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連載第53回 1999年 黒潮スプリンターズカップ

『ナムラコクオー復活!』
1999年 黒潮スプリンターズカップ ナムラコクオー

 ゲートが開いて、60キロを背負った1番人気のメイショウタイカンが出遅れる波乱。快速エイシングランツを抑えてハナを奪ったのはナムラコクオーだった。しかも息を入れることなくグングン行くと、自然と隊列は縦長になっていく。明らかにハイペースだ。
 3~4コーナー。少し離れた2番手にいたエイシングランツが差を詰める。
 直線に入って中団にいたメイショウタイカンとミストフェリーズがやはり伸びてくる。しかし、ナムラコクオーのスピードは衰えることなく、2着エイシングランツに5馬身の差を付け、高知移籍後初重賞制覇、JRA在籍時のプロキオンステークスから、約3年6か月ぶりの重賞制覇となった。高知移籍後苦楽を共にしてきた鞍上の中越騎手も、ゴールでは左手を高く掲げた。
 JRA重賞4勝。日本ダービーではナリタブライアンに次ぐ2番人気に推されたこの馬が、なぜ高知で走っていたのか。
 ナムラコクオーは1993年9月19日の阪神の新馬戦でデビュー。馬名の由来は漫画「北斗の拳」の登場人物ラオウの愛馬「黒王」。新馬戦、折り返しの新馬戦をいずれも2着したのち、10月の未勝利戦に勝ち、500万を2、1着し、初芝のラジオたんぱ杯3歳S(当時)に勝つ。さらに3歳緒戦のシンザン記念も勝ち重賞2連勝。クラシック有力馬に躍り出た。
 しかし、1番人気に推された弥生賞で3着に敗れ、レース後に屈腱炎を発症していたことが明らかとなり、皐月賞どころか競走生命自体危ぶまれた。幸い症状は軽く、日本ダービーへ向けてのトライアルであるNHK杯に出走。主戦の上村騎手が騎乗停止中のため、ライバル・ナリタブライアンの主戦、南井騎手が騎乗し、最初の「復活」を遂げる。
 日本ダービーでは2番人気に推されたものの6着に敗れる。そして骨折、さらに屈腱炎が再発し、長期休養を余儀なくされる。
 1年9か月の休養の後、5歳2月の仁川Sで復帰(4着)、芝の産経大阪杯12着大敗の後、再度ダートに戻りプロキオンSに出走する。3~4番手から直線抜け出し、ビッグショウリを抑え2度目の「復活」を遂げる。結果的にこれがJRA最後の勝利となる。
 京王杯スプリングC13着、交流のかしわ記念4着。しかし脚元の状態は芳しくなく、高知競馬へ移籍する。
 高知競馬場へ姿を現したのは、7か月半後。すでに6歳になっていた。初戦のA1を2着し、再び10か月の休養。6歳2戦、7歳2戦とその後も脚元の状態と相談しながらの出走となり、8歳の夏にはC級へ降格していた。99年は比較的脚元の状態も良く、6連勝を含む8連続連対で、前述の黒潮スプリンターズカップで3度目の「復活」。
 しかし、大晦日の高知県知事賞は1番人気で競走中止。11か月後の復帰戦も競走中止。2000年1戦、2001年は全休し、2002年は最下級まで降格している。
 高知最下級とはいえ、かつてはナリタブライアンのライバルと目されていた馬。7連勝を含む8連対と力の違いを見せつけた。黒船賞はさすがに往年の力を発揮、とはいかず9着。その後7連勝し、その中には重賞の建依別賞で3年9か月振りの重賞勝ちもあった。 JRA交流3着の後、AB混合の一般戦で8着。これがラストランとなる。
 放牧中に外傷を負い2005年に引退。既に14歳になっていた。
 引退後は土佐黒潮牧場で静かな余生を送っている。
文●日刊競馬 小山内完友
写真●いちかんぽ
競走成績
第3回 黒潮スプリンターズカップ 平成11年(1999年)11月21日
  サラブレッド系4歳以上 1着賞金200万円 高知 1,400m 晴・良
着順
枠番
馬番
馬名
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 6 7 ナムラコクオー 53 中越豊光 1.27.7 2
2 6 8 エイシングランツ 54 戸梶由則 5 4
3 5 5 メイショウタイカン 60 中西達也 3 1
4 8 11 ミストフェリーズ 53 北野真弘 3/4 5
5 7 9 ヤマヨムカイ 53 佐原秀泰 1 10
6 1 1 ブリッジテイオー 57 西川敏弘 1 6
7 3 3 オースミレパード 53 鷹野宏史 クビ 10
8 8 12 マッケンリーダー 56 明神繁正 2 3
9 7 10 リーバーシャディ 52 徳留康豊 クビ 6
10 2 2 シーアタック 53 宮川 実 ハナ 8
11 4 4 トップタイトル 54 花本正三 1/2 12
12 5 6 クリエーション 53 倉兼育康 クビ 9
払戻金 単勝340円 複勝230円・260円・140円 枠連複2,130円