今年のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)のトライアルラウンドは、川崎競馬場が最後の舞台。出場したのは地方所属が9名で、JRA所属が7名。地方所属のうち4名は1鞍のみの騎乗となる。それでも出場騎手は全員、ファイナルラウンド出場への可能性を残している状況だ。
となれば、各騎手は少しでも上の着順を狙いたいところ。1500メートルで行われた第1戦は、C3級の選定馬という条件で、単勝10倍以下が5頭、10倍台が4頭というオッズになった。
人気が示すとおり、予想するのが難しい一戦。ゲートが開くと、前走で先手を取っていた馬に騎乗した大塚海渡騎手(JRA)と武藤雅騎手(JRA)がレースを引っ張るかたちになった。続く3番手には1番人気の中越琉世騎手(川崎)。1コーナーに入ったところで、隊列はすでに縦長になっていた。
向正面では13番人気の岩本怜騎手(岩手)が仕掛けて上昇。4番手を進んだ藤田凌騎手(大井)はインコースをキープしたままコーナーを回った。また、後方からの競馬になった小野楓馬騎手(北海道)と菅原明良騎手(JRA)は、3コーナー手前で手の動きを強めていった。
しかしこのクラスでは前に行った馬のアドバンテージは大きかったようで、4コーナーでは、逃げる大塚騎手が、2番手の中越騎手におよそ1馬身の差をつけて、そこから3番手までの差は4馬身ほど。勝負の行方は前の2頭に絞られたが、大塚騎手が最後まで先頭を守り抜き、このシリーズでの初勝利を挙げた。
レース後、笑顔でインタビューに答える大塚騎手の横で、アタマ差の2着に敗れた中越騎手は「僕の力が足りなかったです。久しぶりにくやしい」と意気消沈。それでも第2戦で善戦以上ならファイナル進出への可能性が高くなると伝えられると、その様子が一転した。
しかし3着に入った藤田凌騎手は第1戦が最後の騎乗だったため、ファイナルへの道が消滅。武藤騎手と藤田菜七子騎手(JRA)は第2戦を残していたが、同様に可能性がなくなった。
それでも多くの騎手にはチャンスがある第2戦。C2級の選定馬という条件で行われる1600メートル戦は、1番人気から5番人気までが4倍台から6倍台という、上位拮抗のオッズになった。
大木天翔騎手(大井)とメンバー中唯一前走で逃げていた馬の手綱を取った菅原騎手が並ぶかたちで先手を取り、その後ろも2頭併走で、櫻井光輔騎手(川崎)と武藤騎手。その後方は一団に近いかたちで向正面へと入っていった。
そこでペースが少し落ちたとき、櫻井騎手が動いた。3コーナーで先頭を併走する2頭の外に並び、4コーナーで先頭に立ち押し切って勝利。「今日の馬場なら後ろからは届かないと思って」という地元川崎所属ならではの判断が光った。
2着は後方から差を詰めた横山武史騎手(JRA)。しかし20ポイントを加えてもファイナルには手が届かなかった。3着の木幡育也騎手(JRA)も勝てばファイナルに進出できたのだが「早めに動こうとは思っていたのですが」と残念そうだった。
一方、山田敬士騎手(JRA)は4着に入ったことでファイナル進出が確定。「レースの内容にはくやしさがありますが、ファイナルに行けてよかったです。ここを突破することが目標でしたから」とうれしそう。菅原騎手は7着だったが、4位横山騎手とは1ポイント差でJRAの東日本で3位。検量室の中で同じ千葉県出身の岩本騎手と握手して、ファイナル進出の喜びを分かち合っていた。
その岩本騎手は、川崎では2戦とも二桁着順。レース直後は「2回とも見せ場は作れましたが……」とうつむき加減だったが、TR盛岡でのリードを守り切ったと伝え聞くと「本当ですか!?」と一気に表情が明るくなった。岩本騎手はすでに減量騎手を卒業しており、YJSに出場するのは今年が最後。昨年はあと一歩でファイナルラウンドの舞台を逃しただけに、かねてからの願いが叶うことになった。
第2戦を制した櫻井騎手は、岩本騎手と同じく合計52ポイントを獲得。これでファイナルラウンド連覇への扉が開いた。そして12番人気馬で6着に入った中越騎手が東日本3位でファイナルへの切符を獲得。仮に7着だったら藤本現暉騎手(大井)のものになっていただけに、中越騎手はその幸運に飛び跳ねて喜んでいた。
一方、TR門別で勝利を挙げていた小野騎手は2戦とも二桁着順。「川崎の流れに乗れなかった感じがありますね」と第1戦のあと話していた。今年のトライアルラウンドは終了したが、まだまだ戦いは続いていく。
Comment
第1戦1着 大塚海渡騎手(JRA)
考えていたよりも馬がスムーズにゲートを出てくれたので、先手を取りにいきました。最後の直線では外から並ばれそうになって、ちょっと焦る感じになりましたが、そこからは馬に頑張ってくれとお願いする感じでしたね(笑)。馬も相手に前に出られることなく、最後まで頑張ってくれました。
第2戦1着 櫻井光輔騎手(川崎)
いい位置を取れましたし、1コーナーでも僕の後ろの馬が近づいてこない感じがありましたので、向正面ではいつでも動けるという気持ちで行けて、早めに強気に動いていきました。昨年の優勝者として、ファイナルラウンドでは昨年よりも多いポイントの獲得を目指して頑張りたいと思います。