3歳秋のチャンピオンシップ

 本シリーズは、各地の3歳主要重賞競走を戦った有力馬が11月に実施されるダービーグランプリへと集結し、地方競馬の3歳王者の座を争うもので、カテゴリーに応じてボーナス賞金(馬主)が設けられています。

 充実の秋、成長の秋、飛躍の秋など競走馬にとって大きな意味合いを持つ「3歳秋」を舞台に繰り広げられる熱戦にご期待ください。

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向正面先頭の積極策がズバリ
後続を寄せ付けず重賞初制覇

 地方競馬で今年新たに始まった『3歳秋のチャンピオンシップ』。この戸塚記念は“カテゴリーB”に分類され、優勝馬がダービーグランプリ(11月19日・水沢)も勝てば、馬主に500万円のボーナスが支給される。
 南関東所属の3歳牡馬にとって、戸塚記念は同世代同士で争われる最後の重賞レース。クラシックを戦ってきたブラウンレガートやカンムル、じっくり育てられてきた素質馬キングガンズラングなど好メンバーが集った。
 断然人気に支持されたのは、前走黒潮盃を圧勝したブラウンレガートだが、左海誠二騎手がコンビを組んだ4番人気、カンムルの完勝となった。
 レースは、サイバーエレキングが激しい先行争いを制すと、オリジナルポイント、キャプテンロビンが続き、中団前には、カンムルやキングガンズラング、人気のブランレガートが追走していった。
 「ちょっと内過ぎる(3枠3番)なとは思っていましたが、閉じ込められたくなかったので、いつでも動けるいいポジションを取ることができました。外を回してでも気持ちよく走らせたかったので」(左海騎手)
 向正面に入ったところで、カンムルは前を行くサイバーエレキングをスーッと抜き去り先頭に替わると、キングガンズラングなども位置取りを上げていった。
 「ペースは流れていましたが、小久保先生から『向正面に入ったら強気に乗れ』と言われていました。グッとハミを取ってくれた時の手応えで、これなら早く仕掛けたけど惰性で行かせて大丈夫だなと思いました」
 先頭に立ったカンムルはそのまま快調に飛ばし、キングガンズラングも追走、この2頭が後続との差をどんどん広げていった。懸命に逃げるカンムルに、必死に追いすがるキングガンズラング。しかし、その差は縮まらず、カンムルがキングガンズラングに2馬身半差をつけての勝利。3着のキャッスルクラウンには大差がついた。
 カンムルは中央1勝の成績で浦和・小久保智厩舎に移籍。ここまで重賞ではもう一歩のところだっただけに、ついにつかんだ重賞タイトルだ。目標はダービーグランプリに置いているそうで、秋には全国の頂点を目指すことになる。
 一方、断然の1番人気に推されていたブラウンレガートは、終始流れに乗れず5着に終わった。主戦の的場文男騎手はこの日、園田競馬場で行われたゴールデンジョッキーカップに出場したため、南関東の目下のリーディング、矢野貴之騎手が手綱を取った。「折り合いや位置取りすべて噛み合っていません。行くところ行くところ窮屈になってしまい、全然走っていないです。不甲斐ないです」と肩を落とした。
 競馬の難しさを改めて感じさせられる一戦となったが、ブラウンレガートは『3歳秋のチャンピオンシップ』“カテゴリーA”の黒潮盃を制しており、800万円のボーナスを賭けてダービーグランプリに向かう予定とのこと。実力はここまで十分に示してきただけに巻き返しを期待したい。
左海誠二騎手
馬の状態がすごくいいのが伝わってきたので、信じて乗りました。長くいい脚を使える馬で、追ってからもしっかりしています。ゴール板間近で後ろの馬の脚音も聞こえなかったので勝ったと思いました。ガッツポーズは自然に出てしまいましたね。馬もまだまだ力をつけていきそうですし、大事に育てたいです。
小久保智調教師
賢くて丈夫な馬です。暑さがやわらいで調子もどんどん上がっていたので、かなり期待はしていました。パドックでも状態の良さは伝わってきました。ブラウンレガートと追い比べになった時に迫力に負けることもあるので、4コーナーで3馬身は離していけるように、積極的に乗って欲しいと伝えていました。


取材・文:高橋華代子
写真:築田純(いちかんぽ)