2002年から7月開催に固定され、夏のマイル女王決定戦として定着したスパーキングレディーカップJpnⅢ。時期的に道悪は多くなるが、今年も水の浮く不良馬場での開催となった。
人気の中心となったのはJRAのファッショニスタ。昨年のこのレースの勝ち馬で、前走のオープン(リステッド)で牡馬を相手に3着。デビューから20戦して掲示板を外したのは1度だけという安定感も買われ、単勝1番人気に支持された。続く2番人気は前走でJRA3勝クラスを勝利し、勢いに乗るメイクハッピー。差のないオッズで、大井のサルサディオーネが3番人気に推された。
大方の予想通り、サルサディオーネが押しながら逃げ、ファッショニスタが2番手でがっちりマーク。外の3番手にメイクハッピーがつけ、上位人気馬が先団を形成した。4番人気のメモリーコウも向正面で早めに仕掛けると、4頭が横並びの状態で直線へ。実力馬がしのぎを削る好レースになったが、その争いから抜け出したのはファッショニスタ。ゴール手前で力強く脚を伸ばすと、3/4馬身差で連覇を飾った。
鍵となったのはスタートだった。ファッショニスタは最内枠からダッシュを利かせると、先頭をうかがう格好を見せ、予想以上にサルサディオーネに抵抗した。結果的に2番手に控えたが、なにがなんでも逃げたいサルサディオーネは、外枠もあってだいぶ脚を使わされた。この攻防がゴール前での脚いろの差に表れた印象。鞍上・川田将雅騎手の手腕が冴えわたった瞬間だった。
また、川田騎手が「きょうは走る気になってくれました」と話せば、安田隆行調教師も「ファッショニスタも川崎が好きだと言っていました」と冗談交じりにコメント。重賞2勝がともにこの一戦であることも考えれば、川崎のマイルという舞台が合っていることは確か。さまざまな要素がかみ合い、1年ぶりの重賞制覇につながったといえる。
2着はメイクハッピー。全日本2歳優駿JpnⅠ(4着)以来となるダートグレードへの参戦だったが、当時よりひと回り大きくなった姿を披露した。「コーナーがきつかったけど頑張ってくれました。今後重賞を勝てると思います」とクリストフ・ルメール騎手。先団で立ち回れるセンスの良さは、地方の競馬場向き。今後もダートグレード路線を沸かせてくれる存在となりそうだ。
昨年はJRA所属として2着したサルサディオーネが、今年は大井所属として3着。着順こそ下がったが、しぶとく粘った内容は昨年のそれを上回った。矢野貴之騎手は「船橋と違い、若干リズムが悪かったですが、よく粘ってくれました。展開次第でチャンスはあると思います」と納得した様子。今回ばかりは川田騎手にうまく乗られたが、逃げることさえできれば多少のハイペースも我慢できる。今後もまさしく「展開次第」だろう。
レースごとに勝ち馬が変わっている昨今の牝馬ダートグレード。昨秋は人気に推されながら取りこぼしが続いたファッショニスタだったが、ここできっちり仕切り直した。今秋こそ、牝馬路線はこの馬を中心に回っていくに違いない。
Comment
川田将雅 騎手
ハナを主張する馬がいたので2番手に控えたのですが、リズム良く追走でき、問題なく競馬を進めることができました。走る気を出してくれて、しっかりと走り切ったぶん、最後に少し前に出ることができました。今後も気持ちひとつでしょう。走る気になってくれているときは、いい走りをしてくれます。
安田隆行 調教師
暖かくなると活気が出てきて、走れる状態になってきます。今回も雰囲気はだいぶ良くなっていました。3コーナーで外からかぶせられてきたときにはヒヤッとしましたが、川田騎手の豪腕で勝つことができて良かったです。今後は夏にひと息入れて、秋から使っていくことになると思います。