例年、このレースは難解なメンバーとなることが多い。もともとキャリアが浅い3歳馬同士で、牝馬限定戦ということもあってローテーションもバラバラ。ダートグレードで主役を演じることが多いJRA勢であっても、タイトなコーナーを6度回る川崎2100メートルが舞台となれば、慣れの部分で地方勢との差も詰まってくる。加えて、地元の南関東勢に有力馬が存在する場合には、より混戦に拍車がかかる。
今年もそれが浮き彫りとなり、UAEオークスGⅢで3着に入ったセランが単勝1番人気に推されるも、オッズは3.3倍。以下、伏竜ステークス5着から臨むレーヌブランシュが3.9倍、初ダートながら、これまで芝で安定した走りを見せるクリスティが4.5倍、南関東牝馬三冠に挑むアクアリーブル(船橋)も4.9倍と、差のないオッズとなった。
先手を奪ったのは7番人気のアールクインダム(JRA)だったが、これを見るかたちで上位人気の4頭が先団を形成。互いの出方をうかがいながらピッチを上げて勝負どころを迎えると、最後の直線でアクアリーブルが先頭に並び掛ける。しかし、直後から抜群の手ごたえで強襲したのがレーヌブランシュ。しまいまで確かな脚いろを見せると、食い下がるアクアリーブルに1馬身半差をつけて重賞初制覇を飾った。
これが勢いと相性なのだろう。レーヌブランシュ鞍上の松山弘平騎手は、今年に入ってから牝馬のサウンドキアラで重賞3勝を挙げているほか、デアリングタクトとのコンビでJRAの牝馬二冠を達成。今回の勝利と合わせ“オークス男”ともいえる活躍を見せている。「小回りだし、少しズブいところもあるから」と、積極的に前々で立ち回った判断も功を奏した印象。30歳を迎えて、持ち前の手腕にさらに磨きが掛かっている。
アクアリーブルも地元牝馬二冠の意地を見せた。最後は勝ち馬の切れに屈したものの、絶好の2番手から早めに仕掛け、3着のクリスティには4馬身差をつけた。「スタートが良く、いい位置を取れたのが結果につながった。南関東ではトップクラスの牝馬だと思うし、この先が楽しみ」と矢野貴之騎手。今回の2着でグランダム・ジャパン(GDJ)3歳シーズンの総合優勝も決定。地方が生んだ名牝アスカリーブルの仔が、地方競馬の勲章を手にした。
一方、1番人気に推されたセランは5着に敗れた。道中は外を回らされるロスもあったが、武豊騎手は「乾いた深いダートは合わなかったかな」と、馬場に敗因を求めた。ただ、まだキャリアも浅いだけに、馬場に慣れれば走りも違ってくるはずだ。
海外帰り、初ダート、南関東二冠馬と見どころ十分だった今回の一戦だったが、終わってみればJRA牡馬オープンと互角の走りを見せていたレーヌブランシュの貫録勝ち。日程次第の面はあるが、昨年の勝ち馬ラインカリーナも伏竜ステークスで3着だったように、来年以降もこのレースが関東オークスJpnⅡを紐解く鍵になりそうだ。
Comment
松山弘平 騎手
これまで2勝させていただきましたが、最後までいい脚を使える馬だなと思っていました。少しズブいようなところがある馬なので、きょうは小回りですし、ある程度前の位置につけたいなと思って、積極的に行きました。それにしっかりと馬も応えてくれて、最後までいい脚を使ってくれました。
橋口慎介 調教師
コースの傾向からも、なるべく前で競馬をしたほうが有利だと思ったので、そうした競馬ができればいいなとジョッキーと話していました。勝負どころでの手ごたえも良かったですし、抜け出してからの脚も速かったので、その時点で勝利を確信できました。今後もダート路線を使っていきたいと思います。