6月から始まったヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドも西日本地区は今回の園田がラスト。ファイナルラウンド進出をかけて最後のポイント加算の場とあり、各騎手は一段と気合を入れていた。
しかし、上位者と逆転を図る者では狙いはやや違うようだ。TR名古屋終了時点でJRA西日本トップの岩田望来騎手(JRA)と地方西日本トップの松木大地騎手(兵庫)はそれぞれ「トップ通過を目指します!」と宣言。一方、TR笠松でYJS初勝利を挙げて波に乗りたい田村直也騎手(兵庫)と三津谷隼人騎手(JRA)は地方西日本5位とJRA西日本7位。「ギリギリ4位に食い込めるようがんばりたいです」と、自身の健闘だけでなく、西日本トップ通過騎手が総合でもトップになった場合の4番目の枠に望みをかけたいようだった。
第1戦は好スタートを決めた齋藤新騎手(JRA)を先頭に隊列が決まりかけたところ、木本直騎手(兵庫)とウインガナッシュがハナを奪いに行った。「少しペースを落とせました」と言うが、後続の騎手たちは「流れていた」と感じるペース。ウインガナッシュを管理する栗林徹治調教師が「コーナーでいつもフワフワしてしまう馬」と心配そうに見守る中、3~4コーナーでは出水拓人騎手(佐賀)が並びかけて「一瞬、夢を見ました」(出水騎手)という手応えだったが、直線に入ると再び差を広げられた。さらに1番人気の團野大成騎手(JRA)が後方からロングスパートをかけるが「そのぶん最後はちょっと止まってしまいました」と、木本騎手が1馬身半差で振り切ってYJS初勝利。3着にはアタマ差で出水騎手が粘り、4着の三津谷騎手は「しまいのひと脚にかけましたが、前が止まりませんでした」と唇を噛み、5着は岩田騎手だった。
レース後、いの一番に「順位はどうなっていますか?」と聞いたのは第1戦で10着だった石堂響騎手(兵庫)。昨年は西日本4位でファイナル進出に望みをつないだが、最終的に願い叶わず悔しさを味わった。「もう4位はいりません。いま2位のようなので最終戦もがんばります」と確定ラインのトップ3を目指した。
なお、10月23日から所属厩舎変更に伴い勝負服デザインを新調した塚本雄大騎手(高知)、JRAルーキーの齋藤騎手、今年通算101勝を達成しYJS卒業となる加藤祥太騎手(JRA)の3名はこの時点でファイナル進出の望みは断たれたが、それでもレースでは全力勝負ということを第2戦で見せた。
その最たるポイントは2コーナー手前。逃げるフロムミートゥユーと松木騎手が「落とせるだけペースを落としました」と2番手以下が団子状態になっていたところ、後方2番手にいた加藤騎手が一気にマクって先頭に並びかけた。その様子を「僕にはまだその判断ができませんでした」と岩田騎手が悔しそうに見つめたように、経験値がなせる潔い騎乗でもあるのだろう。一方、マクられて嫌なのは逃げている松木騎手。それでもハナは譲らず、直線でじわじわと離して1馬身半差で勝って地方西日本トップ通過を決めた。「前走、不良馬場で走った影響が残っていたのですが、松木騎手がハナを主張してくれてよかったです」とフロムミートゥユーの土屋洋之調教師。2着は加藤騎手が粘り、4馬身離れた3着に岩田騎手、4着西村淳也騎手(JRA)、5着に木本騎手だった。
この結果を受けて、地方西日本は松木騎手、石堂騎手、木本騎手、長谷部駿弥騎手と兵庫勢が1~4位までを独占。「園田から多くの騎手がファイナルラウンドに行けることもよかったです」と、昨年はファイナル3位の松木騎手。11月19日TR川崎での岩本怜騎手の成績次第となるが、松木騎手が地方総合トップ通過となる公算が大きい。念願のファイナル進出を自らもぎ取った石堂騎手は「地元で結果を残せなかったことは悔しいですが、ファイナル進出は目標でした」と安堵の表情。そしてTR川崎の結果待ちとなる長谷部騎手は「もし行けたら、昨年のファイナルラウンドでの反省を生かして納得のいく騎乗をしたいです」とリベンジの時を待つ。
JRA西日本は岩田騎手と西村騎手が同得点。ポイント対象となる『上位の得点を得た4競走』の着順も同じではあるが、上位5つ目の着順によりトップは岩田騎手。「まだ予選なので、本戦でトップになれるよう頑張ります」と話し、西村騎手も「昨年はファイナルラウンドに進めましたが、全然ダメだったので今年は頑張ります」とすでに年末を見つめる。3位は坂井瑠星騎手で、4位服部寿希騎手はTR川崎の結果待ちとなった。
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第1戦1着 木本直騎手(兵庫)
最後なので2連勝するくらいの気持ちで悔いのない騎乗をしたいと思っていました。戦前から逃げるつもりではありませんでしたが、馬の状態が良かったのでそのまま押し切ってくれました。少しスローに落とすことができましたし、いい馬に乗せていただきました。
第2戦1着 松木大地騎手(兵庫)
第2戦でやることは「ハナを取りきって、焦らず」だけでした。思ったより早くに後ろから来られましたが、焦りませんでした。最後は脚が上がってしまいましたが馬が頑張ってくれました。昨年のようにギリギリでファイナル進出する方がいい成績を残せるかもしれないですが、最後に勝ててよかったです。