静内の北海道市場で行われているサマーセールの期間中だったこの日、セリから移動してきたと思われる関係者が場内で多く見られた。福原杏騎手(浦和)が所属する水野貴史調教師は「兄弟の弟子対決だよ」と。一瞬、意味がわからなかったが、なるほど武藤雅騎手(JRA)が所属するのは双子の兄弟である水野貴広調教師。また武藤騎手の父・武藤善則調教師の姿もあった。そうした関係者が、パドックなどでファンと一緒に見守っているのはいかにも門別競馬場という風景だった。
この日のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドは、第10、12レース。そこまで出場騎手の多くにエキストラ騎乗の機会が与えられていた。前日、金沢で重賞初制覇を果たした藤田凌騎手(大井)はその勢いのまま第1レースで勝利。第2レースでは地元の落合玄太騎手が勝ち、2着が福原騎手。第5レースで地元の小野楓馬騎手が勝ったあたりでは、YJS出場騎手の活躍が目立つなあ、と思って見ていたのだが……。なんと、小野騎手は第6、7、9レースも勝ち、騎乗機会4連勝で第1戦(1200メートル)を迎えた。
最内枠の横山武史騎手(JRA)が主張して単騎で逃げ、やや離れて菅原明良騎手(JRA)が続き、3番手はさらに離れた。
前は見るからにハイペース。3番手の内から直線で外に持ち出した木幡育也騎手(JRA)が前をとらえにかかり、連れて野中悠太郎騎手(JRA)も伸びてきた。さらにスタートでダッシュがつかなかった地元の山本咲希到騎手が大外から徐々に位置取りを上げてこの2頭に迫り、残り100メートルからは3頭の追い比べ。ゴール前でぐいっと伸びた野中騎手が勝利。半馬身差で山本騎手、クビ差3着に木幡騎手で、人気上位3頭での決着となった。
「前はペースが速かったので、差しが決まる展開で、直線はうしろから来る馬を気にしていました。最後は(3頭の)真ん中で併せ馬になったのでしぶとく頑張ってくれました」と勝った野中騎手。
2着の山本騎手は「スタートでロスはあったんですけど、4コーナーまでにかなりリカバリーできました。野中君の馬が抜け出して遊ぶようなところがあたんですけど、僕が迫ったらその分伸びていました。船橋の1戦(12着=1ポイント)はノーカウントで。どこかで1つ勝てるようにがんばります」と気持ちを切り替えていた。
ひとつレースを挟んでの第2戦は1800メートル。注目の小野騎手がじわじわと先頭に立つと、小林凌大騎手(JRA)が掛かり気味に競りかけ2頭が併走する形になって、向正面では3番手集団と6、7馬身ほども差が開いた。
ここもまた前はハイペースかに思われた。小林騎手は4コーナー手前で一杯になったものの、しかし小野騎手は余裕の手応えのまま直線を向いた。3番手集団のうしろから菅原騎手、落合騎手が馬体を併せて迫ったが、直線半ばで一杯になったのは、むしろその2頭。再び差を広げた小野騎手が逃げ切った。
そして4コーナーではまだ後方にいた藤田騎手、横山騎手が追い込んだものの、1馬身半、半馬身という差で2、3着だった。
「(1日5勝は)自分でも驚いているんですけど、うれしいです」という小野騎手は、父が牧場で働いているという、ここ日高の出身。応援に来ていた家族と一緒に1日5勝という快挙の口取りに収まった。
船橋、盛岡、門別とトライアルラウンドを終えた東日本は、地方・JRAとも全員が少なくとも2戦に騎乗。今回出場した地方騎手では、殊勲の小野騎手が東日本3位。すでに4戦に騎乗している臼井健太郎騎手(船橋)が同4位、藤田騎手が同5位につけた。JRA騎手では、盛岡で勝利を挙げた菅原明良騎手が、今回5着(と着外)のポイントを加算して引き続き東日本1位。船橋で勝利を挙げた小林騎手が同2位につけている。
今年は出場騎手が増えたぶん、ひとりひとりの騎乗数は昨年より減った。それゆえ東日本では、残す浦和、川崎ラウンドで下位から逆転という可能性も大いに考えられる。
Comment
第1戦1着 野中悠太郎騎手(JRA)
第1戦は、逃げた馬がハイペースだと思ったところ、理想的な位置がとれて、自分の馬のリズムを守りながら乗れたのはよかったと思います。5年目ということでこのシリーズに参戦できるのは今年で最後なので、今年に賭ける思いは他の人より強いですし、その中で結果を出せてよかったと思います。
第2戦1着 小野楓馬騎手(北海道)
(1日5勝は)勝てる馬に乗せてくれている関係者に感謝です。1戦目は馬の力を出し切れなかった(10着)のが反省点ですけど、2戦目は馬の力をしっかり出せたので、そこはよかったと思います。次の川崎は、この勢いのまま少しでも上の着順を目指して、ファイナルに残れるようにがんばります。