有力遠征勢を寄せつけず、水沢巧者の伏兵が大金星

　グランダム・ジャパン3歳シーズンを優勝した笠松のエレーヌの快進撃は、ここ水沢の留守杯日高賞から始まった。そのエレーヌが古馬シーズンのタイトルも狙って再度の参戦。今回も相変わらずのハードスケジュールで、キーポケットとの競り合いを制して読売レディス杯の雪辱を果たした前走の兵庫サマークイーン賞から中4日だが、ファンもすっかりその強さを認識したようで単勝1番人気。4歳の6月にデビューし、ここまで13戦10勝、4着以下なしという“遅れてきた大物”ライネスゴルトが北海道からこの路線へ新規参入して2番人気。留守杯日高賞で笠松勢が上位4着までを独占したこともあり、ここも遠征勢が上位争いかという人気となったが、地元の“人気薄の逃げ馬”マイネベリンダが遠征勢をまとめて負かす大金星をあげるという、波乱の結果が待ち受けていた。
　ほぼ互角のスタートから飛び出したのはマイネベリンダと、地元岩手勢で最も人気を集めた（3番人気）コンゴウプリンセス。少し間隔を置いてエレーヌやトウホクビジンが続き、1周目のスタンド前では早くも流れが落ち着いた。疲れが心配されたエレーヌだが、むしろ好スタートから筒井勇介騎手が「中団から競馬するつもりが、ポンとゲートを出て3番手」というように早々と好位置キープ。そして3コーナーでは「動いていって、コンゴウプリンセスの手応えが悪いのを見て、勝ったと思ったんですが…」（筒井騎手）というエレーヌ自身の手応えだったが、敵はコンゴウプリンセスのさらに前方にいるマイネベリンダだった。
　マイネベリンダは、3コーナーからさらに快調に逃げていく。ここ2走は地元馬相手でも完敗だったが、それは苦手の盛岡戦。盛岡ダート8戦2勝で「盛岡はなぜか良くない」（齋藤雄一騎手）のに対し、水沢では13戦8勝で5着以下なしという抜群の巧者。エレーヌ、トウホクビジン、ライネスゴルトら遠征勢の2着争いを尻目に、ゴールでは齋藤騎手が高々と手をあげる余裕があるほどの完璧な逃走劇だった。
　今年はグランダム・ジャパン古馬シーズンに組み込まれ重要度の増したビューチフル・ドリーマーカップだったが、そうでなくとも齋藤騎手がお手馬で「このレースを勝つために頑張ってきたからうれしい」と語ったように、このレースは年にひとつしかない岩手の古馬牝馬重賞。交流競走で劣勢の続いた岩手所属馬だったが、久々の地元勢快勝に表彰式では大きな声援が飛んだ。