各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。
第13回 リリーカップ
エーデルワイス賞への道「リリーカップ」を、
サウスヴィグラス産駒ハタノオヌールが制す!
8月に行われた2歳牝馬重賞の皮切り「フルールカップ」から中2週。1ハロン距離が延びる門別1200mコースを舞台に、2歳牝馬重賞の第2弾「リリーカップ」が行われた。昨年は、フルールカップの優勝馬モダンウーマンが僚馬タイニーダンサーを破って重賞2連勝。その後の2歳牝馬戦線における大躍進の礎となったレースと言えるだろう。今年もフルールカップから、優勝したピンクドッグウッド(牝、北海道・田中淳司厩舎、父サウスヴィグラス)を筆頭に、2着ラブミーファルコン(牝、北海道・角川秀樹厩舎、父スマートファルコン)、3着ハタノオヌール(牝、北海道・安田武広厩舎、父サウスヴィグラス)、4着アップトゥユー(牝、北海道・角川秀樹厩舎、父サウスヴィグラス)、5着シェアハッピー(牝、北海道・小野望厩舎、父ハイアーゲーム)と掲示板に載った馬すべてが出走。さらに1番人気に推されながら最下位に敗れたオヤジノハナミチ(牝、北海道・田中淳司厩舎、父パイロ)も雪辱を期して参戦し、まさに再戦ムードが漂う一戦となった。
人気はピンクドッグウッド(2.1倍)、アップトゥユー(3.5倍)とフルールカップの上位組が占める一方で、3番人気(6.7倍)には別路線組からオーブスプリング(牝、北海道・角川秀樹厩舎、父ディープブリランテ)が支持された。前走の「ターフチャレンジ1(門別1700m)」で2着に敗れている3戦1勝馬だが、桑村真明騎手がフルールカップ2着のラブミーファルコンではなく、こちらに騎乗してきたことも人気を背負う一因となったのかもしれない。4番人気(9.1倍)オヤジノハナミチまでがひと桁台で、シェアハッピー、ハタノオヌール、ラブミーファルコンらのフルールカップ上位組は10倍を超えるオッズでつづいていた。
夕方あたりから濃い霧が競馬場を包み込み、レース続行が危ぶまれる時間帯もあったが、徐々に天候も回復して、12R発走時刻の20時40分には薄い霧がかかっている程度。問題なくスタートが切られ、出遅れもなく全馬一斉のきれいな飛び出しを見せた。なかでも好スタートを切ったのが、フルールカップでも先行したハタノオヌール。そのままペースを握るかと思いきや、井上幹太騎手は徐々にポジションを下げて中団に位置する。代わって先頭に立ったのが、フルールカップでは後方からレースを進めていたアップトゥユー。追い込み届かなかった前走の轍を踏むまいと、阿部龍騎手が果敢に逃げの手に出た。外からオーブスプリングとハタノフォルトゥナ(牝、北海道・安田武広厩舎、父グラスワンダー)が2、3番手を追走。ピンクドッグウッドは後方からレースを進める。4コーナーをまわってもアップトゥユーは楽な手応え。直線に入ると一気に後続を突き放し、一目散にゴールをめざし始めた。一時はセーフティーリードをとったかに思えたが、諦めずに外から差を詰めてきたのがシェアハッピー。残り100mあたりでアップトゥユーを捕えたものの、その陰に隠れるように真ん中からハタノオヌールも鋭い脚で伸びてきた。激しい叩き合いの末、内ハタノオヌールと外シェアハッピーが馬体をあわせてゴールイン。クビの上げ下げによる際どい勝負となったが、アタマ差だけハタノオヌールが先着。見事にフルールカップ3着の雪辱を果たし、初重賞制覇を飾った。
ハタノオヌールは、父サウスヴィグラス、母ハタノガイア(その父ブライアンズタイム)の間に生まれた(有)グッドラック・ファームの生産所有馬。管理する安田武広調教師は開業6年目で、今年6月のグランシャリオ門別スプリント(ケイアイユニコーン)で初重賞制覇を成し遂げたばかり。また、好騎乗でハタノオヌールを優勝に導いた井上幹太騎手も、8月のブリーダーズゴールドジュニアカップ(ストーンリバー)でデビュー4年目にして初重賞を手にしてから1ヶ月経たないうちに2つ目のタイトル奪取と、まさに破竹の勢いを見せている。目前に迫ってきたビッグレースに向け、フレッシュな力が躍動するホッカイドウ競馬の2歳戦線から、ますます目が離せなくなってきそうだ。
井上幹太騎手
前走、スタートが良すぎて馬がどんどん前を追いかけてしまったので、今回は折り合いをつけることに専念しました。ペースもうまく流れてくれて、道中はいつでも動ける手応えでした。最後はシェアハッピーとアップトゥーユーの間に挟まれる形になりましたが、よく反応して交わしてくれましたね。この馬で重賞を勝ちたかったので、本当に嬉しいです。
安田武広調教師
もともとスタートの良い馬なのですが、今回はあえて一旦下げて折り合いをつけ、直線で勝負するレースを思い描いていました。ジョッキーがよく考えて乗ってくれ、スタッフも馬をきっちりと仕上げてくれて、すべてがうまくかみ合った結果だと思います。この後はエーデルワイス賞に直行するか、一戦挟むか、オーナーと相談して決めたいと思います。
文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義
写真:小久保巌義