実況席の温度計はこの日、メインレースを前に29度を示した。4月7日からオーストラリア産の白い砂に入れ替えられた園田競馬場は強い照り返しの中、グランダム・ジャパン(GDJ)3歳シーズン第7戦・のじぎく賞が行われた。
遠征馬は北海道1頭、大井2頭、船橋1頭、愛知1頭の計5頭で12頭立て。その中で圧倒的1番人気に支持されたのは重賞4連勝中の地元馬・ステラモナークだった。逃げて速いラップを刻みながらも2着には5馬身以上の差をつけての連勝街道とあって、単勝1.3倍というオッズにファンの期待が込められた。2番人気はラブミーチャン記念の覇者で、桜花賞(浦和)2着のテーオーブルベリー(大井)が4.9倍、4連勝で重賞に駒を進めたユウキラフェールが9.7倍と続いた。
ステラモナークが逃げると、とにかく強い――。この認識は多くのライバル陣営に共通してあった。キクノウィングの田中一巧調教師はライバルを意識しつつ、「スタートを決められれば逃げたいです。この馬自身にとってもその形がベスト」と戦前にプランを練った。
ゲートが開いて内枠から押して行ったのはそのキクノウィング。しかし、ステラモナークの方がダッシュが良く、外からすんなり先手を奪った。キクノウィングは3番手インに収まり、その外にジェネラルエリア(愛知)、2番人気テーオーブルベリーはスタートダッシュがつかず中団やや後ろからとなった。
ステラモナークが逃げてしまえば馬体を併せてプレッシャーをかける馬もいなかった。いつもならこのまま一人旅。勝負所から後続を突き放しにかかり、4コーナーではある程度のリードを確保するが、この日は違った。3コーナー過ぎでジェネラルエリアの加藤聡一騎手が「後ろの馬は気にせず、逃げ馬を目標に食らいついていきました」と並びかけ、直線では叩き合い。ゴールまで100メートルを切り、ジェネラルエリアが僅かに前に出たかどうかというところで、ラチ沿いから外に切り替えたテーオーブルベリーが一気に差し切った。1馬身3/4差の2着には単勝ブービー人気で、後方2番手から追い込んだキクノナナ、ハナ差でバブルガムダンサー(船橋)だった。
ステラモナークはさらにそこからハナ+1馬身1/4差の5着。下原理騎手は「スタートで内からちょっと来られたせいか、いつも以上にハミを噛んでいました。3コーナーで迫られた時点で怪しくなりました」とのこと。菊水賞で1700メートルを勝ってはいるものの、本質的には「少し長いかも」と敗因を振り返った。
勝ったテーオーブルベリーはラブミーチャン記念を制覇した時と同じ川原正一騎手とのコンビ。2歳時にリリーカップで馬群の中団からレースを進めるも、道中は頭を上げるなどの仕草を見せ、12着に惨敗したことがあった。実際、川原騎手も「臆病なので、あまり揉まれない方がいいなと思っていたんですけど、予想より位置取りが後ろになって『どうかな?』と思っていました」と半信半疑だったが、克服しての勝利でレースの幅が大きく広がった。
この結果GDJは、テーオーブルベリーが21ポイントで暫定トップに躍り出た。2位タイは今回参戦のなかったアクアリーブルとボンボンショコラで17ポイント。4位には16ポイントでキクノナナが浮上したが、関東オークスJpnⅡ翌日の6月11日兵庫ダービーも視野に入れている。
GDJは残すところあと1戦。関東オークスJpnⅡは6月10日、川崎競馬場で行われる。
Comment
川原正一 騎手
行けたら前に行こうと考えていましたが、速い馬が周りに多かったです。道中はフワフワしていましたが、内枠で却って揉まれずに運べました。最後にたまたまいい所が開いて、「これなら差し切れる」と直線半ばで思いました。重賞初制覇の時よりもずいぶん成長して、体も立派になっています。
中道啓二 調教師
前走は思わぬ惨敗でしたが、思いのほか疲れもなく、巻き返しをしようと参戦しました。これまで揉まれたことがなく、道中は正直ダメかなと思いました。直線で突き抜けた時はちょっと驚きました。今日の勝利は収穫が大きく、今後にとってもいい経験になりました。次走は状態を見てオーナーと相談します。