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 参考レース&注目馬解説
・2008年JPNサラブレッド・ランキング
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〜高知で腕を磨く郷間騎手&濱田騎手〜
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・“トレスマ”08年初戦レポート

固い握手を交わす地方・中央のルーキー

 毎年12月に受賞式が行われる「日本プロスポーツ大賞」は、大賞受賞者には内閣総理大臣杯が授与される権威ある賞。今年はそのなかで表彰される日本プロスポーツ新人賞に、船橋所属の川島正太郎騎手とJRA所属の三浦皇成騎手が選ばれ、さらに三浦騎手は最高新人賞の栄誉にも輝きました。
 デビュー1年目にしてグレードレースを制した2人の業績は、近年の受賞者のなかでも群を抜いているといえ、次代を担う両騎手の今後にも注目が集まります。今回の特別企画は、スーパールーキー2人が顔を合わせた授賞式会場で実現。騎手デビューを果たした1年目を振り返り、そしてこれからの抱負などについても語っていただきました。

聞き手・構成●浅野靖典(競馬キャスター・ライター)
写真●三戸森弘康、いちかんぽ、M.S

−まずは受賞おめでとうございます−
三浦「1年間頑張ったその結果として賞をいただけたことに感謝しています。また、支えてくれた人がたくさんいたことにも感謝しています」
川島「このようなすばらしい賞をいただけて本当に光栄です。受賞できたのは、まわりの方々の支えがあったおかげかなと思っています」

−いちばんお世話になったのは−
三浦「やっぱり師匠(河野道文調教師)ですね。競馬学校にいるときからすごくバックアップしてもらっていましたし、それはデビューしてからもかわらず、むしろその想いがどんどん増えてきていることを感じます」
川島「そうですね。やはり先生(川島正行調教師)ですね。騎乗のアドバイス、攻め馬のことなどいろいろ教えてもらいました」
三浦「それと、通っていた乗馬クラブがなかったら今の自分はないと思っています。人とのつきあい方も教わりましたし。騎手という仕事をするうえで、たくさんの人にかわいがってもらうということは、大切なことだと思いますから」
川島「はい。ぼくも小さいころから、先生に言葉使いや礼儀などについて指導されてきたことが役に立っているなと感じます」

−外からみていた競馬と、実際に経験した競馬とで感じた違いは−
川島「初めて競馬に乗ったときは、競馬ってこんなにあっという間に終わってしまうんだ、と思いました。そして競馬に乗るごとに、勝つって難しいんだなと感じるようになってきました」
三浦「ぼくもそうですね。勝てないものだなと。テレビで見ていた頃は上位の馬しか見ないわけで、最後のほうを走っていた馬は映像にも映らないこともあります。そのなかで最初のころは後ろを走っていることのほうが多かったですから、実際の競馬はかなり想像とかけはなれているものだなと感じましたね」
川島正太郎騎手−かわしま しょうたろう−

 1990年(平成2年)10月26日、千葉県出身の18歳。船橋・川島正行厩舎所属。 初騎乗は08年5月5日船橋競馬3Rでのブラウンバーデン号(3着)。デビュー2戦目の5Rに、スマートクルーズ号で初勝利を挙げる。8月18日にはクラスターカップ(水沢競馬場・JpnIII)でプライドキム号に騎乗して、重賞初騎乗初制覇(史上最年少でのダートグレード競走勝利)の快挙。続く9月3日にはディープサマー号でアフター5スター賞(大井競馬場・南関東SIII)を勝利して、重賞競走2連勝を達成。その後日本テレビ盃(船橋競馬場・JpnII)では同年の帝王賞馬、フリオーソ号に騎乗して2着に健闘した。昨年末までの成績は177戦32勝で、約18%の勝率をマーク。所属の川島正行調教師は父。川島正一調教師は兄。


−初勝利はともにデビュー初日でした−
川島「ぼくの場合は夢中になりすぎていたというか、それで4コーナーで外にふくらんでしまって。ですから馬の力で勝たせてもらったという感じだったんですが、それでも検量に戻ってきて先生たちと握手したときには、嬉しくて涙が出そうになりました」
三浦「勝ったときは頭が真っ白になりました。いろいろ自分のなかでは『ガッツポーズをしよう』とか考えていたのですが、全然そういうことができる余裕などなかったくらい嬉しかったですね。でもそのレースは、自分のなかで何もかもがうまくいった内容だったんですよ。ですから逆に、ここまでうまくいかないと競馬では勝てないのかと、競馬の厳しさを思い知らされたという気持ちもありましたね。次の日には落馬もしましたし……」
川島「ぼくは小さいころから夢にみていた舞台に立たせてもらったことが嬉しかったですから、逆にもっともっと乗りたいと思いましたよ(笑)」

