3歳秋のチャンピオンシップ

 本シリーズは、各地の3歳主要重賞競走を戦った有力馬が11月に実施されるダービーグランプリへと集結し、地方競馬の3歳王者の座を争うもので、カテゴリーに応じてボーナス賞金(馬主)が設けられています。

 充実の秋、成長の秋、飛躍の秋など競走馬にとって大きな意味合いを持つ「3歳秋」を舞台に繰り広げられる熱戦にご期待ください。

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4コーナー先頭から押し切る
5連勝で地方3歳の頂点に

 今年新たに始まった『3歳秋のチャンピオンシップ』のファイナル、ダービーグランプリ。ボーナス獲得の可能性があるのは、地元岩手のキングジャガー(不来方賞)と、高知のフリビオン(西日本ダービー)。そのほかにも、岩手所属ながら北海道の二冠を制したベンテンコゾウをはじめ、そのベンテンコゾウの北海道三冠制覇を王冠賞で阻止したスーパーステション、MRO金賞を制した金沢のムーンファースト、盛岡の芝重賞を勝っているブラックロードにソーディスイズラヴなど、全国から充実のメンバーが揃った。
 岩手競馬は盛岡開催が終了すると一気に冬到来となるが、この日の水沢競馬場は朝から雪。昼頃に青空が広がる時間帯もあったが、その後も断続的な雪で、ダービーグランプリは雪景色でのスタートとなった。
 岩手二冠を含め重賞4連勝がいずれも逃げ切りだったキングジャガーがすんなりとハナを奪い、ベンテンコゾウ、スーパーステションと続いて隊列が決まると、スタンド前では流れが落ち着いた。
 動きがあったのは向正面の前半。スタートでダッシュがつかず後方4番手を追走していたフリビオンが一気に進出。西日本ダービーでは先行勢がペースアップした3コーナー手前で追走に苦労したため、ペースが上がる前に位置を取りにいったのだろう。3コーナー手前でキングジャガーが後退すると、フリビオンは3番手まで押し上げ、北海道のストーンリバーも続いた。
 3コーナーで先頭はベンテンコゾウだったが、すでに追い通し。抜群の手応えで並びかけてきたスーパーステションが4コーナー手前で先頭に立った。そして直線、懸命に追ってきたフリビオンがゴール前で差を詰めたが、スーパーステションがこれを1馬身差で振り切って勝利。4馬身離れて3着にストーンリバーが入り、ウニオミュスティカが地元最先着の4着。古馬相手の復帰戦を圧勝して好調が伝えられたベンテンコゾウは5着だった。
 1番人気にこたえて完勝となったスーパーステションは、これで王冠賞から5連勝。3歳時の成績を8戦7勝、2着1回とした。「デビュー2戦目の栄冠賞では、2着のヒガシウィルウィンにアタマ差で3着でしたが、その時点ではヒガシウィルウィンより能力は上だと思っていました。ただ、脚が外向していたり、骨が弱かったりで、万全の状態では使えませんでした」と角川秀樹調教師。それゆえ2歳時は重賞タイトルには手が届かず。3歳になっても万全の状態にはなく、最初の二冠には間に合わなかった。ようやく骨が固まり、順調に使えるようになったのが王冠賞だったという。スーパーステションはこのまま川崎に移動し、冬の間は佐々木仁厩舎に所属しての出走となるが、翌シーズンは再び北海道に戻る予定となっている。「道営でのメインは道営記念だと思うので、この馬にもその勲章を獲らせてあげたいと思います」と角川調教師。
 一方、3つめの“ダービー”のタイトルと、3歳秋のチャンピオンシップのボーナスに1馬身差で手が届かなかったのはフリビオン。「直線が短かった。早めに上がっていけたけど、内に刺さっていたのが残念」と悔しい表情を見せたのは西川敏弘騎手。それでも、今年8月に厩舎を開業したばかりの中西達也調教師は、「勝った馬はさすがに強かった。でも(フリビオンも)ここまでやれることがわかったので、遠征してよかった」と安堵の表情。高知に戻って、年末の高知県知事賞が目標となる。
阿部龍騎手
はじめての遠征だったり、普段から気性が難しいところがあるので不安でしたが、強い走りを見せてくれました。いつもどおりのスタートが切れて、手ごたえは終始よかったので、あとはどのタイミングで抜け出そうかということを考えていました。持ち前の気の強さに加えて、だんだん力強さも出てきています。
角川秀樹調教師
道営記念にするか、ここにするか迷ったのですが、ヒガシウィルウィンが出走しないことがわかった時点でここに絞りました。初めての輸送も問題なくクリアしてくれて、プラス体重だったので絶好調でレースに臨めたと思います。無理しないように使ってきているので、伸びしろはまだまだあると思います。


取材・文:斎藤修
写真:佐藤到(いちかんぽ)