3歳秋のチャンピオンシップ

 本シリーズは、各地の3歳主要重賞競走を戦った有力馬が11月に実施されるダービーグランプリへと集結し、地方競馬の3歳王者の座を争うもので、カテゴリーに応じてボーナス賞金(馬主)が設けられています。

 充実の秋、成長の秋、飛躍の秋など競走馬にとって大きな意味合いを持つ「3歳秋」を舞台に繰り広げられる熱戦にご期待ください。

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徹底マーク馬を突き放し4連勝
水沢で全国の強豪を迎え撃つ

 岩手競馬の3歳三冠は、6月の岩手ダービーダイヤモンドカップ、10月の不来方賞と11月のダービーグランプリだが、中でも49回目を迎える不来方賞が一番の伝統を誇り、3歳戦の最高峰と認識する地元の関係者は多い。
 今年は岩手ダービーダイヤモンドカップを勝ったキングジャガーと、北海道の三冠路線へ目を向け、北斗盃、北海優駿(ダービー)の二冠を制したベンテンコゾウによる、これまでに例のない「2頭のダービー馬対決」に注目が集まるはずだった。しかし、放牧休養から水沢へ戻ったベンテンコゾウに不安が発生して出走を回避。出走11頭中8頭までが岩手復帰も含めて夏以降の転入馬という珍しいメンバー構成となり、「キングジャガーvs.10頭」という構図になった。
 キングジャガーは「折り合いがつくので、番手からの競馬もできる」(板垣吉則調教師)タイプではあるが、今季4月からの4戦はすべて逃げての競馬。「楽な競馬にはならない」という覚悟は、調教師にも騎手にもあったようだが、キングジャガーを徹底マークに出たのは2番人気のワイルドソング。前半レースから速いタイムを連発する不良馬場で、ほとんど緩むことのないラップタイムを刻んでいく。さすがに最後の直線は「アゴが上がって苦しがったが、我慢してくれた」(板垣調教師)と、交わせそうで交わさせないのがキングジャガーの本領。ワイルドソングを最後の最後で突き放し、逆に1馬身半離してゴールへ逃げ込んだ。
 やまびこ賞からの4連勝はいずれも僅差。今回の0秒3差でさえ、この中では最も大きな着差となった。レースタイムは当初より速い時計になることが予想されたが、ここ2年2分10秒台だった数字を5秒以上上回って2分4秒6。1996年OROパーク開設以降の不来方賞(うち2回水沢開催)での最速タイムを記録した。
 この日で、全国で行われてきた「3歳秋のチャンピオンシップ」のステップレースが終了し、いよいよ11月19日の本番ダービーグランプリを残すのみとなった。ステップレースが整備されたことにより、これまで以上に全国の強豪が水沢へ参戦することが予想される。実は昨年でさえ他地区登録馬は出走枠を大きく上回っており、「12頭立て(水沢のフルゲート)ではもったいない」状況だったが、かなりのレベルの馬が除外対象となっていた。地元岩手勢には厳しい条件が突きつけられるが、レースの盛り上がりを考えれば当然歓迎されること。
 キングジャガーの板垣調教師は「全国から強豪が揃うので楽ではないと思いますが、それなりの仕上げで臨めるように」と、さらにキングジャガーをレベルアップしていく意気込み。何よりこの馬は「2歳の時から丈夫な馬だったが、いくらでも攻め馬をできる強みがあるし、なんのトラブルもない」という良さがある。筆者が調教タイムを採っていても、本当に思い通りに追い切りの本数を消化し、タイムを出しているということが実感される。そしてその成果はレースでキッチリと証明し続けている。例え、全国の強豪が集う舞台でもそれは同じだろう。
高橋悠里騎手
イーハトーブマイルのような楽な競馬はできないと思っていました。マークがきつく、息の入らない競馬で最後一杯でしたが、よく頑張ってくれました。持ち味は渋太さとスタミナ。今後は強い相手と戦うことになりますが、楽しみの方が大きいです。(回避した)ベンテンコゾウと戦ってみたかったですね。
板垣吉則調教師
楽に行かせてもらえないことは想定していました。最後苦しがっていましたが、我慢してくれましたね。ダービーのあとも調教メニューをしっかりこなしてくれたし、トラブルもない。次走はダービーグランプリも視野に、馬の状態と相談しながら考えますが、それなりの仕上げで臨めるようにと思います。


取材・文:深田桂一
写真:佐藤到(いちかんぽ)