−デビュー直後と今との違いは感じますか−
三浦「最初は周りについていって、スキをみつけてというレースが多かったですが、人気する馬に乗せてもらうようになってからは自分でペースを判断してというか、自分の動きで競馬が動くことも多くなって。それが今の課題かなと考えています」
川島「デビューした当時よりはマシとは思いますが、今でもまだまだ余裕がなくて。もっとうまくなりたいという気持ちだけです」

−そのなかでも重賞を制覇しました−
川島「(クラスターカップの勝利は)少しは自信になったと思いますが、馬に引っ張ってもらったというようなレース内容なので、(勝利自体は)馬に感謝しています」
三浦「(函館2歳ステークスでは)道中はほかの馬にくっついて行って、直線であいたところに突っ込んで、あとは追っただけですから、馬に実力がありましたね。北海道開催は(騎手が)激戦区なので行く前は不安だったのですが、あの勝利は次の札幌開催に向けての自信になりました」
三浦皇成騎手−みうら こうせい−

 1989年(平成元年)12月19日、東京都出身の19歳。JRA美浦・河野通文厩舎所属。初騎乗は08年3月1日中山競馬場1Rでのモエレロングラン号(6着)。デビュー3戦目の同日10R(潮来特別)のフェニコーン号にて初勝利を挙げる。8月10日には函館2歳ステークス(JpnIII)をフィフスペトル号で重賞初制覇を遂げ、10月25日には武豊騎手が持つ、新人年間最多勝記録を更新した。08年末までにJRA783戦91勝(地方12戦0勝)でJRA騎手リーディング9位の成績を挙げ、民放記者クラブ賞や東京競馬記者クラブ賞など、多数の賞を受賞。日本プロスポーツ大賞では、もっとも貢献度の大きい業績を残したと認められる新人賞受賞者に授与される、日本プロスポーツ大賞最高新人賞に選出された。


川島「あと、重賞を勝ったあとはパドックでのヤジが減りましたね。デビューの開催のときに"やめちまえ"って言われていましたから(苦笑)」
三浦「そうですね。ファンの方々の応援の声も増えた気がします。それに先輩方や関係者の皆さんも、ぼくを普通の減量ジョッキーという目で見てくれていないなと感じるようになりました。減量が適用されないレースでもいい馬がどんどん回ってくるようになってきたことで、どんなにぼくの腕は未熟だろうが勝たせなければいけない、そんな責任感を感じることが多くなりました」

−ただ、責任感が行き過ぎると、実戦には悪影響を及ぼすことも−
川島「ぼくが乗るのは自厩舎(川島正一厩舎、川島正行厩舎)の馬が多いですから、やはり責任は感じますね。落ち込んだときには寝る時間をつくって、気分転換をするように心がけています」
三浦「いまのぼくでは、勝てる馬を勝たすことしかできないというか、馬の力を100%出させることしか考えていませんから、その意味ではプレッシャーで押しつぶされそうになることは今のところないですね」
川島騎手が重賞初騎乗初勝利の快挙を成し遂げた08年クラスターカップ(プライドキム)
川島「ぼくもいまのところ、勝てる力を持った馬でしか勝ったことがないですから、その馬の能力をすべて発揮させることをいちばんに考えていますよ」

−普段の鍛錬は−
川島「特にトレーニングはしていないですが、木馬が厩舎にあるので、それに乗って練習をしています。姿勢は先生に特に注意されますし。教養センターのころ、騎乗中の背中がすごく丸かったんですよ。それが練習のおかげでだんだんきれいなフォームになってきたように思います」
三浦「ぼくも寝る前に腹筋と柔軟運動をするくらいで、あとは木馬中心ですね」
三浦騎手が「会心の騎乗でした」と振り返る08年ペルセウスステークス(バンブーエール)
−自分のレースぶりを評価すると−
三浦「レースが子供っぽいなあと感じます。他の騎手とくらべると動きが甘いと思いますし、走りに重みがないなと」
川島「まだ直さなければならないところはたくさんありますね。先生にもまだたくさん注意されていますし。でもレース中でのロスは少なくなってきたと思います」

