早いものでグランダム・ジャパンも、10頭目の世代女王が誕生する。今年も3歳シーズンから始まり、全国各地で牝馬たちの熱戦が展開されていく。その幕開けが、地方全国交流で南関東牝馬クラシック一冠目の桜花賞。
今年はニューイヤーカップでヒカリオーソに完勝したトーセンガーネットが1番人気に推され、NARグランプリ2018で2歳最優秀牝馬を受賞したアークヴィグラスが2番人気、3番人気が快速牝馬ホウショウレイルと、この3頭が10倍以下の単勝オッズで上位人気を占めた。
浦和競馬場のマイル戦はスタート後すぐにコーナーに入るため、内枠が有利で外枠が不利と言われている。トーセンガーネットは2枠2番、アークヴィグラスが8枠10番と枠の差こそあったが、終わってみるとそれも払拭されるようなトーセンガーネットの強さが光った。
レースは、ホウショウレイルが逃げ、ユングフラウ賞の勝ち馬ポッドギルが2番手につけ、トーセンガーネットは3番手、アークヴィグラスは中団から。
トーセンガーネットは3~4コーナーの勝負どころでスーッと前に上がっていくと、最後の直線に入ったところでは、逃げ馬に並ぶ間もなく一瞬のうちに抜き去ると、あとは後続を突き放していった。直線の短い浦和コースにおいて、最後の直線だけで2着に7馬身も差つける圧勝劇。勝ちタイムの1600メートル1分40秒4(良)は、65回の桜花賞の歴史で2番目に速いタイム。
2着には5番手から脚を伸ばしてきたゼットパッション、3着にアークヴィグラスが入った。
トーセンガーネットに騎乗した左海誠二騎手はポーカーフェイスのイメージが強い騎手。しかしこの時ばかりはレース直後に大きなガッツポーズを見せ、満面の笑みで引き返してきたことでは、かなりの手応えを感じたのだろう。
「競馬が上手な馬です。力まないで走れるので、道中はフワフワしながらでも、ちょっとでも合図を出せばスーッと反応してくれます。直線はモニターを見るほどの余裕がなかったので、どれだけ離れているのかなとは思いましたが、結果的にはあんなに離れていて、『すげーな、こいつ』と思いました。ゴール過ぎにはすぐにスーッっと止まる感じで、無駄な力を使いませんね。息遣いも楽で余力がありました」(左海騎手)
どんな条件でもどんな状況においても高いレベルで安定して走り続けているのもこの馬の強さだ。牝馬ながら普段からどっしりと構え、長距離輸送や初コースなども難なくクリアし、自分の力をきちんと出し切れるタフな精神面も、この馬の武器だろう。牡馬路線に行っても面白いのではないかというのは、多くの人たちが感じたはずだ。
「オーナーとも相談をしますが、ここまでだいぶ頑張ってきたので、この後は無理させずに東京ダービー直行の可能性が高いです。今までお世話になってきた島川隆哉会長にダービーを勝つ姿を見せたいです」(小久保調教師)
関東も桜の季節になり、浦和競馬場の桜も咲き始めたところ。トーセンガーネットもこれからさらに大輪の花を咲かせていって欲しいと思う。そんな未来を描きたくなる、今年の桜花賞だった。
Comment
左海誠二 騎手
一度乗せていただいて力のある馬であることはわかっていましたが、兵庫ジュニアグランプリ(4着)の時は別の馬に乗っていたので、隣で見ながらすごい馬だなぁとは感じました。この馬のレースセンスというのは、あの時の経験も生きていると思います。距離は未知数ですが延びてもよさそうですね。
小久保智 調教師
2歳の頃に比べると、今回はだいぶゆったりと仕上げられたので、馬の元気もよくて、時計もつめているし、レース内容も満足のいくものでした。改めて仕上げやすい仔だなぁと思います。枠も幸いよかったので、出たなりで前目につけられて、あとは騎手の切り返しのタイミングだけだと思っていました。