長い低迷期を乗り越えて復活
本来のスピードを発揮して快勝

　6回目を迎える名古屋でら馬スプリントだが、過去の優勝馬は2頭だけ。
　第1回から第3回まではラブミーチャンが圧勝を続け、一昨年と昨年はワールドエンドが押し切った。しかし、そのワールドエンドは南関東に移籍。今年も10頭立てで争われたが、B級以下に在籍している馬が4頭いるという顔ぶれになった。
　となると、ファンの注目を集めるのはA級在籍馬。今年は例年と違って前哨戦が行われなかったこともあり、昨年の3着馬であるイワクラギンガが単勝1番人気に支持された。続く2番人気には、低迷期から脱して上昇中の感があるハナノパレード。JRAからの移籍初戦でも、笠松所属時に重賞2勝の実績があるゴールドブラザーが3番人気に推され、A級で安定した成績を残しているトゥルーカラーズが4番人気となった。
　さて、この日の名古屋地方は、早朝から強い雨が降っていた。しかしその雨は午前9時頃には止み、すぐさま夏を思わせる日差しが降り注いできた。このため気温はぐんぐんと上がり、不良馬場でのスタートも第6レースからは重に回復。雨のなかで行われた昨年とは違い、好天に恵まれたのはよかったが、競馬場に来場したファンの大半は屋根の下から動かない状況だった。
　その暑さのなか、名古屋でら馬スプリントのファンファーレ。ゲートが開いた瞬間、ゴールドブラザーの体が沈み、馬群から遅れてスタートする姿が見えた。対照的に、最内枠から発走したイワクラギンガは積極策。鞍上の今井貴大騎手が何度もムチを振り上げていたが、大外枠から加速したハナノパレードのスピードのほうが上だった。3コーナー手前でハナノパレードが先頭に立ってからは、トゥルーカラーズとイワクラギンガがその後ろから追撃する態勢をとった。しかしスピードが緩むことがなかったハナノパレードは後続を突き放していく形になり、最後は2着に3馬身差をつける圧勝。昨年5月の駿蹄賞以来となる、重賞3勝目となった。
　先手を取りに行ったイワクラギンガは2着。「がんばりましたが、向こう（ハナノパレード）のほうが速かったですよ」と、今井騎手は完敗という表情でサバサバと話した。3着に残ったトゥルーカラーズは、実績的に上位2頭よりも下。最後までよく食い下がったというべきだろう。
　惜しかったのは出遅れたゴールドブラザー。最後方から追い上げて、4着に入った。「一歩目でつまずいてしまってね。あれがなければ2着はあったなあ」と、戸部尚実騎手。それでも前走から22キロという体重でここまでやれるのだから、引き続き注目できそうだ。
　久々の重賞勝利となったハナノパレードは、表彰式で大畑雅章騎手が「完全復活ですね」と胸を張った。迫田清美調教師は「（昨年の）東海ダービーのときは最悪でしたからね。よく状態が戻ってくれました」と、うれしそうにしていた。高い素質を備えていることは、駿蹄賞を8馬身差で制した実績が示すとおり。ここからどれくらい活躍の幅を広げていくのか楽しみだ。