グランダム・ジャパン3歳シーズンは、のじぎく賞が終了すると、最終戦の関東オークスJpnⅡを残すのみ。のじぎく賞を前にした時点でトップのポイント数を獲得していたのは、愛知のゴールドリング。同馬はのじぎく賞にエントリーしていたが、レース6日前の5月10日に出走を回避することが発表された。
これによって、若草賞と東海クイーンカップでゴールドリングの2着に敗れていたリリコにチャンスが巡ってきた。両馬のポイント差は8で、リリコがここで勝利を挙げればトップになる。
もう1頭、ゴールドリングの回避がプラス材料になったのが、逃げ切りで連勝中のアヴニールレーヴ。強力な同型が不在となったことで単騎逃げが可能になり、最終的にリリコに次ぐ単勝2番人気になったものの、締切前には1番人気になっている時間帯もあった。
しかしながら、のじぎく賞は地方全国交流競走。普段の地元馬同士、地元騎手同士のレースとは違う。それが現れたのがハナ争い。先手を取ったアヴニールレーヴに、大井のグレースレジーナが競りかけていったのだ。その流れは速く、1周目のホームストレッチでは、先頭から最後方まで20馬身はあろうかという縦長の展開になった。グレースレジーナの手綱を取る藤本現暉騎手は、デビュー5年目。この日が初めての園田競馬場だったが、このレースまでに一般戦で4回騎乗した経験をいかし、攻めていく騎乗を見せた。
そうなると目標にされたアヴニールレーヴは苦しくなり、3コーナーでグレースレジーナが代わって先頭に。追いかけるように4番手からリリコも上昇していった。それでも最後の直線ではグレースレジーナが押し切りそうな態勢。そこに襲いかかって逆転を果たしたのが、道中は中団よりもうしろにいたチャービルだった。
チャービルは7番人気。鞍上の中田貴士騎手は、高知での期間限定騎乗時に重賞を1勝しているが、兵庫では初のタイトル獲得となった。
「リリコを目標にしてゴール前で交わしたら、内にもう1頭いましたね」と、中田騎手は大喜び。検量室前では兵庫所属騎手のほとんど全員から祝福されていた。中田騎手はデビュー12年目の32歳。これまでの苦労を多くの人が知っているからこそ、地元での重賞初制覇を皆が喜んだのだろう。
その反面、初の重賞勝利が目前で消えたのが、グレースレジーナと藤本騎手。それでも「強気に乗った、その結果ですね」と、藤本騎手は納得している様子だった。3着のリリコは「今日の流れならもう少しうしろから行ったほうがよかったですね。堅実には走ってくれているんですが……」と、吉村智洋騎手。この結果、リリコの合計ポイントは16で、20ポイントのゴールドリングとの差は4になった。
一方、勝ったチャービルは10ポイントを獲得して、次の選択肢は兵庫ダービーまたは関東オークスJpnⅡになりそうだ。関東オークスJpnⅡには、地方馬内で3位以内に入った場合に加算される“エクストラポイント”がある。のじぎく賞を回避したゴールドリングを含めて、ポイント上位馬はどのような選択をするのだろうか。最終戦への戦いはすでに始まっている。
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中田貴士 騎手
本当はもう少し前につけたかったのですが、うしろからの競馬になってしまいました。でも1周目では先頭の馬がどこにいるのかわからないくらいでしたから、ペースが速いのではないかと思っていました。デビュー前、この馬でのじぎく賞に行きたいと思っていたんですよ。そのとおりになってよかったです。
野田忍 調教師
もともと素質はあったのですが、体が大きいので2歳のときは無理させないという方針にしていまして、春になってからようやくしっかりと乗り込めるようになってきました。でも、まだ後肢などにゆるいところがありますね。今回は前に引っ張ってもらえる展開になったのがよかったと思います。