ヤングジョッキーズシリーズの東日本地区におけるトライアルラウンドは、船橋からスタート。地方から8名、JRAから7名が集まり、藤本現暉騎手(大井)、藤田凌騎手(大井)、仲原大生騎手(大井)、山本咲希到騎手(北海道)、野中悠太郎騎手(JRA)、武藤雅騎手(JRA)が1レースのみの騎乗。そのほかの騎手は2レースの騎乗で行われる。
「僕はいまのところ全部で5回乗れるので、1回は失敗できるんですよ」と笑ったのは臼井健太郎騎手(船橋)。昨年と同様、着順上位の4レースがポイントの加算対象になるというルールだ。だが、現在のスケジュールだと東日本地区の地方騎手のほとんどは、騎乗機会が4回。そのためか、一昨年の総合優勝者である臼井騎手は、いくぶん気持ちに余裕があるように見えた。
一方、初出場となるのが仲原騎手。「左回りの競馬場ではそれほど乗っていませんが、教養センターでは左回りのほうが乗りやすいという感覚がありました」とのこと。同じく初出場となる大塚海渡騎手(JRA)と小林凌大騎手(JRA)は、第1戦のパドックで笑顔を見せていた。
過去2年でもそうだったが、ほぼ全員が初めての馬にまたがる若手騎手同士の戦いは、スローペースになりがち。1600メートルで行われた第1戦は、単勝1.5倍の支持を集めた藤本騎手が好スタートから先手を取った。そして1コーナーあたりからペースを一気に落とすと、先頭で3頭が横に並ぶ展開になった。それでも向正面で上昇していく騎手はなし。藤本騎手はじっくりと脚を溜めて、4コーナーからスパート。最後の直線は独走になり、2着に7馬身差をつけて押し切った。
その内容に藤本騎手は「若手騎手戦だからスローペースにしてもいいかなと思って」と笑顔。2着に入った中越琉世騎手(川崎)は「ポイントは取れましたけれど、ちょっと乗りかたが上手ではなかったですね」と反省していた。その話しぶりには、昨年は届かなかったファイナルラウンドへの思いが垣間見えた。
3着に入ったのは吉井章騎手(大井)で「後ろからという指示でしたが、ペースが遅くて届きませんでした」とコメント。4着には臼井騎手、5着には仲原騎手が入り、地方騎手の上位独占となった。
続く第2戦は1800メートル。単勝10倍以下が5頭で、その鞍上はすべてJRA騎手。10倍台は1頭もおらず、20倍台に4頭という、偏りがある分布になった。
出走メンバーを見ると、近走で逃げて好成績を挙げていたのは木幡育也騎手(JRA)の騎乗馬のみ。しかし、その馬よりもスタートダッシュが速かったのが武藤騎手で、1コーナーあたりから後続を引き離していった。
ただ、実際のところは2番手を追走した大塚騎手が「馬が進んでくれなくて、後ろから誰かがくるのを待っていました」というかたち。それでも一時は2番手に10馬身近くあろうかという逃げは、4コーナーでも2番手以下にかなりの差をつけていた。
そのリードは直線残り200メートル付近でも6馬身ほど。しかし大塚騎手、木幡巧也騎手(JRA)、小林騎手が徐々に差を詰めて、残り100メートルからは木幡巧也騎手と小林騎手が猛然と追い込んできた。
最後まで武藤騎手は懸命に抵抗したが、ゴール地点では小林騎手がわずかに先着。アタマ差で木幡巧也騎手が2着に入り、武藤騎手はそこからハナ差での3着だった。
小林騎手は、これがデビュー以来の初勝利。4コーナーでは外に大きくふくらんだが、それも経験として刻まれたことだろう。2着の木幡巧也騎手は「武藤騎手の逃げがうまかったですね。2着だったのは(小林騎手よりも)先に動いた分かなあ」と、悔しそうな表情で話した。
3着の武藤騎手は「勝ったと思ったんですけど……」と小さい声で一言。続く4着には大塚騎手、5着には木幡育也騎手が入り、第2戦は第1戦と正反対に、JRA騎手の上位独占になった。
このあとの東日本地区は、8月に盛岡と門別でトライアルラウンドが行われる。第1戦が12着、第2戦が4着だった大塚騎手は「やっぱりカーブがきついですね」と、地方での初騎乗を振り返った。そのほかの騎手も、ここでの経験が次以降への糧になるはずだ。
Comment
第1戦1着 藤本現暉騎手(大井)
チャンスがある馬なので、逃げられたらと考えて臨みました。前走で乗っていた秋元騎手から走るのをやめようとするところがあると聞いていたので直線では気を抜かせないようにしましたが、最後までしっかりと伸びてくれました。今日は1鞍だけでしたが、幸先のいいスタートになりました。
第2戦1着 小林凌大騎手(JRA)
道中は先頭がどこにいるのか見えていなくて、それでも4コーナーで外を回して一所懸命に追ったらよく伸びてくれて、ゴールではちょっと前に出たかなと思いました。でも勝ったのかどうかわからなくて、戻ってきて結果を知ったときはうれしかったですね。両親が見ている前で勝てたこともうれしく思います。