名古屋競馬場で行われたトライアルラウンドには、地方から5名、JRAから5名が出場。地方所属のうち4名は今年デビューの新人で、JRA所属のうち3名はファイナルラウンドに進んだ経験があるというメンバーで実施された。
第7レース後の出場騎手紹介式ではそれぞれに意気込みを話したが、地方騎手は全員、名古屋競馬場が初めて。それでも木村直輝騎手(高知)以外の4名は同期で、さらに高知所属が4名もいたこともあって、それほど気後れしているようには見えなかった。
1400メートルで行われた第1戦は、服部寿希騎手(JRA)と坂井瑠星騎手(JRA)、多田羅誠也騎手(高知)が三つ巴の人気。ゲートが開くと最内枠からスタートした坂井騎手が先手を取り、すぐに内ラチから少し離れたところに動いて「服部騎手を閉じ込める」(坂井騎手)作戦に出た。そのほかの騎手にも少しでも前へという意識があったようで、前半600メートルが37秒9というやや速めの流れながら、先行グループは4頭がほぼ一団。多田羅騎手はそこから少し離れた5番手を追走していった。
向正面に入って隊列が縦長になったが、先行争いは前半と変わらず、逃げる坂井騎手を妹尾将充騎手(高知)と濱尚美騎手(高知)が追いかける展開。そこにインコースから上昇した服部騎手が加わって、最後の直線に入ったところで先頭に立った。
4コーナーできれいに進路が開いた服部騎手の手綱は動かず、坂井騎手のアクションは大きいという様子では、そこで勝負ありというのが一目瞭然。服部騎手が余裕十分で勝利を飾り、坂井騎手が2着。そのあとの争いは混戦になり、インコースから追い上げてきた西村淳也騎手(JRA)が3着に入った。
レース後にパトロールビデオを確認して、坂井騎手は「そこ(4コーナー)でインが開いたんだ」と苦笑い。また9着だった兼子千央騎手(金沢)は普段はインコースを開けている金沢競馬場の所属。「内ラチ沿いの競馬は……」と苦笑いしていた。
人気の一角だった多田羅騎手は、最後まで外を回って4着。「3コーナーで内を突くほうがよかったかも」と反省していた。
間にひとつレースをはさんだ第2戦ではその経験をいかしたいところだが、積極的にレースに向けての情報収集に努めていたのはJRAの騎手たち。新人の齋藤新騎手は、「第2戦は成績的に厳しい馬ですが、前走より速い時計でゴールすることを目標にします」と宣言してパドックに向かった。
その第2戦は、唯一、前3走で3着以内があった馬に騎乗する濱騎手が単勝2.0倍と抜けた人気。ただ、逃げられればしぶといものの、スタートが不安定という面があった。その不安は的中し、「タイミングが合いませんでした」(濱騎手)と、ゲートが開いた瞬間に伸び上がるようなかたち。それでもすぐに加速がついたが、外から気合をつけて先手を主張した西村騎手、服部騎手の後塵を拝することになってしまった。
濱騎手はその直後の3番手につけたものの、坂井騎手が並びかけ、さらに多田羅騎手、木村騎手、妹尾騎手も接近してきたことで、向正面の中央あたりで苦しくなって失速。一方の先行争いは、逃げる西村騎手と2番手に上がった坂井騎手の一騎打ちという様相になった。しかし西村騎手の手応えには余裕があり、坂井騎手は第1戦と同様に大きなアクション。そのまま西村騎手が逃げ切って、坂井騎手が2着を確保。3着にはインコースから上昇してきた木村騎手が入った。
後検量が終わったところで、JRAの各騎手はポイントをチェック。3着と1着でJRA西日本地区で暫定2位につけた西村騎手、2着2回で同3位に上がった坂井騎手は「最終戦(TR園田)次第ですが、たぶんファイナルに行けるでしょう」と笑顔で競馬場を後にした。暫定4位の服部騎手は最終戦の結果次第となる。
逆に地方の5名はファイナル進出が厳しい状況になってしまった。わずかに、第2戦で3着に入った木村騎手が現時点で地方西日本地区4位。「千葉県出身ですし、ファイナルに行きたいですよ」という希望が現実になるためには、西日本最終戦の園田で5位以下の騎手のポイント数が伸びず、なおかつ地方西日本の1位が地方全体でも1位になる必要がある。「それなら(暫定1位の)松木さんを応援します」と笑ったが、その心中は穏やかなものではないだろう。
Comment
第1戦1着 服部寿希騎手(JRA)
スタートが速い馬が多くて、その後ろで我慢することに切り替えました。そのうち前が開くだろうと思っていましたし、実際にそうなりましたね。馬の実力も上でしたので、最後は余裕がありました。出身地の競馬場で勝ててうれしいですし、自分自身、名古屋競馬場にはいいイメージを持っています。
第2戦1着 西村淳也騎手(JRA)
スタートも決まりましたし、ペースも理想的でしたし、1コーナーで勝てると思いました。パドックでも勝てると話していたので、その通りになってよかったです。同期の服部君と同じ表彰台に立てたこともよかったですね。昨年のファイナルでは服部君が勝ったレースで3着だったので、今度は逆転したいです。