南関東クラシック戦線がいよいよ開幕となった浦和競馬場はちょうど桜が満開。しかし牝馬一冠目の桜花賞は無観客開催となって寂しさも募ったが、今は何より無事行われたことに感謝したい。
今年の桜花賞は圧倒的な強さを見せてきた5戦全勝のレイチェルウーズが主役と思われ、単勝1.3倍の断然人気。
レースはボンボンショコラが先頭で進めていくと、テーオーブルベリー、ルイドフィーネ、アクアリーブルと続いていき、レイチェルウーズは内の5番手を追走。
しかし、競馬は何が起こるかわからない。3コーナー手前の勝負どころからレイチェルウーズの本田正重騎手が手を激しく動かしても、前との差が詰められない……。「返し馬では体調もよさそうで位置取りも問題はなかったですが、ペースが上がる時についていけませんでした」(本田騎手)
最後の直線に入ると、勝負は前にいた4頭に絞られた。粘るボンボンショコラをテーオーブルベリーが交わすと、その外からアクアリーブルが力でねじ伏せるかたちで抜き去っての勝利。テーオーブルベリーは3/4馬身差で2着。2馬身半差3着にルイドフィーネ。レイチェルウーズは5着に終わった。
「スタートは出す気で行ってペースも落ちつたいので、余計ムキになった感じもありましたが、(1周目の)ゴール板あたりでは折り合ってくれました。追い切りでは先頭に立つとフワフワするところもあったので、ゆっくり行ってギリギリまで待って仕掛けました。着差以上の強さでした」と、アクアリーブルに騎乗した岩手から期間限定騎乗中の山本聡哉騎手。
第66代目の桜花賞馬に輝いたアクアリーブルは、母が兵庫と南関東で大活躍した名牝アスカリーブルで、その初仔。初産でも面倒はよく見ていたいい母親だったいう。しかし、離乳前にこの世を去り、その後のアクアリーブルはサラブレッドの乳母に育てられたというエピソードを、生まれ故郷の新生ファームさんにうかがった。
アスカリーブルが残した、たった1頭の産駒が桜花賞馬に! 母は東京プリンセス賞と関東オークスJpnⅡの二冠を制しており、母仔での牝馬三冠達成となった。
「アクアリーブルは馬体もしっかりしているし、脚元も丈夫で、牝馬のわりにカイバ食いもいいので仕上げに関してはそんなに心配はしていません。担当厩務員(高橋厩務員は南関東牝馬三冠を制したチャームアスリープも担当)も頑張ってくれています。牝馬にしてはズブいところがあるので、あんまりイレ込まないしどっしりしている印象。(手掛けてきた重賞ウイナーの)先輩たちに負けないくらいの力はあると思います」と佐藤賢二調教師。この後は二冠目の東京プリンセス賞に進んでいくことになる。
一方で、ここまで無敗だったレイチェルウーズは初めての敗戦。競馬を見続ける喜び、競馬の難しさ。様々な感情が渦巻いた桜花賞だった。
Comment
山本聡哉 騎手
調教では臆病なところもありますが、競馬にいけばパドックや退避所でも落ち着いていて、どんな競馬でもできるので安心して乗ることができる馬です。前走を使ってからの調教の感じも、パンとして馬はよくなっていました。岩手のみんなは喜んでくれましたかね? みちのくからの応援も後押しになりました。
佐藤賢二 調教師
前回は立ち遅れたので山本君にはそこは伝えて、あとは、レイチェルウーズが相手になるからマークするようにと。早めに動かずジッと我慢した分ゴール前で伸びたので、うまく乗ってくれました。ここに向けてかなりビシッと仕上げて、それでも馬体が増えていたので、絶好調だったと思います。