各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。
第16回 イノセントカップ
栄冠賞馬はやはり強かった!
影をも踏ませぬ快走でバンドオンザランが重賞2勝目!
2001年に創設され、今年で16回目となる2歳短距離重賞「イノセントカップ(門別1200m)」。昨年、このレースを制したリンダリンダは未来優駿シリーズの「サッポロクラシックカップ(門別1200m)」へ駒を進め、見事に重賞を連勝。その後、南関東へ移籍し、「桜花賞(浦和1600m)」2着、「東京プリンセス賞(大井1800m)」優勝と、南関東牝馬クラシック戦線の主役へとのし上がった。今年、この舞台にエントリーしてきたのは9頭。なかでも大注目を集めたのが、開幕日の「スーパーフレッシュチャレンジ(門別1200m)」を制して2014年生まれ最初の勝ち上がり馬となり、6月の「栄冠賞」に優勝して2014年生まれ最初の重賞馬となったバンドオンザラン(牡、角川秀樹厩舎、父スズカコーズウェイ)。夏期間は「函館2歳ステークス(GⅢ、函館・芝1200m)」&「コスモス賞(札幌・芝1800m)」へ遠征し、芝のレースで中央の強い相手に揉まれる経験を積んできた。9着、8着と結果こそ出なかったが、そのチャレンジは今後の大舞台で必ずや生かされるはず。地元のダート戦に戻れば大将格であることに異論はなく、ファンも圧倒的な1番人気(1.8倍)に支持した。
2番人気(6.2倍)は、バンドオンザランと同厩舎で、「栄冠賞」3着、「ブリーダーズゴールドジュニアカップ(門別1600m)」6着と、2歳重賞の王道を歩んできたスーパーステション(牡、角川秀樹厩舎、父カネヒキリ)。以下、3番人気(7.0倍)に社台ファーム生産の良血馬フライングショット(牡、桑原義光厩舎、父タートルボウル)、4番人気(7.6倍)に4月の「フレッシュチャレンジ(門別1200m)」で9馬身差の衝撃デビューを飾った印象が残るリシュリュー(牡、角川秀樹厩舎、父トビーズコーナー)がつづいた。
上位人気4頭中3頭が新種牡馬(スズカコーズウェイ、タートルボウル、トビーズコーナー)の産駒という、いかにも“馬産地競馬”を象徴するようなメンバーでの戦い。ゲートが開いてバラバラっとしたスタートから、楽に先手を奪ったのが1番人気のバンドオンザラン。他に行く気を見せる馬もなく、そのままハナを切る形となった。中団から抜け出して勝利した「栄冠賞」をイメージしていたファンも多かったのだろう。意外な展開に、場内がどよめく。その後ろをリシュリュー、ゴーリキ(牡、堂山芳則厩舎、父プリサイスエンド)、スカイロックゲート(牡、田中淳司厩舎、父ヴァーミリアン)、スーパーステションらが追いかける展開。バンドオンザランの逃げは快調で、後続に2馬身ほどの差をつけて3コーナーをまわる。楽な手応えのまま直線に入ると、その差はさらに広がって独走態勢。後続との差はまったく詰まらず、まさに影をも踏ませぬ快走でゴール板を駆け抜けた。3馬身後ろの2着争いは、終始前でレースを進めていた最低人気馬ゴーリキが最後にもうひと伸びして抜け出し、フライングショット、スーパーステションらの人気どころを押さえて2着を確保した。
優勝したバンドオンザランは新種牡馬スズカコーズウェイの産駒で、グランド牧場のオーナーブリーディングホース。勝利に導いた桑村真明騎手、管理する角川秀樹調教師は、昨年のリンダリンダにつづいて「イノセントカップ」を連覇。4年前にも同コンビのストーミングスターが同レースを制しており、騎手・調教師共に近5年で3勝と、抜群の相性を示した形だ。
栄冠賞馬が、その貫禄を見せつける形となった今年の「イノセントカップ」。数年後、「あのバンドオンザランも制した…」という枕詞が同レースにつくような今後のさらなる活躍を、バンドオンザランには期待しても良いだろう。
桑村真明騎手
思った以上にゲートが良くて先頭に立ってしまい、一瞬とまどったのですが、そのまま行ききろうと判断しました。今日のところはあれで正解だったのかもしれませんが、引っ掛かってしまうような面が出てきてしまったので、その辺を修正しながら、最後の大きな交流重賞を勝てるようにしたいです。
角川秀樹調教師
芝2戦は結果が出ませんでしたが、地元に戻ればこの馬が横綱なので、負けられない一戦だと思っていました。思い描いていたようなレース運びとならず課題も残りましたが、単なるスピード馬ではないと見込んでいるので、次走は距離を延ばしてサンライズカップ、最終的には北海道2歳優駿をめざします。
文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義
写真:小久保巌義