本シリーズは、各地の3歳主要重賞競走を戦った有力馬が11月に実施されるダービーグランプリへと集結し、地方競馬の3歳王者の座を争うもので、カテゴリーに応じてボーナス賞金(馬主)が設けられています。
充実の秋、成長の秋、飛躍の秋など競走馬にとって大きな意味合いを持つ「3歳秋」を舞台に繰り広げられる熱戦にご期待ください。
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スタートを決めてハナを主張
逃げにこだわり後続を振り切る
今年で52回目を迎える3歳重賞だが、最近ではナムラダイキチ、古くはトゥインチアズ、エビスライトオーなど当地で一時代を築いた名馬も輩出している。そんな金沢伝統のレースに今年は12頭が出走した。今年から始まった『3歳秋のチャンピオンシップ』では“カテゴリーC”(優勝馬がダービーグランプリも勝てばボーナス300万円)として位置づけられた。今年の金沢3歳世代の動向を振り返ると、2歳時は金沢ヤングチャンピオンなど重賞3勝のヤマミダンスが女王として君臨し、重賞2勝のヴィーナスアローが2番手という構図だった。3歳になるとヴィーナスアローが中央遠征時に体調を崩し、立て直しを強いられる。金沢3歳重賞初戦の北日本新聞杯ではヴィーナスアロー不在でヤマミダンスが1強ムードの中、5馬身で圧勝した。
しかし、石川ダービーでは厳しいマークを振り払って早め先頭から押し切りを図ったが、直線失速の4着。続くMRO金賞からは、藤田弘治騎手に乗り替ったが、極端な逃げ有利の馬場に、外枠11番で逃げられず、2着。加賀友禅賞では出遅れて5着に終わっていた。
春当初の1強ムードこそ消えたが、それでもヤマミダンスの強さを信じるファンはこの日も単勝2.7倍の1番人気に推した。これに続くのが馬体が戻った石川ダービー馬ヴィーナスアローで3.2倍、3番人気がMRO金賞を逃げ切ったムーンファーストで3.9倍。三つ巴の様相を呈していた。
最近3走が得意の逃げに持ち込めていないヤマミダンスだが、今回は逃げやすい内枠3番。当日の馬場も逃げ有利な状態。中川雅之調教師、藤田騎手も逃げを意識するのは当然だが、元騎手の中川調教師は「騎手に指示を出しても、思うようにいかないのは僕が一番知っている」と普段から騎手に指示は出さない。ただ、今回はひとつだけ「返し馬ではダクで馬場を1周、さらにキャンターでもう1周」と指示を出した。これは前走、体が硬いままで左トモを滑らせ、スタートで出遅れたことへの対策だった。
調教師の意図を理解した藤田騎手は指示通り入念に返し馬を行い、体をほぐすと、本来の好スタートを決め、4戦ぶりにハナに立った。1周目の3コーナーでムーンファーストに競りかけられたが、スタンド前で振り切ると、あとはマイペース。3コーナー手前で後続を突き放し、ゴール前ではサッキーヘラクレスに詰め寄られたが、1馬身差で逃げ切った。
手綱を任されて3走目での勝利となった藤田騎手だが、普段から調教にも騎乗。石川ダービーのあと、下り坂だった体調を考慮しながらの調整だったが、この中間にようやく復調を感じ取った。「前の2走は軽めにしか追えなかったですが、今回はしっかり追えたので、手応えはありました。やっと勝ててホッとしています」。乗り替った時点から勝利が求められるプレッシャーの中、状態を立て直しての勝利に安どの笑みを浮かべた。
今後の目標は「レースが終わってすぐなので、馬の様子を見て、オーナーと相談してからになる」と中川調教師は明言を避けたが、西日本ダービー(10月22日、佐賀)かダービーグランプリ(11月19日、水沢)のどちらかへの出走を示唆した。
藤田弘治騎手
負けた2回はどちらもハナに行けてなかったので、今日は逃げたいと思ってました。競りかけられた時は、やっぱり来たと思いましたが、馬を信じて乗りました。振り切った後は、状態も良かったので、大丈夫だと思いました。僕は他地区への遠征が少ないので、この馬と行ければいいですね。
中川雅之調教師
石川ダービー以降、結果が出せていなかったですが、今回はいいレースができてよかったです。使い減りするタイプですし、まだオーナーとも相談していないので、次は未定ですが、目標は西日本ダービーかダービーグランプリのどちらかに出走してみたい気持ちはあります。