて遠征馬のもの。その多くが次の兵庫サマークイーン賞に進んでくることが予想される。そして当然、新たな参戦馬もいるはず。
 今年から地方競馬所属の牝馬に与えられた大きな目標は、各地のホースマンのファイティングスピリットを十分に掻き立てているようだ。

取材・文:浅野靖典
写真:宮原政典(いちかんぽ)