年末に行われるファイナルラウンド出場権をかけたヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドは今回の高知で3戦目。当日は高知競馬『夜さ恋ナイター』10周年を記念した夜さ恋フェスティバルも開かれ、カツオのタタキの振る舞いなどで場内は賑わった。高知競馬の起死回生をかけてスタートした夜さ恋ナイターはインターネット投票好調の追い風もあり、近年は毎年、前年比増の売上。それを象徴するかのように今年は3名の騎手が高知競馬からデビューした。
「同期の多田羅騎手とはよくレースの話をするのですが、勝ち星で置いていかれているので、がんばらないと!って思います」とは妹尾将充騎手(高知)。それに対し多田羅誠也騎手(高知)は「北海道の小野(楓馬)騎手がよく勝っていますよね」と他地区で活躍する同期の存在が気になる様子。世代が近い者同士ではライバル意識もより強くなるのかもしれない。そんな中、久しぶりの再会でレース前は和やかな雰囲気にもなるのがYJS。石堂響騎手(兵庫)と亀田温心騎手(JRA)は京都競馬場の乗馬スポーツ少年団で共に汗を流した仲。「知っている人がいれば、気持ちも楽になりますね」と亀田騎手は頬を緩めた。
なお、トライアルラウンド高知は当初、東川慎騎手(笠松)が出場予定だったが負傷休養中のため木本直騎手(兵庫)が1鞍、木村直輝騎手(高知)が1鞍から2鞍に変更。「落馬直後は落ち込んだ様子でしたが、今は『早く乗りたい』と話しています」と高知で期間限定騎乗中の父・東川公則騎手の話。まずは焦らずに怪我を治してほしい。
和やかな雰囲気もレースになると一変。真剣勝負の第1戦は好スタートから西村淳也騎手(JRA)が楽にハナを奪った。その外に「砂を被らない方がいいと聞いたので」と出ムチを入れて永井孝典騎手(兵庫)。内に石堂騎手が続いた。
4コーナーで逃げ馬の直後で脚を溜めていた石堂騎手が外に持ち出して追い上げるが、先頭との差は縮まりそうでなかなか縮まらず、半馬身差で西村騎手が勝利。石堂騎手は「以前乗っていた騎手から『乗りやすい馬』と聞いていたのですが、返し馬で掛かったので、状態がいいのかなと手応えを感じました。それでもまさか2着とは」とやや興奮した様子。
3着は11番人気の木本騎手が中団から追い上げた。「コースもレースの流れもいつもと違って、直線も内に入ってしまって大丈夫かな?と思いました」とのことだが、4コーナーをロスなく回ったことが4着岩田望来騎手(JRA)の追撃をハナ差凌ぐことになった。しかし、その岩田騎手も道中は最後方から4コーナーでは馬群を縫ってロスの少ないレース。5着は「向正面でズブさを出してしまいました…」と1番人気の加藤祥太騎手(JRA)だった。
続いて行われた第2戦は、単勝オッズ一桁台が6頭、最低人気でも39倍という大混戦。ダッシュよくスタートを決めた森裕太朗騎手(JRA)を交わして岩田騎手が先頭に立つと、さらに外から服部寿希騎手(JRA)が競りかけていった。向正面で一旦は服部騎手が3/4馬身ほど前に出てレースを引っ張ったが、3コーナー手前で脱落。一方で岩田騎手は後続とのリードを広げ、「直線で後ろを見たら誰もいませんでした」と6馬身差で完勝。金沢第1戦に続いて2勝目を挙げた。
2着は10番人気の石堂騎手。「悔しいです。ずっと内を通って不利なはずなのに、馬ががんばってくれました。勝ちたかったですが、ポイント戦なので2戦とも2着はよかったかなと思います」。ここまでシリーズ3戦に騎乗して2着3回の安定ぶりを発揮している。
3着は11番人気の木村騎手が「無理に行くより脚を溜めようと思いました」と中団から差して、粘る森騎手をアタマ差交わし、5着は永井騎手だった。
レースが終われば再び和やかな雰囲気になるものの、レースの悔しさをにじませる場面も。2戦とも9着だった濱尚美騎手(高知)は「もうダメダメでしたね……」と肩を落としたが、まだYJSは始まったばかり。次のトライアルラウンドは佐賀競馬場で7月30日に行われる。
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第1戦1着 西村淳也騎手(JRA)
返し馬から雰囲気がよく、勝てる力はあると思いました。スタートから楽に行けましたし、逃げ馬が走る場所で後ろも隊列が決まるので、返し馬で馬場の確認をして、どのあたりを走るかを考えました。道中はずっと手応えが良く、あとはあまり乗ったことがない高知コースでどこから追い出すかを考えていました。
第2戦1着 岩田望来騎手(JRA)
返し馬でハミをさらっていく場面があったのでじっくり返し馬をすると、ゲート裏で馬が落ち着いてくれました。それが一番の勝因だと思います。レースは競ってくる馬もいましたが、無理のない範囲で前に入られないようにしました。地方交流にたくさん乗せていただいているので、ここは譲れませんでした。