―そのなかで、昨年は2人ともGI馬の背中を味わいました−
川島「フリオーソは頭がいい馬なので、普段は自分でセーブしている感じなのですが、レースのときは気合いが全然違って。これがGI馬の動きなんだと、そのとき実感しました」
三浦「(ピンクカメオ=NHKマイルカップ)背中とフットワークがすごくいい馬で、最初に乗った瞬間にそれは感じました。そのよさを実戦で出せなかったのが反省するところなのですが……」
真剣な表情で昨年を振り返る両騎手
−教養センター・競馬学校時に乗っていた馬と現役競走馬との違いは−
三浦「学校の馬より乗りやすいですね。学校の馬に乗るのは生徒なので、変なクセがついていることが多いですし。それに比べると、(競走馬は)普段から乗る人のレベルは上ですし、鍛えているぶん、ギアがもうひとつついていると感じました。迫力も違います」
川島「ぼくも同じですね。教養センターの馬はクセがついていて乗りにくいところがあるのですが、競馬場の馬はそういうことがなくて。首の力とかも違います」
−三浦騎手は地方競馬初騎乗が船橋競馬場でした−
三浦「はい。地方の馬場は砂が深くて、砂が(JRAに比べて)顔とかにすごく付きますし、痛い(笑)。あと、ゲートが広いなあと。JRAのゲートは幅が狭いのである程度馬が御されているのですが、地方のゲートはわりと自由に動けるんですよね。地方競馬は先行有利ですから、スタートには気をつけなければいけない。それであの広さ。大変だなあと思いました」
川島「ぼくは水沢競馬場でJRAサイズのゲートを経験しましたが、確かにキッチリおさまるサイズ。馬があまり余計なことできないので、これはいいなあと思いました(笑)」
三浦「でもレースは中央のほうがタイトに感じますね。馬と馬との間隔が狭いという意味で」
川島「地方競馬は小回りですから、とにかく前に行かないと。ですからスタートしてどれだけスムーズにいい位置に付けられるか、その技術を磨いていかなければと思っています」

−競馬はオフシーズンのないスポーツ。疲れはないですか−
三浦「うーん、ときどきは1日でいいからのんびりしたいなあと思うこともありますが、でもどっちかというと、ぼくは馬の上にいるほうがなんとなく落ちつくんですよね。月曜日に買い物とかに出ていてもそわそわするというか(苦笑)」
川島「ぼくは競馬の乗り鞍が少ないんで、まだまだですよ。逆にもっと仕事を増やしたいくらいです」

−2009年の目標は−
川島「今年は他の厩舎の馬にももっと乗れるように努力して、1年目よりいい成績を目指したいです」
三浦「減量がなくなりますから、先輩騎手と同じ立場で戦っていかなければならない。そういう意味では勝ち鞍の数というより自分の競馬を磨きたい。自分にとっていい形で競馬を進めていけるように。そして周りのみなさんとの関係も、もっと深く、広くなっていけるようにと思っています」

−そして、10年後の自分はどうなっていると想像するでしょうか−
三浦「1年目より2年目、2年目より3年目と成績や騎乗技術だけではなく、人間としても成長してカッコよくなっていたいなと。ぼくはカッコいい職業だと思って騎手になったので、小さい子が「三浦騎手カッコいいな」と思って騎手をめざしてもらえるような、そんな騎手になれていればと思います」
川島「ぼくはあまり想像できないですが、周りの人に信頼されている騎手になれていればいいですね。ぼくの兄弟子(佐藤裕太騎手)のように厚い信頼を受けられるようになって、任された馬で結果を出していける人になりたいです。新人賞はいただけましたが、これから先のほうが大切ですから」

 新たな年がはじまって、さらにステップアップを続けていく2人。今回の日本プロスポーツ大賞授賞式では、プロゴルファーの石川遼選手などそうそうたる面々と同じ壇上にあがったことで、さらに自信がついたはず。中央競馬と地方競馬、その舞台は違いますが、ともに2年目のジンクスという言葉を吹き飛ばすくらいの大活躍を期待したいところです。

対談後、聞き手の浅野さんを交えて記念撮影

(2008年12月25日 東京都内ホテルにて取材)


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