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連載第52回 1996年　サラブレッドチャレンジカップ

『伝説の豪脚』
1996年　サラブレッドチャレンジカップ　プライムキング

　このレースの前年1995年は競馬にとって大きな変革が訪れた年だった。中央・地方競馬の交流競走がスタートした、いわゆる「交流元年」である。
　そして1996年。その流れの中でサラブレッドチャレンジカップを取り巻く環境は大きく変わった。サラブレッドチャレンジカップは1990年に３歳の地方競馬全国交流競走として創設された。当時４歳ダートの地方競馬全国交流競走は他にダービーグランプリだけで、これが地方競馬ダート３歳馬の２大競走であった。しかし、ＪＲＡのユニコーンステークスと大井のスーパーダートダービーが交流レースとして創設され、中央・地方交流競走となったダービーグランプリへと続く３歳ダート路線の新しい路線が出来上がったのである。
　しかし関係者の懸念をよそに、中央勢との戦いを避けた？地方の強豪馬が集まる結果となった。
　２年連続でこのレースを制している笠松勢からは駿蹄賞１着、名古屋優駿２着のハカタダイオーと、秋の鞍に勝ったフジノハイメリットが。東北優駿１、２着馬ラストヒット、スターライフの新潟勢。そして上山のグランドレーシング。
　一方、迎え撃つ地元金沢競馬勢の希望はプライムキングだ。金沢生え抜きで、北日本新聞杯、サラブレッド大賞典の金沢３歳重賞３レースのうち２つを制覇。ここまで１３戦し７勝２着４回３着２回と、ほぼパーフェクトな成績を残している。「サラブレッド３歳優駿」を制したユキノゴールドがＪＲＡに移籍してからは、地元の期待をほぼ一身に背負うこととなった。
　１番人気は新潟のラストヒット、２番人気笠松のフジノハイメリット、３番人気笠松のハカタダイオー、４番人気にプライムキング、５番人気が新潟のスターライフ。
　スタートしてハカタダイオーとフジノハイメリットの笠松勢が飛び出した。新潟のラストヒットもこれに続き、３頭がハイペースで競り合う流れ。その後ろに内フジノスイトピー、外グランドレーシング。スパークボールド、スターライフは７番手。さらにその後ろにトミノスペシャルが続き、プライムキングは後方９番手に控える。
　向正面に入ってもハカタダイオーとフジノハイメリットが競り合い、それを虎視眈々とラストヒットが狙うという流れは変わらなかったが、さすがに速すぎたか、勝負どころの３コーナーでは先行勢の手応えが怪しくなった。
　それを見て、一気にプライムキングが一気に進出。まるで他の馬が止まっているかのように見える豪脚で、１頭、また１頭と交わし４コーナーでは粘るハカタダイオー、ラストヒットを外からまくって先頭に躍り出ると、馬場の真ん中を抜け出す。
　このまま一気に押し切ると思われたが、内から１頭、スターライフが物凄い脚で迫ってくる。しかし、スターライフの猛追を１馬身差退け、プライムキングが５年ぶりとなるサラブレッドチャレンジカップ地元制覇を決めた。
　金沢の３歳馬の頂点に達したプライムキング。次はいよいよ他地区遠征かと思われたが、馬運車に乗せられないくらいの荒い気性がたたり、あきらめざるを得なかった。ならば古馬になれば白山大賞典を、の希望もあった。だが、悪いことはさらに続き、洗い場で脚をぶつけ、以降脚部不安を抱えてしまうこととなる。
　４歳時は半年の休みを挟みつつ３戦して１着、３着、２着。そして再び休みを挟んだ５歳の４月14日、Ａ３のオリオン特別。かつてまくりを決めた豪脚は影をひそめ、中団のまま６着でレースを終え、さらにレース後の歩様が悪かった。右後繋靭帯伸長の診断。
　あの豪脚は、２度と叶わぬ夢となった。

第7回　サラブレッドチャレンジカップ　平成8年（1996年）10月6日
サラブレッド系4歳 1着賞金1,700万円　金沢　1,900m　曇・良
着順	枠番	馬番	馬名	性齢	重量	騎手	タイム・着差	人気
1	2	2	プライムキング	牡4	55	山下誠	2.04.7	4
2	1	1	スターライフ	牡4	55	山田信大	1	5
3	6	6	フジノスイトピー	牝4	54	米倉知	6	9
4	7	9	スパークボールド	牡4	55	渡辺壮	1 1/2	6
5	6	7	トミノスペシャル	牡4	55	中川雅之	アタマ	8
6	5	5	グランドレーシング	牝4	54	山田延由	3/4	7
7	4	4	ラストヒット	牝4	54	五十嵐剛紹	1 1/2	1
8	8	10	ビッグウエスタン	牡4	55	越野亨	1 1/2	10
9	8	11	フウジンスワロー	牝4	54	桑野等	2 1/2	11
10	3	3	ハカタダイオー	牡4	55	安藤光彰	2	3
11	7	8	フジノハイメリット	牡4	55	安藤勝己	1 1/2	2
払戻金　単勝550円　複勝250円・580円・1,730円　枠連複2,050円