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2009年
・NARグランプリ2008 表彰式典・祝賀会 スナップ写真集
・第58回川崎記念(JpnI)
 参考レース&注目馬解説
・2008年JPNサラブレッド・ランキング
・新人王争覇戦に寄せて
〜高知で腕を磨く郷間騎手&濱田騎手〜
・平成21年新春特別企画
 2大ルーキー対談
2008年
・第54回東京大賞典(JpnI)
 参考レース&注目馬解説
・全日本2歳優駿(JpnI)
 参考レース&注目馬解説
・佐々木竹見元騎手が参戦!
第2回ジョッキーマスターズ
・可能性を感じさせた、
 園田でのJBC開催
・JBCクラシック(JpnI)
 参考レース&注目馬解説
・JBCスプリント(JpnI)
 参考レース&注目馬解説
・マイルCS南部杯
 参考レース&注目馬解説
・釜山を染めるミスターピンク
・2008年上半期JPNサラブレッド・ランキング
・ジャパンダートダービー
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・帝王賞
 参考レース&注目馬解説
・コスモバルク
 3度目のシンガポール挑戦
・かしわ記念
 参考レース&注目馬解説
・“トレスマ”08年初戦レポート
 
 高知競馬場には、全国各地の若手騎手が武者修行にやってくる。地元の競馬場で乗り鞍に恵まれないジョッキーたちが、海を渡って四国唯一の競馬場にやってくるのだ。
 彼らの表情は、馬に乗る喜びに溢れている。勝ったときの笑顔はもちろん、負けて悔しいときでさえ、イキイキと輝いている。
 これまで何人もの騎手を預かってきた雑賀正光調教師は、
「本人たちは乗せてもらって喜んでいる。うちらも、調教や厩舎作業を手伝ってもらって助かってる。高知は騎手が少ないさかいにね。ホンマに『持ちつ持たれつ』や」
 紀三井寺仕込みの関西弁でそう言って、にっこり笑った。

 
郷間勇太騎手
 昨年の大晦日。高知競馬の最終レースを鮮やかに逃げ切ったのは、郷間勇太騎手(川崎・鳥飼春弥厩舎所属)だった。昨年4月から高知へ武者修行に来ている郷間騎手は、9ヵ月で23勝を挙げたことになる。2006年10月のデビューからの通算成績は、26勝(09年1月3日現在)だ。
 デビュー当初から「乗れる新人」として評判が高かった郷間騎手だが、思うように乗り鞍が増えなかった。むしろ次第に減っていった。郷間騎手はこう振り返る。
「最初は乗り鞍も多かったし、いろんな人にちやほやしてもらって、テングになっていたところもありました。だから初心に返ろうと思ったんです。それに、たくさんのレースに乗って、上手くなりたかった。それで鳥飼先生にお願いして、高知で騎乗させてもらうことになったんです」
 高知での騎乗期間中は、雑賀正光厩舎に所属し、朝の調教や厩舎作業に励んでいる。
 雑賀調教師は郷間騎手を、こんなふうに評価している。
「郷間は元々、技術を持ってる。あとは、一を聞いて二がわかるようになれば。騎手は一を聞いて三がわかるようでないとね。最近はだいぶ覚えがようなってきた。こないだ、『ちょっと賢くなったな』って言うたんですよ(笑)」
 郷間騎手は、雑賀調教師のあたたかくも厳しい指導を受けて、着実に腕を磨いている。高知競馬の関係者は、「勇太は今、伸び盛りやき」と口を揃える。騎乗依頼も増え、勝ち鞍も順調に重ねている。今年3月一杯で高知での騎乗を終えるが、どこまで勝ち星を伸ばすだろうか。
「高知に来ていなかったら、僕は騎手を辞めていたかもしれない。ここに来てから、気持ちが本当に変わりました。向上心が膨らんだ。これに尽きます。先輩たちもいい方ばかりで、みんなアドバイスしてくれます。本当に、あったかい競馬場ですね」
 まだあどけない郷間騎手。先輩騎手の勝負服を着て走り回ったりする姿はやんちゃ坊主のようでほほ笑ましいが、「どんな騎手になりたいですか?」と訊ねてみると、グッと表情が引き締まった。
「柔軟な騎手になりたいですね。体もそうですし、馬乗りもそうですし。人とのふれあいも含めて、いろんな面で柔軟な騎手になりたいです」

 昨年5月。郷間騎手と同じく雑賀調教師のもとで武者修行に励む濱田達也騎手(船橋・坂本昇厩舎所属)が、タケショウクイーンという牝馬に騎乗して、黒潮皐月賞を制した。この勝利は、2007年5月にデビューした濱田騎手にとって初勝利であった。
 ちょうど現地観戦していた筆者は、心底ぶったまげた。当時タケショウクイーンを管理していた雑賀調教師でさえ、驚いていた。そもそも、重賞で初勝利を飾るという快挙を成し遂げた濱田騎手自身が、一番キョトンとしていた。
「レースの直後は、重賞を勝った実感はなかったですね。『あっ、勝った。初勝利だ!』という感動のほうが大きかったです(笑)。重賞を勝たせていただいたり、遠征させてくださったりした雑賀先生に、本当に感謝しています」
 濱田騎手はタケショウクイーンと共に、佐賀競馬場で行われた九州ダービー栄城賞に遠征した(8着)。高知優駿(黒潮ダービー)では2着に健闘。貴重な経験を与えてくれた雑賀調教師に対する感謝の気持ちも、浦和の市澤正一厩舎に移籍したタケショウクイーンへの思い入れも大きい。
「南関東に帰ったら、タケショウクイーンに会いに行きたいです」
 
濱田達也騎手
 雑賀調教師いわく、
「とにかく真面目な子。以前は消極的なレースをすることが多かったから、『もっと男らしい乗り方をしなさい。どこかで見せ場をこしらえるように』と指導してきた。今は積極的になってきたし、だいぶ上手になったよ」
 昨年の勝ち星は12勝。今年は元旦のレースで勝利を挙げた。
「高知での騎乗が終わる3月末までに、できるだけ多く勝てるように頑張ります」

 武者修行を経て、ひとまわり大きくなった郷間・濱田の南関東コンビは、1月12日(成人の日)に行われる「全日本新人王争覇戦」に出場する。
 ハタチの彼らを送り出す雑賀調教師は、
「普段通りに乗ったらええと思うけど、『スーパールーキーの川島正太郎くん(船橋・川島正行厩舎)に負けんなよ』とハッパをかけとこうかな?」
 と言って、豪快に笑った。そしてこんなメッセージを添えてくれた。
「もし乗り鞍がなくて困っている騎手がおったら、辞める前に高知に来たらいい。レースに乗ることで腕を磨けるし、レースの面白さを感じ始めたら、勝てるものやさかいにね。若い頃の1年を高知で過ごすことは、無駄にならんから」

 高知競馬場を取材する度に、小さな競馬場が織り成すあたたかいストーリーに心をほぐされる。1月12日の新人王争覇戦では、どんなドラマが繰り広げられるのだろうか。
 
南国土佐の高知競馬場
取材・文・写真●井上オークス



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