全国の競馬場で新型コロナウイルスによる感染拡大防止のため無観客開催が実施されており、岩手競馬でも冬季休催期間が終わった3月20日の水沢からは一般入場者ゼロ。厩舎や競馬場内での取材にも規制がかかった。それでも競馬開催自体は大きく滞ることなく実施され、今季初の交流競走となる留守杯日高賞には他地区から多数のエントリー。回避馬は出たが、最終的には4頭が出馬表に名を連ねた。
遠征4頭の鞍上には2週前の時点で岩手所属騎手の騎乗が決まり、遠征騎手がいないことは残念であったが、南関東の期間限定騎乗中に、浦和の桜花賞をアクアリーブルで優勝した山本聡哉騎手が、その時4着のボンボンショコラに騎乗。ミステリーベルンは鈴木義久調教師が関本淳騎手に騎乗を依頼。この馬は北海道の小国博行厩舎デビューであり、三者がいずれも元は上山競馬場の騎手出身という興味深い組合せも実現した。
グランダム・ジャパン(GDJ)3歳シーズンは中盤に入ったばかりでまだ暫定順位が重要な段階ではないが、今回の遠征馬4頭のうち3頭は、すでに対象レースで入着しており、ここでポイントを積み重ねたいところ。浦和の桜花賞4着のボンボンショコラが単勝1.4倍、50%を超える支持を集めた。
JRAデビューからの4戦すべてで逃げているボンボンショコラは、外枠が不利な水沢1600メートルのスタートからでも問題なくハナを奪いきる。それでなくともこの日は逃げ馬が有利にレースを展開しており、前半3ハロン37秒3のペースは、浦和の桜花賞で逃げている馬にとっては厳しいというほどではなく、山本聡哉騎手が「あまり気持ちよく行かせないように気をつけた」ほど。それでも前半積極的に追走した地元あやめ賞勝ちのアンズビジンや、早めに追い上げを開始したミステリーベルンが最後の直線で一杯一杯になったように、ボンボンショコラのスピードが一枚以上抜けていたといえよう。
唯一食い下がったのはレッドカードで勝ち馬から2馬身差、そこから3着以降は大差がついて、キクノナナ、ミステリーベルンと入線。地元最先着はマルケイマーヴェルの5着だった。
水沢競馬場は昨年の秋に馬場改修が行われたあと時計のかかる馬場状態となっているが、極端に軽い馬場だった昨年の留守杯日高賞は別として、その前3年の勝ち時計を大きく上回った。また山本聡哉騎手は、桜花賞のアクアリーブルに続き、GDJ3歳シーズン2勝目となった。
まだGDJ3歳シーズンを2走している馬が少ない状況ながら、ボンボンショコラはひとまず暫定1位に浮上。ミステリーベルン、キクノナナも順位を上げ、シーズン初出走だった2着のレッドカードは鈴木祐騎手が「距離が延びた方が戦いやすいと思います」と今後への可能性を語った。
全く取材のできない状況であり、次走以降の動向を探ることはできなかったが、残された3レースの距離を考えると、まだ優勝争いの構図は見えてこない。それゆえ終盤戦は、登録馬発表の段階から興味深いものになったといえるだろう。
この日の留守杯日高賞は静かな水沢競馬場でレースが行われたが、せめて優勝馬決定の瞬間は多くのファンに見届けてもらえることを望みたい。
Comment
山本聡哉 騎手
南関東でハナを切れるだけのスピードがある馬なので、ここでは速かったです。初コースですし、浦和の同じレースで(別の馬に)乗っていて終いが甘い印象があったので、あまり気持ちよく行かせないように気をつけました。気性は真面目なので、安心して乗っていられました。