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連載第51回 1993年 オグリキャップ記念

『トップハンデ60キロで後続を一蹴』
1993年 オグリキャップ記念 タイプスワロー

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 笠松競馬が生んだ「怪物」オグリキャップの名を冠した「オグリキャップ記念」は、感動のラストランとなった有馬記念の2年後、1992年にその功績を称え創設された。
 第1回はそれまで15勝中14勝が1400~1600メートルで、マイラーと目されていた7番人気の伏兵フワノビートが、未知の距離2500メートルをまんまと逃げ切った。
 2回目となったこの年。笠松競馬場には約1万1000人の大観衆が集まった。当時は2月11日「建国記念の日」に行われていたが、それにしても90年代の競馬の熱さを、今更ながら思い出す。
 1番人気はトミシノポルンガ。明け4歳、前年のダービーグランプリに勝ち、全国の3歳馬の頂点に。そして暮れの東海ゴールドカップでは地方競馬でも屈指の強豪揃いである笠松競馬の古馬勢を破っていた。55キロと斤量に恵まれた。
 2番人気はセンダツヤッピー。ここまで29戦し15勝、2着5回、3着3回の上がり馬。当時8戦連続連対、そして3連勝で重賞に駒を進めてきた。52キロと軽量が魅力。
 3番人気はイチアヤヒデ。大井競馬でデビューし5勝を挙げ、4歳時JRAに転入。ミスタートウジンを破った仁川ステークスなど4勝を挙げている。6歳春に笠松へ移籍。東海ゴールドカップ、マーチカップ、東海菊花賞に勝っている実力派だけに、59キロを背負わされた。
 そして4番人気にタイプスワロー。2500メートルの全日本サラブレッドカップ、芝2000メートルの東海桜花賞など、あらゆる条件のレースに勝っている古豪。60キロのトップハンデ。
 5番人気は50キロと最軽量のエールランナー。
 ゲートが開いてトップハンデ60キロのタイプスワローが大外8番枠からゆっくりと内に切れ込み、最初の1コーナーでハナに立つ。レース前、荒川調教師が「展開に恵まれそうだ」と話した通り、この馬にとって楽な流れになった。
 2~3馬身離れた2、3番手にエールランナー、イチアヤヒデと続き、トミシノポルンガ、センダツヤッピーの人気上位勢はいつも通り後方待機。レースは淡々と流れ、2周目のスタンド前では超スローペース。隊列は固まったように、静かに流れ、スタンドからは1万人を超える観衆からの熱い声援が。
 2周目の向正面中間を過ぎ、ようやくトミシノポルンガがスパートし、3コーナーで2番手を行くエールランナーを交わし、4コーナーでタイプスワローの直後に迫る。
 そこまで楽な手応えだったタイプスワローに井上孝彦騎手のムチが飛び、そこからひと伸び、と思いきや、予想以上に60キロが重くのしかかる。トミシノポルンガもジリジリと追い上げるが、1/2馬身差まで迫るのが精一杯。タイプスワローがまんまと逃げきった。
 「年齢(7歳)を考え、軽めの調教にしたのが良かったのでは」と井上騎手。展開、調整、すべてが噛み合っての勝利だろう。
 タイプスワローは早来(現安平町)の吉田牧場で生まれ、笠松の荒川友司厩舎の所属。父はラッキーキャストで他に中央の戸山厩舎で活躍したフジヤマケンザンがいる。荒川友司厩舎といえばワカオライデン軍団だが、父ワカオライデンは戸山厩舎でデビューし、その後荒川厩舎で活躍するなど、縁のある血統でもある。
 その後のタイプスワローは、60キロで激走した反動か、東海大賞典は10着大敗だったが、続く京都の芝2000メートルで行われたTV愛知オープンでイクノディクタスの3着と好走。しかし、それ以降3戦ひと息で水沢に移籍。だが、年齢的にもピークは過ぎ、引退し種牡馬となった。
 種牡馬としては15頭の産駒を残している。
文●日刊競馬 小山内完友
写真●いちかんぽ
競走成績
第2回 オグリキャップ記念 平成5年(1993年)2月11日
  サラブレッド系オープン 1着賞金1,500万円 笠松 2,500m 晴・良
着順
枠番
馬番
馬名
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 8 8 タイプスワロー 牡8 60 井上孝彦 2.47.5 4
2 4 4 トミシノポルンガ 牡5 55 安藤勝己 1/2 1
3 7 7 エールランナー 牡5 50 川原正一 3 5
4 3 3 イチアヤヒデ 牡9 59 松原義夫 3 3
5 1 1 カツチトセ 牡8 51 樋口富男 1 1/2 8
6 2 2 センダツヤッピー 牡6 52 竹下太 1 1/2 2
7 6 6 マイネルバーン 牡7 52 濱口楠彦 1 7
8 5 5 オグリリーダー 牡8 54.5 坂口重政 7 6
払戻金 単勝1,680円 複勝170円・100円・150円 枠連複470円